この素晴らしい世界にもんむすを!   作:邪魅魑

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EP9 キャベツが現れた!

 俺はギルドにいたので、そのまま冒険者たちが集まっているところに向かいつつ、疑問を口にした。

 

「なあ、緊急クエストってなんだ?魔物が町を襲いに来たのか?」

 

 そう言うと、エルが首を振って俺を見た。

 

「……恐らくはキャベツの襲来。そろそろ収穫の時期だから」

 

「は?キャベツ?」

 

 そんな疑問を口にした時、いつもの受付嬢さんが姿を現し、冒険者の俺たちに大声で説明を始めた。

 

「お集まりいただきありがとうございます。薄々感づいている方もいると思いますが、今年もキャベツの収穫時期がやって参りました!今年のキャベツは出来が良く、一玉の収穫で1万エリスでの買取となります!既に街中の住民の皆様は避難を完了しておりますので、皆さんはできるだけ多くのキャベツを納品してください!くれぐれもキャベツに逆襲されてけがを成されないようにお気を付けください!

 なお、報酬と人数が多いので、報酬の引き渡しは後日となります!」

 

 ……この人、なんか変なこと言ったよな?

 

 直後、爆発するように歓声を上げる冒険者たちに何事かと外を見ると、何やら緑色の物体が跳ねたり跳んだりしながら街中を進んでいる姿を見つけられた。

 

 呆然とその意味の分からない光景を見つめていると、いつの間にか近づいて来ていたイリアスが、若干気づかわし気に、しかし厳かに言葉をかけて来た。

 

「よいですか、カズマ。この世界では、キャベツは飛ぶのです。収穫間近になったキャベツは、食べられてなるものかと町や草原を疾駆し、海を渡り……そして最後にはキャベツ娘になったり人知れぬ荒野でその一生を終えるのです。ならば、そうなる前に、私たちが一匹でも多くのキャベツを収穫し、おいしく食べてあげようではありませんか!」

 

「俺、馬小屋に帰って寝ててもいいかな?」

 

 そんなことを言っている間に、冒険者たちは歓声をあげながらキャベツに突撃していく。

 そんな様子を俺は冷めた目で見つめていた。何が悲しゅうてキャベツと死闘を繰り広げにゃならんのだ。

 

 俺はとてつもなく日本に帰りたくなっていた。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 俺は、ギルドで提供されたキャベツいためを一口食べた。

 

「……美味い。なんでただのキャベツ炒めがこんなに美味いんだ。納得いかねー」

 

 結局、報酬の高さに惹かれて俺はキャベツの収穫に参加した……が、なんというか参加したことにちょっと後悔しているところだった。

 俺が求めてるのはキャベツ討伐じゃないんだ。

 

「しかし、エル。よく私を守ってくれました。特に、あの体積を増やしてキャベツの群れを弾き切った技はスライムとは思えない活躍でした。特別に、パーティへの加入を認めましょう」

 

「……そう言ってくれると嬉しい。でも、私はただ耐えていただけ。その点たまもは素晴らしかった。キャベツにつられて街に来た魔物を爆裂魔法で一掃していた。あれこそ称えるべき」

 

「ふふ、こそばゆいのう。まぁ、うちの爆裂魔法にかかればざっとこんなもんじゃ。……とはいえ、うちは肝心のキャベツの収穫という意味ではいまいちじゃったからのう。そういう意味ではカズマが一番の金星であろう。魔力を使い果たしたうちを背負って逃げてくれたし、ついでに魔法に巻き込まれたキャベツも回収しておったしのう」

 

「……確かに、今回は称賛に値する。私も、キャベツや魔物に囲まれて防御に専念して動けないときに襲い来るキャベツたちを収穫していってくれたのは助かった。それにたまもやイリアスをしっかりと補助していたのはとても偉い。感謝する」

 

「確かに、今回は珍しく、非の打ちようのない活躍でしたね。潜伏でキャベツに気付かれないよう近づき、敵感知で動きを察知、そしてスティールでの華麗な収穫。……そうですね『華麗なるキャベツ泥棒』なんて称号を与えても良いかもしれませんね」

 

「おいイリアス、その称号で俺を呼んだら、あんたでも許さねえぞ?って、そうじゃねー!」

 

 俺はテーブルに突っ伏した。緊急事態だ。

 

「それじゃあ、改めて、私はエル。どうかエルべぇと呼んでほしい。職業はクルセイダーで、武器はちょっと使い方が分からないのだけれど、両手剣を使っているわ。……攻撃が全然当たらないのだけれど。代わりにようじ……仲間を守るのは得意よ。よろしく頼むわ」

 

 そう、仲間が一人増えました。その様子を見て、イリアスがほうっと嘆息した。

 

「意図していませんでしたが、私たちのパーティも中々に豪華なパーティになってきましたね。女が……メガレイズも覚えられる私に、アークウィザードのたまも、それに守りに定評のあるクィーンスライムにしてクルセイダーのエルべぇ。4人のうち3人も最上級職に達しているパーティはそうはいなかったでしょうね。魔王を倒さんとするパーティでも、一人か二人最上級職についていればよい方……いえ、何でもありません」

 

 ……こいつ、元の世界の基準で考えてたな?

 最近ちょっと分かってきたことだが、この幼女。賢しらなのだが、どこか抜けている。今のところうちの女神様が動いて成功したことがほとんどない。実はポンコツなんじゃないか疑惑が俺の中で浮上していた。

 

 今も、イリアスは褒めたたえているが、内情は小賢しいが失敗続きの聖魔導士と、一日一発しか魔法が使えないアークウィザード、そして攻撃が一発も当たらないクルセイダーでしかない。

 

 なんでも、エルべぇは……というかスライム種があまり武器を使う種族ではなく、武器の扱いをほぼ心得ていない上に防御系スキルに全振りしてスキルポイントがないので武器の扱いに関するスキルを何一つ持っていないという状況らしい。

 

 もちろん、俺だって何の問題もなければエルべぇの加入を断る理由はない。ガチレ○ロ○コンという難儀な性格をしているが、どうやらYES○リ―タNOタッチを掲げる派閥の人らしいし攻撃がきちんと当たるならこれ以上願ってもないことだ。

 ただ、どうやら幼女趣味だけが彼女の問題ではないようで。

 

「今回のキャベツの収穫で採れた野菜。私の体液に濡れたキャベツを、小さな子たちが糧とするのね……。ああ、私のことは頑丈な壁とでも思っておきなさい。小さな子の未来を守るために、環境破壊と子どもへの被害撲滅を目指して頑張りましょう」

 

 こいつ、実は環境団体みたいな思想も持っていた。まあ、其方は弱いスライム族はきれいな水場でないと生きていけないという理由があるようだけど。

 

 俺はため息をついてギルド天井を見上げた。回復特化で特殊職の聖魔導士、最強の魔法を操るアークウィザード、そして、鉄壁の守りを持つクルセイダー。言葉だけ聞けば最高のメンバーなのに、どうしてこうなった。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 冒険者レベルが上がり、キャベツの納品で知り合った冒険者に新しいスキルを教えてもらうことに成功した。

 覚えたのは〈片手剣〉スキルと〈初級魔法〉の二つだ。これでレベルアップで覚えたスキルポイントもカラになってしまったが、十分に満足できる結果となった。

 因みに〈初級魔法〉はいつだかイリアスが憤慨していた火、水、風、土の四属性のごくごく簡単な魔法が使えるスキルだ。とはいっても殺傷能力はほぼなく、生活に便利、といった程度なのだが……。

 

 まあ、イリアス様が「なるほど、そのスキルがあれば食材さえあればどこでも食事が作れますね。カズマにしてはよく考えているではないですか」と褒めてるんだかなんだかよく分からない品評をしてくれたのでいいということにしよう。

 

 なお、ここから戦闘に使えるような魔法にしようとすると、一気に10ポイントとかスキルポイントを使うらしい。残念ながら魔法で戦うのは無謀なようだ。

 どうやらスキルポイントというのは生まれつきの才によっては始めから何ポイントか持っていることもあるらしく、恐らくエルやたまもはそう言った手合いなのだろう。

 

 と、まあ、そんなことはともかく曲がりなりにも俺は剣と魔法のスキルを手に入れたのだ。そして手元にはそこそこ潤沢な資金もある。以前のカエル狩りでは十分な装備を身に着けることができなかったが、今なら冒険者らしい武器を買うこともできるはずだ!

 そこで、俺はイリアスを連れて町へと向かったのだった。

 

「……なぜ、私もついて行くことになっているのですか?」

 

「何故って、そりゃ、お前も装備を整えるためだよ!お前、そのケープ……っていうんだったか?そのひらひらの服しかないんだろ?あと腕輪とか頭のわっかとかはあるけど」

 

「……そうですね。たまにはこの服を変えるのも良いかもしれませんね。尤も、あまり意味をなさないかもしれませんが」

 

 しみじみと告げるイリアスに、俺は疑問の言葉を投げかける。すると、イリアスは服を名残惜しそうに撫でさすった。

 

「カズマには言っていますが、この身はあくまでも分身、封印元の私の本体も密閉空間とはいえまさか全裸で過ごすわけにもいきませんし。そもそも、ロリ化してるのでサイズが合いません」

 

 ……ん?封印しているときの服は使えず、次の瞬間まで俺と離れる時もほとんどなかったという事は……。

 

「もしかして、イリアス様って今……」

 

「……はっ!?な、なにを考えているのです失敬な!私はただ世界創世の要領で衣服を作ったと言いたかっただけで、服が体の一部とか、そう言うことは有りませんからね!」

 

 そう言ってから、コホンと息を吐いてイリアスは言葉を続けた。

 

「話が逸れましたね。何しろそう言う形で作ったものですから、私のこの服はかなりの力を有しています。最強とは言えないかもしれませんが」

 

 その後、勘違いが勘違いだったので、しばらくイリアスの顔を見ることができなかった。

 




……おかしい。原作準拠ならたまもルートに入りそうなのに、急速にイリアスルートに入ってる。やはり精神性がまともなら女神一強なのか?
 実は次話も書いてるんだけど、次は原作とかなり乖離があります。ただ、前回のストーリー自体を別方向に持って行く感じではなく、すぐに本筋に戻るタイプの改変になります。


 なお、パラ世界のイリアス様と異なり、この世界のイリアス様はなぜかかなりの強化装備を身に着けています。一応、あっちが時空のひずみの聖で対応する暇もなく六祖封印対策もままならないまま放り出されたのに対し、激昂しつつも猶予自体はあったことの差だと思ってください。

変更点
・キャベツがモン娘になる設定を追加(クエ世界でもまだ出現していない)
・クルセイダーの問題点を一つ追加(スライムの特性から)
・女神さまとカズマの買い物へ向かう際の話題を変更(イリアス様は羽衣を身に着けていないので)
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