この素晴らしい世界にもんむすを!   作:邪魅魑

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あけましておめでとうございます。
大変お待たせしました。


EP67 たまもの色仕掛け!

 たまもに迫られた翌日、俺は宿屋からたまもの家の道へと歩いていた。

 結局あの後、七尾を頼り、紅魔の里の宿を案内してもらった。民泊のような感じの宿で、急だったこともあり少々値は張ったが、あの状態のたまもと二人屋根の下で過ごす度胸は俺にはない。

 

「……はい、そうです。それでは……おや、ヘタレのカズマさん、ようやく帰ってきましたか」

 

 たまもの家へとたどり着くと、丁度朝日を浴びになのか外に出てきていたイリアスがそんなことを言ってきた。

 

「ヘタレとはなんだヘタレとは」

 

 俺が反駁すると、イリアスはにっこりとほほ笑んで俺に目を向ける。

 

「いえ、ほめているのですよヘタレのカズマ。よく狐の色香を振り切って逃げ出しました。もしかしたらあの女狐に三度の放精により婚姻が成立する……などというたわ言を囁かれたかもしれませんが、人間は魔物娘の手練手管に逆らうことはほぼ不可能。三度の放精を拒否する間もなく、理性を溶かされ、成り行きで望まぬ婚姻を結ばされていたことでしょう。一人の男としてはヘタレで情けないどうしようもない勇者もどきですが、その精神性と危機管理能力は驚嘆に値すると保証してあげましょう」

 

「……なんか朝っぱらからそう言い募られると疲れるなぁ」

 

 あまりのマシンガントークに俺は突っ込む気力すら失って、イリアスの横を通り家の中に入っていった。そうすると、今度は目の端に水色が映った。

 

「あら、ヘタレのカズマじゃない」

 

「……お前もか、エル」

 

 なぜたまもに迫られて逃げ出した被害者なのに、こう朝っぱらからヘタレと罵倒されないといけないのか……いや、ちょっと待て。

 

「意外だな、エル。お前はてっきりたまもと俺がそう言う関係になりそうになったことを非難するんじゃないかと思ってたが」

 

 そう俺が疑問を投げかけると、エルは目をそらしながら言葉を放った。

 

「あぁ、まあ、ちょっと心境の変化があったというか……。最初はたまもがあなたを誘ったと聞いて、貴方に対しても憤りを感じたのだけれど……。よく考えたら、私もバルター様に迫られたら絶対に拒否できないと思ってしまって……えぇ」

 

 まあ、確かに、バルター君にベタ惚れなエルのことだ、彼に求められたら抑えが効かなくなっても何の不思議もない。

 

「と、いうわけで、心情的には拒否したいのだけれど、私ができないことをあなたに強制することもできないわ。だから、貴方は今後そう言う風な雰囲気にならないように細心の注意を払いなさい。いいわね」

 

 鬼気迫る声で俺の肩に手を食い込ませるエルにビビりつつも、実際問題としてたまもに迫られたことに思うことがあった俺は何度も頭を上下に振ってこたえた。と。

 

「おう、カズマ、帰って来たか」

 

 そんな声が後ろから聞こえた瞬間に背後からもふもふしたものが覆いかぶさってきた。

 

「……っ」

 

 俺はその言葉に思わず固まり、昨日の情景を思い出し赤面する。

 

「え、エル……」

 

 俺が思わずそう言うとたまもはくうくうと笑いながら体を離す。

 

「カズマよ。何をそんなに怯えておる。安心せい、さすがにうちが狐と言っても、こんな朝っぱらから盛ったりはせぬわ。……それに、お主も嫌がっておるようじゃしのう。……流石に昨夜は性急すぎた、とうちも反省しておるんじゃぞ?」

 

 そう言うと、俺の顔をじっと見据え、たまもが手を差し伸べた。

 

「だからの、ちょっと買い物に付き合ってはくれぬか?」

 

 俺は、その言葉に戸惑い、思わずエルに助けを求める視線を彷徨わせ……。

 

「…………」

 

 顎でたまもの方を示すエルにがっくりと頭を落とした。どうやらエルは味方にはなってくれなさそうだった。まあ、昨日のは何かの気の迷いだろうと思い、俺は覚悟を決めてたまもの手を取った。

 

「分かった、一緒に行こう」

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

「~~~♪~~~~~♪♬」

 

 楽し気に鼻歌を口ずさむたまもの旋律に耳を傾けながら、俺たちは紅魔の里を歩いていた。

 

「ご機嫌だな」

 

「……うむ!好いた男と共に町を歩いて機嫌を損ねるおなごなどそうそうおるまいて」

 

 俺は内心(いや、それはどうだろう)と思いつつも、突っ込むことなく紅魔の里の中で歩みを進める。

 

「のう、カズマ。どうじゃ、この里は」

 

 話のついでと声をかけてきたたまもに、俺はちらりとたまもを見る。

 

「どうっていったってなぁ。まぁ、魔王軍が攻めてきてるのは減点かな。まあただ、里自体はのどかでいいところじゃないか。っても、アクセルに屋敷があるんだ、移住とかそんな風には考えられないけどな」

 

「うむ、そうじゃろそうじゃろ。ここはうちが過ごした故郷じゃ。狐が多いが、のどかで良い場所なのじゃ。お、そろそろつくぞ、あそこじゃ」

 

 そうして話を切り上げ、走り出すたまもを、俺は少し顎をさすりながら後をついて行った。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 たまもを追いかけて最初に向かったのは、たくさんの衣服が掛けてある服屋だった。

 

「あら、たまも?よく来たわね」

 

「うむ、はるか、久しいのう」

 

 そう言ってたまもと話を交わし、たまもを持ち上げて再会を喜んでいるのは、深草色の服に身を包んだ少女だった。しばらくたまもとじゃれあっていた少女だったが、俺に気が付いてたまもを下ろし、こちらに向き直った。

 

「私ははるか!誇り高き紅魔族にして、紅魔随一の服屋の娘!いずれ世界進出し、世界の王侯貴族に名を知られるもの!」

 

 そんな大言壮語な自己紹介をした後、はるかは再び玉藻を抱え上げた。

 

「で、今日は何しに来たの?カップルできたってことは、ペアルックでも見繕いに来た?」

 

 その言葉に、懐に抱えられていたたまもは違うと体をゆすり、はるかの手の中から脱出した。

 

「ほれ、これでいつものを見繕っとくれ」

 

 そう言ったたまもが差し出してきた大金にはるかは目をしばたかせる。

 

「はえ~。貧乏で有名なたまもからこんな大金差し出されるとは思わなかったわ……いい旦那捕まえたわね。……ちょっと待ってなさい」

 

 そう言うと、はるかは商品を取りに奥へと引っ込んでいった。はるかがいなくなると、たまもはにやにやと俺に向かって顔を向けてくる。

 

「ほんに、カズマはいい男じゃよな、旦那さま?」

 

「……おい」

 

 昨日のこともあったため、少し探るように声を出すと、たまもはらけら笑って手を広げる。

 

「そうじゃな、まだ、お主はうちの旦那様ではない。控えねばな」

 

「いや、そういう話じゃ……」

 

 そんな風に話している間に、はるかが大量の着物をもって帰ってきた。

 

「はい、じゃあ、これね」

 

「おぉ!感謝するのじゃ!何しろ、冒険者ともなると消耗も激しくてのう」

 

 そう言って喜んで着物を受け取って帰ろうとするたまもを目で追うと、俺はその途中を二度見してしまう。

 

「ん!?」

 

 着物が干されている中に、ひどくぎらつく銀色の何かが目に映った。

 

「おいおい、レールガンじゃねぇか」

 

「おや、お客さんはあれを何か知ってるんですか?あれは代々うちに伝わる物干しざおなんですよ。いや~私は個人的に、何かのマキナじゃないかと思ってはいるけど、親父たちはそんなわけあるかって笑うばかりで」

 

 俺は少し逡巡した後、彼女が興味に駆られて変なことをしたときの被害を考えると……。

 

「イエ、アレハトテモ芸術点ノ高イ物干竿デスヨ?」

 

 そうごまかすことにした。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 店を出てからも紅魔の里をぐるぐると周り、そして最後に里から離れた空地へと向かった。

 

「ここらは里のはずれでな。いろいろなものが封印されておる」

 

 そう言って、たまもは古びた碑に手を合わせて祈る。

 

「それは、誰かの墓とかか?」

 

「分からぬ。この里には邪神の封印された石碑だの、天使殺しが封じられた遺跡だのいろいろあるが、なんだかんだで8割ほど封印が説かれてしまっておる。それでも、この碑だけは古すぎて何を祀っていたのか、もしくはただの墓なのかさえも定かではない。それでも、ここには何かがおる。そう思うから、うちはここに来るたびにこの碑に手を合わせておる」

 

「お前のとこの封印がばがばじゃねえか」

 

「……むぅ……カズマ。ちょっとは雰囲気とか、そう言うのを察してはくれんか?」

 

「お前がツッコまざるを得ないこと言うからだろうが」

 

「……」

 

「……」

 

 二人して沈黙して見つめあう中、たまもが突然俺に抱き着いてきた。

 

「のう、カズマ。今日一日でうちはうちの過ごした場所のほとんど全てをお主に見せたのじゃ。それを踏まえて、今日こそ答えを出してほしい。もし、うちの思いに応える気があるなら、今日、またうちの部屋で待っているのじゃ」

 

 そう言うと、たまもはそのまま一足先にたまもの家に走り去っていくのだった。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 夜。あれから何事もなくたまもの家にたどり着いた俺は、食事や風呂などをすまし、八尾の手によって再び眠りこけている仲間たちを見届けてから、たまもの部屋の前へと訪れた。部屋の前で大きく深呼吸を一つ。そして扉を開いた。そこには、目を潤ませたたまもの姿があった。

 たまもは俺に気が付くと、妖艶な笑みを浮かべて俺に語り掛ける。

 

「くぅくぅ、ヘタレのお主のことじゃ、よもや今宵は来ぬかと思ったが、うれしいぞ。うちの褥に来たということは、そう言うことじゃ」

 

「たまも、座れ」

 

 俺は強い言葉でたまもに告げる。動作を止めて俺を見るたまもは、しかしすぐにその顔に再び笑みを張り付けて俺を再び布団に誘う。

 

「まあまあ、ここに至って言葉は不要じゃほれほれ、うちの尻尾も触り放題、うちを、女にしてくれるのじゃろう?」

 

「座れ」

 

 たまもに再度そう言うと、今度こそたまもは先ほどまでの態度を変え、不安そうな顔でぺたんとその場に腰を落とした。それを確認して、俺もその場に座り、改めてたまもの目を見つめる。

 

「なあ、たまも、なんで俺を誘惑した?」

 

「それは、うちがお主に惚れておるからで」

 

「御託はいい」

 

 俺の問いに媚びたように答えるたまもを、俺はぴしゃりといい伏せた。それを聞いて、今度はたまもが着物の裾を顔に当て、よよよとシナを作る。

 

「なんと、うちがこれほど思っておるのに、カズマにそれが伝わっておらぬとは……」

 

「……」

 

「うちが好いた男はカズマ一人、今ならそれを独占できるというのに」

 

「……」

 

「…………」

 

 俺が無言のままたまもを見続けると、だんだんと顔が下がったたまもは、とうとううつむいて黙り込んだ。

 

「そもそも、おかしかったんだよ。昨日、同じ部屋に閉じ込められたからって鍵を開ける努力もせずに『閉じ込められたから』と俺と関係を持とうとしたり、昨日も今日も爆裂魔法を打とうと言い出さなかったり、なあ、たまも、何を思い詰めているんだ?」

 

「ちがう、うちは本当にお主を好いて」

 

「なら、なんで昨日、子どもを一人で育てるなんて言ったんだ?」

 

 俺の言葉に、たまもは二の句が継げずに黙り込む。

 

「お前、昨日言ったよな?子どもは自分で育てる、俺にも少し迷惑をかけるかもしれないがなんとかする、って。おかしいよな。普段のお前なら、子どもが出来たら絶対俺にも責任を取らせようとしたはずだ」

 

 黙り込むたまもに、俺は再び最初の問いを重ねる。

 

「だから、本当のことを教えてくれ、なんで俺を誘惑したんだ?」

 

 しばらく黙り込んだたまもだったが、少しの沈黙の後、たまもは重々しく口を開いた。

 

「カズマよ。うちは一体なんじゃ?」

 

「は?」

 

 たまもの問いに俺は思わずそう聞き返す。

 

「カズマよ。うちはおぬしにとって、どんな存在じゃ?大火力の魔法使いか?作戦立案の知恵担当か?大火力の魔法使いならサバサがおる、知恵ではうちはイリアスの足元にも及ばぬ。クロムのものづくりは流石としか言えぬし、彼女の操るフレデリカはうち以上の膂力と物理戦闘能力を持っておる。それに、最近やってきたエミリは魔王軍幹部の娘、魔法も武力もなかなかのものじゃ……のう、うちには何が残る?何ができる?一発しか打てぬ爆裂魔法と、イリアスに劣る作戦立案しかできぬうちは、カズマに何がしてやれる?」

 

 一度話したら止まらないというように滔々と話し続けたたまもは、いつの間にかぽろぽろと涙をこぼしながら俺に縋り付いてきていた。

 

「のう、かずま、いやじゃ、もう、一人なのは、誰にも仲間に入れてもらえぬのは嫌なのじゃ。うちは、お主のところがいい。見捨てられたくないのじゃ。じゃから、どうか、決してほどけぬ楔を、ややこをうちに……どうか」

 

 そこまで聞いて、俺は思わず激情にあかせて叫んでしまった。

 

「あぁ、そうかよ、お前がそんな風に思ってたなんて、がっかりだよ!」

 

 びくりと震えるたまもの目の前に、俺は指を突き付ける。

 

「お前が何者か?いいさ言ってやる!お前はな、なんやかんやでトラブルを持ち込んでくる、うちの最大火力エースアタッカー様だよ!いいか!言っとくがな、俺はお前をパーティから外す気も、別の魔法使いを入れる気もないからな?というか、サバサだってクロムだってエミリだって成り行きで一緒に住んでるだけでパーティメンバーってわけでもないし、俺たちのパーティは俺とイリアスとお前とエルだ!解散する気なんてさらさらないんだよ分かったか!」

 

 

「…………え?あ?……うぁ?」

 

 いきなりまくしたてられ呆然とするたまもをよそに、俺は一気に語気を緩めてひとりごとのようにつぶやいた。

 

「はぁ、全く、まさかお前が、俺のことをそんな、使えるメンバーが入ったら初期の仲間でも容赦なく切り捨てる血も涙もない奴みたいに思ってたなんて普通にショックだぞ」

 

 そう言ったのが聞こえたのか、たまもがおずおずと俺に声をかけてくる。

 

「の、のう、カズマ、さっきの話は……」

 

「言った通りだよ。というか、お前は俺とイリアスが仲間にした最初のメンバーだぞ。キメラメデュラハンの時もパーティ解散できなかったのに、今更そう簡単に、はいそうですか、なんてことするわけないだろ?」

 

 ちょっとたまもが俺をどう思っていたのかを頭の中で考え、落ち込んでぶっきらぼうにそう言うと、背後で息をのむ声が聞こえ、たっぷり五秒ほどたったあたりで、俺の天地が逆転した。

 気付けば昨日のように地面に押し倒された俺の目の前にたまもの顔があった。

 

「カズマ……」

 

「ちょっと待て、だからそう言うのは……」

 

「それは、うちがパーティへ残るための方便としてこういう仲になろうとするのはいかぬ、ということであろう?」

 

 そう言うと、たまもがその身を俺の胸に重ね合わせてくる。

 

「此度はそうではない。うちが心から主を好いて、主を感じ、主とまぐわい、主の子を孕みたいと、そう心から思ったからこうしておる」

 

 そうして、俺の胸の上で、たまもが泣きはらした後のうるんだ瞳で俺を見つめてくる。

 

「もし嫌なら、言ってくりゃれ?うちは主に嫌われとうない。じゃから嫌というならいったん身を引こう。しかし、このままでは思いが爆発してしまうかもしれぬ……じゃから……」

 

「たまも……」

 

 たまもから伝わってくる掛け値なしの好意に、俺は思わずたまもの肩に手をかけて……。

 

 ドーン!

 

 いきなり夜間に響き渡った大音量の爆発音に、それらもろもろの感情が全部吹っ飛んでいったのだった。

 




前回の更新分で「あれ?このたまも、なんかいつもと性格違うな」と思った方。大正解です。
原作の方では「自分が足手まといになるんじゃないか?」と悩むめぐみんがみられますが、この世界線のたまもはそれでは済みません。なぜなら身内に上位互換がいるから。

原作ではパーティ内で知力担当、魔法&最大火力担当として立ち位置がしっかりしているポジションですが、今作時空では知力ではイリアスに劣り、火力ではサバサに劣ります。(一年のインターバルがあるので別に優位性がないわけではないのですが、追い詰められたたまも的には”1戦闘で最大一度しか使えない大火力”という意味で同じくくりになっています。
 また、現状その二人は別にたまもを脅かす動きはしていませんが、魔王軍幹部の娘や、なんだったら野生のプリエステスまで身内に引き入れているので、いずれ自分よりも汎用性の高く、メンバー入りに積極的な魔法使いが現れれば普通に二軍落ちもあり得ると、彼女の立場からは考えざるを得ません。
 さらに、今作ではキメラメデュラハンの際に村八分状態を経験しているため、孤独状態の恐怖が否応なく高まっています。

と、いった理由から暴走しました。


と、いう設定を文章に落とし込めればよかったんですが、私の技量では完全にたまもの独白になってしまうのであとがきでゲロっときます。

アニオリ部分の話を見たいかどうかのアンケート

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  • 新人冒険者へ話す冒険話の話だけ見たい
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