カエル討伐の翌日。俺たちは酒場で食事をとっていた。
たまもは今までろくに食事にありつけなかったからか、すごい勢いで食事を摂取していた。それにつられてイリアスも注文を繰り返すものだから、本来美人で羨まれるであろうハーレムパーティのはずが、いまいち嬉しくない。
そんな中、俺はふと彼女たちに聞いてみることにした。
「なあ、スキルの習得ってどうするんだ?」
すると、打てば響くとばかりにたまもから返答が飛んできた。
「スキル?それは、お主の冒険者カードに出ておる、現在習得可能なスキルというところから……、おお!そうじゃった!お主は冒険者であったのう♪
冒険者の場合は、誰かにスキルを教えてもらわねばならぬ。まずは目で見て、そのやり方を教えてもらう。さすれば習得可能スキルという項目が現れるから、後はポイントを使ってスキルを選択するだけじゃ」
なるほど、……そう言えば受付嬢さんからは、全てのスキルが習得可能だと聞いたような気がする。
「なら、おれもたまもに教えてもらえば爆裂魔法を覚えられるってことか?」
「その通りなのじゃ!」
俺がうかつにもそう言うと、たまもが大きく伸びて俺の胸倉をつかんできた。
「何を隠そう、冒険者はアークウィザードを除き、唯一爆裂魔法を覚えることができる職業!爆裂魔法を習得するというのならいかようにも教えようぞ!そもそも、爆裂魔法以外に覚える価値のある魔法なぞ存在せぬ!ほれ、カズマ。はよう爆裂魔法を覚えて、ともに爆裂道をまい進するのじゃ」
「ちょ、ちょっと待てよのじゃロリっ子。俺はまだ駆け出しでポイントも3しか入ってないんだぞ!」
「のじゃロリっ子……じゃと」
呆然としているたまもをいったん放置し、イリアスを見ると、イリアスは冷めた目で俺を見ていた。
「爆裂魔法など、覚えようとするなら年単位の時間が必要でしょうね。……そうですね。仮にあなたが本気で覚えようとすれば、まぁ、節約に節約を重ねても10年はかかるのではないですか?大器晩成……というのは、いささか出来上がる予定の器が小さすぎますが」
「うっせーよ!」
「うちが、のじゃロリっ子……」
そう言うと、たまもは再び昼食をもそもそと食べ始めた。
とはいえ、俺の就いている冒険者の一番の利点は、どんなスキルであっても覚えられるという点だ。いろいろな便利スキルを覚えておきたい。
「なぁ、イリアス」
「無理ですよ」
何か言う前に、イリアスに拒否されてしまった。
「何も言ってないんだが」
「言いたい事は分かります。スキルを教えてほしいのでしょう?ですが、今私の使っている職業は、私が無理やりこの世界の秩序にねじ込んだ、いわばバグです。私一人が管理しながら使うならともかく、複製したうえ正規の職以外で使うとなると、問題しか起きないでしょうね。まあ、今後急に爆死しても良いというのなら教えますよ」
「……エンリョシマース」
俺が意気消沈していると、そこに偉そうな声が割り込んできた。それと同時にイリアスががたりと椅子を蹴飛ばし、立ち上がる。
「ふむ、なかなか良い余興であったぞ。ほめて使わす。貴様、エルべぇが入りたがっているパーティの者であるな?優秀なスキルが欲しいのなら、我らに伝わる数々の剣技を……と、貴様はまだ駆け出しであったな。なら盗賊技などはどうだ?」
声の方を見ると、そこには二人の人間……もとい人間とモン娘がいた。一人はすらりとした女性で、軽装に剣を携えている。もう一人はやたら青色で……要は先日パーティに入れてほしいという要求をした女性、エルだった。
「……まさか、いや、でも、ありえない、アリスフ……」
俺はぶつぶつ言っているイリアスを無視し、相手に言葉を返した。
「盗賊技っていうのは、どんな技があるんだ?」
「ふむ、様々だ。敵感知に潜伏、鍵開け罠感知罠解除。少人数の冒険だと必ずと言っていいほど必要とされているな。それに習得ポイントも高くない。今ならあまあま団子5串で手を打つが、どうだ?」
なかなか魅力的な話だった。スキルも有用そうだし、投資も少額だ。
「よろしくお願いします!あの、店員さん!この人にあまあま団子を5つ!」
「うむ♪あまい」
こうして、俺はこの女性から盗賊技を教わることになったのだった。
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フリーズしているイリアスをたまもに任せ、俺と女性は酒場の裏手で対峙した。
「そうだ、まずは自己紹介をしておこう。余はクリス。旅のグルメをして……と、それは旅の目的だな。職業は盗賊だ。この剣は……昔取った杵柄とでも思ってほしい。それと、こいつはエル。親しいものはみなエルべぇと呼んでいるがな。彼女の持つスキルはクルセイダーの技だ。貴様には宝の持ち腐れにしかならんだろう」
そう言うと、クリスは早速スキルの実践に入った。潜伏を実践したクリスが、被検体になったエルに隠れていた樽ごとシェイクされるという事件はあったものの、何事もなかったかのように次のスキルの説明に入る。
「次に教えるのは窃盗のスキルだな。これは、対象の持つものをなんでも一つ奪うことができるスキルだ。成功確率はランダムで、盗む対象もこれまたランダム。ギャンブル要素の強いスキル故に幸運値を高く求められるが、うまくすれば敵の武器を奪ったり、相手の持っている宝のみを奪って逃げることも可能なスキルだ」
確かに、それはかなり使えそうなスキルだ。しかも運依存というのがいい。俺の持つステータスで一番高い幸運値を最大限仕えるということだ。
「それでは、さっそく使ってみることにしようか。『スティール』!」
アリスがそう言うと、彼女の手元に光が集まり、そこには俺の財布が握られていた。
「あっ!俺の財布!?」
「ふむ、当たりだな。まあ、こう言う風に使うものなのだ」
そう言って財布を差し出そうとしたクリスだったが、そこで少し考えたそぶりで財布をひっこめた。
「なあ、カズマとやら。一つ、勝負をしてはみないか?今、余の手元には貴様の財布がある。これを余がもらう代わりに、貴様は一度だけスティールを使い、余の身に着けたモノどれか一つを盗む権利をやろう。それが何であろうと余は文句を言わぬ。財布の中身からして、武器でも余の財布でも、奪い取れたならそちらの方が得になるだろうな」
いきなりとんでもないことを言い出したクリスに、しかしと俺は頭を回転させる。確かにとんでもない話だが、俺は幸運値が高いらしい。それを考えれば、これは俺にとってかなり有利な条件なんじゃないか?
それに、こういうやり取りは、なんだか荒くれ者同士のやり取りみたいで憧れるものもある。
そこで、俺は早速冒険者カードを確認し、習得可能スキルの欄に目を向けた。
そこには〈敵感知〉〈潜伏〉〈窃盗〉のスキルが載っていた。俺は迷わず3つのスキルを取得し、クリスに向き直る。
「よし!その勝負乗った!何盗られても泣くんじゃねーぞ!」
「ふむ、良い気迫だな。では、始めるとしよう。ああ、そうだなあらかじめ言っておこうか。余が持つ物の中で言うなら、財布が敢闘賞、そして、この4段階強化済みカスタムソードが当たり。外れがこの石ころと言ったところかな?」
「あっ!?きったねぇ!」
俺の叫びを聞いて、クリスが冷酷に笑った。
「ドアホめ。スキルはすべて得手不得手がある。それを考えずに安請け合いした貴様の落ち度だ。まあ、授業料とでも思っておくがよい」
「くっ!?」
確かに、いい勉強になった。ここは日本じゃない、弱肉強食の異世界だ。これからは意識を引き締めなければ。
それに、まだ残念賞が当たると決まったわけではない。
「よし!やってやろうじゃねえか!あたり引かれて泣くんじゃねーぞこら!『スティール!』」
そう言うと、俺の手に光が集まり、何かが握られていた。どうやら一発成功したらしい。俺はやはり、運だけは良いようだ。
「……?」
しかし、これはいったいなんだ?何やら布らしいが。
俺はそれを両手で広げ、太陽にかざしてみる。
……ん?なんだか、三角で、リボンが付いているが、なんというか、見た事あるような無いようなというか……。
「あ、あのだな……パンツ、返してほしいのだが」
「え?」
お互いの間に沈黙が広がり、そして。
「大当たりだー!」
俺は、美少女のパンツを持っているという事実と、もう実質前張り状態のパンツを美少女が身に着けていたという興奮で歓喜の声をあげたのだった。
お待たせしました。
というわけで、クリス登場回です。偽名を名乗っているという体なので某旅のグルメさんは偽名としてクリスを名乗っていますし、変化した旅のグルメ形態での登場です。(カズマはラミアと気づいていない)
エリス教をアリス教にした時からこの変更は決まってました。
変更箇所
・ロリっ子からのじゃロリっ子に変更
・女神スキルをそもそも習得不可に変更(特殊ジョブの為)
・クリスの中身を腹ペコ魔王に変更(アリス教の使途って言ったらこうなる。なお、まだ伏せますがクリスに関してはまだ変更点があります。多分既に分かる人にはわかる)
・クリスの要求物品をあまあま団子に変更(作者の趣味)
・クリスの持つスキルの変更(クエ時代の師匠ポジから考えて剣技を覚えさせたかったから。剣士→盗賊の変則ジョブ変更を経験している)
・カズマの覚えているスキルから〈花鳥風月〉を削除(代わりに〈裁きの雷〉入れようかとも思ったけど、確実にバグるため却下)
・クリスの持ち物が35万Gするダガーから強化済みカスタムソードに変更。
・アリスの下着をラミア用女性下着(要は三角の前張り※モンスター娘のいる日常1巻のあれみたいなもん)に変更。