神のみぞ知る碁   作:カトタンバ

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初めまして。
小説の投稿は初めてですが、少しでもお楽しみ頂けたら幸いです。


プロローグ

『ねえ?君は私と一緒に目指してくれる?神の一手を……』

 

「もちろんさ。この落とし神の名にかけて!」

 

 

 舞島市のとある家宅。

 優美な電子音が部屋に響き渡る中、高校二年生の少年───桂木桂馬は力強い言葉を放つ。

 

 現在この部屋には、ゲーミングチェアに座る彼以外の何人(なんびと)の姿も見えない。

 しかし、当の桂木桂馬には決して独り言を口にしているようなつもりなど無かった。

 彼はテレビゲームのヒロインと"対話"しているのである。

 桂馬が現在プレイしているゲームのジャンルは「ギャルゲー」。一言で表せば、女性キャラクターとの恋愛を楽しむことを目的としたゲームの一種と言った所か。

 

 ゲームのキャラに話しかけるなど、正常な感性を持つ人間から見れば面妖と言わざるを得ない光景であろうが、この少年は至って真剣であった。

 それどころか世の多くの人間は何故自分のようにギャルゲーに没入することが無いのかと首を傾げている始末。

 

「ふふふ……ボクを信じていいのか迷う気持ちも分かるよ。でも死してなお囲碁への情熱を抱く君を必ず神の一手へと導いてみせよう!」

 

 くいっと眼鏡の中央を指先で押して、きらんと瞳を光らせる。

 言動こそ目も当てられないようなものであったが、その容貌は非常に整っていた。中性的な美少年である。

 日頃の振る舞いさえ改めれば数多の女性が虜となることだろう。

 

 ネット上にて桂馬は、(ゲーム世界の)いかなる美女をも落とす〝落とし神〟の異名で呼ばれている。もっともその正体を知る者は誰もいないが。

 名の由来は、彼が運営するギャルゲーの攻略サイト「落とし神」にあった。

 そのサイトは情報の質と量が図抜けており、最新作すらも発売日当日に全ての攻略情報が掲示される辺りに運営者の天才的な攻略手腕が伺える。

 そのため落とし神は、素性不明ながらも多くのギャルゲーマー達からまさしく神の如く崇められていた。

 

 

 

 そう、かつてネットを通して囲碁界を騒がせた最強の棋士〝sai〟のように……。

 

 

 

***

 

 

 

「ふぅ~~~~」

 

 今クリアしたゲームのエンドロールを眺めながらボクは一息つく。

 今日も無事に悩めるヒロインを救うことに成功したぞ……。

 

 しかし、古い作品とはいえ実にユーザー泣かせのゲームだったな。

 CPUと対局すると酷い時には10分以上も長考するし、一局に何時間もかかる事もある。人間同士の対局ならまだしも、何故コンピューターが大してレベルの高くもない対局でこんなに時間をかけてくるのか?

 また、処理能力の問題なのか知らんが、こちらが勝っているはずなのに持碁として引き分け扱いにされる事もあった。一体何度やり直したことやら……。

 

 だが、そんなことはボクには関係無い。

 この世には悪いゲームはあっても悪いヒロインなど存在しない。救いを求めるヒロインがそこにいるならボクは諦めずに挑み続けるだけだ!

 

「神にーさま!いますか~?」

 

 今日も来やがったな……。ボクの何より尊いゲームタイムを脅かす疫病神が。

 本当なら無視してしまいたいんだが、そんなことをすると後々もっと面倒なことになるのは目に見えていた。

 

「何だエルシィ?一体どうした?」

 

 ちょうど先程のエンディングを見終わったタイミングだったこともあり、ボクは渋々自室から顔を出して問いかける。目の前の女───エルシィことエリュシア・デ・ルート・イーマに。

 どうか頼むから他愛の無い用事であってくれ。例えば面白いテレビ番組があるから一緒に見たいとか。

 また面倒な任務に奔走させられるのは御免だからな?

 

 

「駆け魂が取り憑いてる女性をまた街で見付けちゃいました!お名前は奈瀬明日美さんという方だそうです!」

 

 

 ボクのゲームの時間がまた削られることが確定したらしい。

……やっぱり現実(リアル)なんてクソゲーだ!

 




この二作品をコラボしようと思い立ったのは、
久しぶりに神のみを読んでいて、将棋回の天理(ディアナ)VS七香のライバル関係が、
ヒカ碁の初期におけるヒカル(佐為)VSアキラの構図に似ているとふと思ったためです。
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