一人の安楽少女が誘拐された後、俺たちは更に旅を続け、荒野のような場所へと歩みを進めていた。
「ここを超えれば、あと少しで紅魔の里じゃ!魔物に警戒しつつ、先へ進むぞ!」
たまもがそう言ったのをきっかけに、俺は改めて周囲を見回した。すると、気配感知スキルの警戒網の少し外、やっと視認できる程度の場所に、ピンク色の髪の少女の姿を見つけることが出来た。遠見の魔法を見ると、全裸の少女が棍棒をもって、こっちを指さしていた。その頭には豚のような耳が生えており、見えにくいが尻にはくるりと巻いた尻尾があるようだ。
「なんか、ピンク髪の痴女があっちにいるぞ」
俺がそちらを指さすと、たまもが渋い顔をしてその者たちのことを話し始めた。
「そやつはオークじゃ!ここいらで一番厄介な魔物じゃぞ。遠くにいるうちにさっさと逃げ出すとしよう」
そう言うことで、俺たちは全員で紅魔の里方面へ走り出した。オークの少女はそれを見て、慌てて後を追いかけてきている。
「……ん~」
ふと思うことがある。相手はオークと言えど痴女だ。ふっくらとした体と挑発的な表情、いま勢いよく走るたびにばるんばるん揺れる二つの胸についた大玉。これで捕まってしまったらどんなことをされてしまうのだろうか。身ぐるみをはがされるかもしれない、ちょっと痛い思いをするかもしれない。でも……なんだかエロいこともされそうな気がする。
「カズマ!何か馬鹿なことを考えていませんか?ほら、相手方の援軍が来ましたよ!」
そう言ったイリアスの声と同時に、ドシン、と重い音が聞こえた。思わず振り返り、俺は目をこする。
「おうおう!いい男がいるじゃないか!ちょっとひょろっちいが、中々抱きがいがありそうだ!」
かなり遠くからなのに、そんな声がこちらに聞こえてくる。その大音声を発したのは、褐色を超え、ほぼほぼ黒色の肌をした引き締まった体躯の大女だった。
「おいイリアス!あれ、オークか?オーガじゃないのか!?絶対違うって!」
「言ってる場合ですか!あれはグレートオーク!非常に強力なオークのリーダー個体ですよ!捕まったら……まあ、干物にされるまで搾り取られるんじゃないですか?」
「いやぁぁぁぁぁ!?」
俺は聞きたくない!と頭を振り、そして、いきおいよく駆け出そうとしているグレートオークの背後にあるものを見てしまい、バランスを崩すほどに驚愕してしまった。
最初のオークはいい。次のグレートオークも、正直とんでもなく乱暴に搾り取ってきそうな勝気な雰囲気が苦手なだけで、見た目自体は美人だと思う。だが、あれはなんだ?あんなのは……あんなのは。
「ただの、バケモンじゃねーか!」
俺の視界に移ったのは、まるっきり豚の頭部を持った、異常に桃色の肌をした衣服を身に着けた人型の化け物の姿だった。彼女たちは、先行しているオークとグレートオークの視線の先に気づき、大きな咆哮を上げ、勢いよくこちらに駆け出してくる。
「あらあら素敵なお兄さん!私たちといいことしましょう!」
「おら!あんたはあたしたちと子供を作るんだよ!」
俺の声は、自分たちの咆哮にかき消されて聞こえなかったらしい。そんな声で思い切り走りだした化け物共の勢いは、先行していたグレートオークでさえためらって歩みが遅くなった横をかき分け、俺に迫ってくる。
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁ!?……あっ……」
その恐怖に思わず叫び声をあげて逃げ足を速めた俺は、その恐怖のせいで足を踏み外してしまった。そして、イリアスが上空で悲鳴のような声を上げた直後、俺の体に何かがのしかかってきた。
とっさの恐怖に、俺は手を突き出し、更に俺を押し込もうとしてきた手を押し返す。
「さあ、捕まえた!おら!さっさとおっぱじめるよ!」
「イヤー!待って、待ってください!俺初めてなんです!せめて、せめてそっちの後ろのピンク髪の子で!」
「あいつはもう初物五人食ってるから自重してもらってるのさ!まあ、10人も相手すればあの子の番も回ってくるだろうさ!」
そんな言葉と共に顔を極限まで近づいてくる女オークの顔に、俺はいやいやと顔を振って何とか逃げられないかと頭を巡らせる。
「待って待って、そうだ、自己紹介しよう!わたくしサトウカズマと申しますぅ!」
「わたくしカトリーヌと申しますゥ!さぁ!自己紹介も終わった!おらはやくパンツ脱ぎな!」
そうしてカトリーヌと名乗ったオークが俺のパンツに手をかけた時……その体が吹っ飛び、俺の首筋を巨大な何かが引っ張り上げてきた。……そして。
「ボトムレススワンプ」
俺がいた場所から沼が出現し、オークたちが次々と沼に飲まれていった。
「あなた達、何しているんですか?」
その声に合わせて、俺を引き上げた人物を見やると、最初に見えたのは巨大な獣の体だった。美しい黄金の毛並みには、七本の俺と同じほどに大きな尾、そして、上半身には、俺たちも見知った、七尾の姿があった。
「……とりあえず、オークたち、ご近所のよしみで見逃してあげますから、さっさと家へ帰ることですね。次はライトオブセイバーをぶち込みますよ」
七尾がそう言ってボトムレススワンプを解除すると、蜘蛛の子を散らしたかのようにオークたちが逃げ出した。
なんだか、最初のピンク髪のオークが後ろ髪をひかれているようだったが、ギガントオークに頭を殴られ、首根っこを掴まれて連れていかれていた。
そんな風にみていると、顔をグイっと動かされる。俺は今、七尾に片手で持ち上げられており、もう片方の手で顔を合わせるように顎を固定されている。狐の下半身分七尾のほうが背が高く、俺は不安定に宙に吊り下げられていた。
「……」
「……あの、七尾、さん?そろそろおろしてほしいんですが?」
「………………ちょっと味見してもいいですよね?」
ボソッと七尾が何かつぶやいた直後、そのうしろからたまもが強かに七尾の頭を殴り飛ばした。俺は情けなく地面に倒れ伏す。
「おま、お前なにやっておるのじゃ!掟をわすれたのか掟を!早う人の姿に戻れ!」
そう言って詰め寄る剣幕に屈し、七尾が人間の姿に戻って正座を始める。その後、七尾が許されたのは、それから一時間後のことだった。
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