「
身体を取り戻して再び悪事を働くべく人間界へとやって来る。
深い苦悩を抱く人間の心のスキマを隠れ場所としており、心のスキマに由来する負のエネルギーを糧としている。
専ら女性をターゲットとするのは、宿主の子供として転生するためだ。
死者の魂を浄化する役目を担う新地獄の冥界法治省は、駆け魂を捕らえるため新悪魔による部隊を編成した。その部隊名が「駆け魂隊」である。
駆け魂が巣食っている女性の心のスキマを満たすことによって駆け魂を取り出し、そのまま捕縛するのが駆け魂隊の任務となる。
駆け魂隊の一員であるエルシィ及び
大変強引な形で協力者にさせられた桂馬は、当初は嫌々エルシィに手を貸していたが…………
***
「で?その奈瀬明日美とやらの情報はあるのか?」
「ありますよ!にしても神にーさま、最近は割と素直じゃないですか?」
「……もうゴネるのも面倒になってきたんでな」
断じて使命感に目覚めたわけではない。
もし事態が悪化すると命を失うというペナルティさえ無ければ、
ボクの諦観を知ってか知らずか目の前の悪魔、いやバグ魔はニコニコと情報を羅列する。
「奈瀬さんは神にーさまの一つ歳上の高校三年生。誕生日は5月10日で、血液型はB型。家族はご両親とお兄さんと弟さんがいるそうです!」
「……またその羽衣でスキャンしたんだな?相変わらず便利なこった。他には何か目ぼしい情報あるか?」
「はい!羽衣さんで透明化して後を付けてたんですけど、どうやら囲碁が大好きみたいですね~」
「囲碁?」
「あの黒い石と白い石を交互に置いていく遊びです!それを学校から帰って毎日のようにやってましたよ!」
囲碁ねぇ……。今さっき囲碁が題材のギャルゲーをプレイしたばかりだ。
ついこの前に将棋女を攻略して今度は囲碁女がボクの前に立ちはだかるとはな。
ゲーム世界の神を名乗る者として、たとえボードゲームであろうとも挑戦を受けて立とうではないか。
「そいつは囲碁は家でやってるのか?」
「いえ、流石に家の中ではどうか分かんないですけど、なんかお店みたいな所に入ってやってました。同じ場所で他にもたくさんの人がしてましたね」
ふむ…。碁会所という場所で碁が打てるというのはどこかで聞いたことあるぞ。
まずはそこに行って情報収集と洒落込むか。
「それ場所はどの辺か覚えてるか?」
「はい!バッチリです!」
ちょっと見直したぞエルシィ。では早速出発だ!
…………さて、奈瀬の行きつけらしい碁会所に行ってきて、何局か打ちつつ席亭や客から彼女の話を聞いてきた。人当たりの良いエルシィも連れて行って警戒心を解したのが功を奏したな。
彼ら曰く、どうやら奈瀬はただ碁を打つのが好きなだけではなく本格的にプロを目指しているらしい。
それでプロの養成機関である「院生」に所属しているそうだ。そのため彼女は定期的に日本棋院へと通っているという。
そして、奈瀬はもう何年も院生であるにも関わらず、未だプロになれていない。更に今年18歳の彼女は、院生でいられる最後の年度であることを度々愚痴っているとか。
こうした事情による焦りや絶望が心のスキマに繋がっている可能性が極めて高いな。
ならばボクは、奈瀬の攻略を本格的に始める前に囲碁で彼女を鍛えることが出来るくらいの棋力は身に付けておいた方がいいだろう。
棋力を上げるにはどうしたものか……。
「でも神にーさまはもう充分強いんじゃないですか?さっき碁会所のおじさん達に勝ちまくってましたよね?」
「言い方は悪いが、あれくらいの相手に圧勝した所で充分とは言えん。奈瀬の指導に当たるには余裕でプロになれるくらいの実力が必要だ」
ボクはネットを立ち上げて色々と調べる。
本当はボク自身が院生になってしまえば色々と手っ取り早いんだが、院生試験にも年齢制限があるからな。14歳をとっくに超えてしまっているボクには受験資格が無い。
となると残された手段の一つとしてプロを自宅に呼んで指導を受けるのが安牌なんだろうが、一体誰に依頼しようか?
それなりに高名なプロだと相応の報酬を渡さなければならないはず。幾ら"M資金"があるとはいえ、今後買う予定のゲームのことを考えるとあまり出費はしたくない。
かといってあんまりヘボでもそれはそれで非常に困る。
「前も思ったけどM資金って一体何なんですか?」と聞いてくるエルシィをスルーし、ボクは自分の目的において最適な棋士を探し続ける。
そこでボクは一人の男に目を付けた。
この進藤ヒカル初段に…………。
院生に所属していられる年齢は、現在は17歳になる年度(高校二年生の3月)までですが、
ヒカルの碁で伊角さんが高校三年生まで在籍していた他、最終話では奈瀬も高三でありながらまだ院生に残っていたため、そちらに合わせております。