IF:くまに飛ばされたブルックの行き先がエレジアだった世界   作:館凪 悠

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7.鳥籠-In this Cage-(ドレスローザ6)

 “麦わら一味”がドフラミンゴと正面切って戦うと決めた矢先、様々なことが発生した。

 一つは、ルフィたちの前に拘束したトラファルガー・ローを連れたドフラミンゴが現れ、ゾロと錦えもんと一触即発になったこと。

 そして、ドフラミンゴが七武海と自身の出自を利用して、海軍と組んでいたことが発覚。さらに、あの飲食店にいた盲目の男が、“海軍大将”であり、“麦わら一味”と敵対していることも発覚した。

 もう一つは、サニー号の目の前に現れた巨大な船。

 ルフィが魚人島でケンカを売った、“ビッグマム海賊団”の船の出現だった。

 どうやら、シーザーはビッグマムからも依頼を受けていたようで、その船の狙いはシーザーであるらしい。

 この混乱をどうするか──。

 真っ先に答えを出したのは、サニー号にいるナミだった。

 

『私たち、ドレスローザに戻らないほうがいいと思う!!』

 

 そう別行動を提案した。

 この戦いの大局を見ての判断だ。

 “麦わら一味”がドフラミンゴと奪い合っているカードは三枚ある。

 一つ、“シーザー”。

 一つ、“SMILE工場”。

 一つ、“モモの助”。

 そのうちの二つは“麦わら一味”の、しかもサニー号の上にある。

 なら──。

 

『トラ男の作戦も、そこにあったはず! ドフラミンゴに捕まってまで守ったこの二枚のカードを、私たちが差し出すようなマネをしたら、あいつ報われないじゃない!!』

『……よし、わかった! お前らは先に“ゾウ”へ向かってくれ!!』

 

 ローの言っていた次の目的地へ行けと、ルフィが船長命令を出す。

 そして、サニー号組はビッグマム海賊団との海戦をしながら、“ゾウ”へと先行する。

 ルフィたちは、ローを助け、ドフラミンゴを倒すために王宮を目指す。

 ウタたちは、当初の作戦通り、ドフラミンゴの持つ最後の一枚、“SMILE工場”を破壊すべく、小人たちとの作戦会議へと戻っていく──。

────

 

 

 

「……“SOP大作戦”??」

 

 オモチャの兵隊の言うその作戦名に、ウタは首を傾げた。

 名前だけでは、作戦の内容が全く分からない。

 ブリキの兵隊曰く──。

 ドレスローザの地下には、巨大なもう一つの港がある。

 そこは、武器の裏取引に使われる交易港、そして件の“工場”もそこにある。

 地下世界へと侵入し、休みなく働かされているトンタッタ族とオモチャを解放し、そして設備の破壊と共にドフラミンゴファミリーを打ち負かす。

 それが計画の概要だ。

 そして、それに必要なことは──。

 

「ドフラミンゴの部下にして、我々をオモチャに変えた張本人。“ホビホビの実”の能力者の意識を奪うことだ!!」

 

 その言葉に、ロビンが反応した。

 

「……意識を奪えば……なるほど、そうすればこの悪い魔法を解けるかもしれない」

「そういうことだ!」

 

 ブリキの兵隊が言う。

 このドレスローザのオモチャ全てが人に戻った時、同時に“失われた記憶”も人々は取り戻す。

 そうなった時、何が起こるのか……。

 誰にも分らない。

 ただわかるのは、“混乱”が起こるという未来だけだ。

 

「そうだ! それならよ、ウタの能力を使えば一発じゃねェか!?」

 

 手を叩いたウソップが、笑顔を見せて言う。ウタウタの力で、シュガーの意識を失わせればいいのではないか、と。

 おお、とトンタッタ族やブリキの兵隊、そして一味の二人も声を上げるが、ウタだけは静かに首を横に振った。

 

「おそらく……ううん、十中八九ムリだと思う」

「何で!? 子供たちを一瞬で眠らせてたじゃねェか!!」

 

 ウソップが両腕を開いて大げさな身振りで訊く。

 しかしウタはやはり肩を竦めるばかりだった。

 

「眠っただけで能力が解除されるなら、ホビホビの実の能力者は、十年間一睡もしていないってこと?」

「あ……」

 

 ウソップも、その穴に気が付いたようで、口元に手を当てて声を漏らす。

 

「確かに。睡眠はとっているはずれす」

 

 緑の帽子を被ったトンタッタ族が言う。

 ほらね、とウタが続けた。

 

「ウタウタの力で夢の世界に意識を連れて行くことはできるけど、その後は? 敵はホビホビの実の能力者だけじゃない。それに、私はそこまで厳密な指向性を持って能力を発動することはできないから、地下にいるオモチャもトンタッタ族も、まとめて眠ることになるかもしれない。“混乱”のために、それは悪手でしょ?」

 

 そもそも、オモチャに能力が効くのかもわからない。

 ヘタをすれば、能力者を眠らせたところで、操られているオモチャにこちらが倒されてしまう恐れもあるのだ。

 

「不安要素が多すぎると思う」

 

 ウタはそう言うと、ブリキの兵隊に向き直って、「ホビホビの能力者の特徴と、本来の計画を教えてよ」と言った。

 ブリキの兵隊は頷いて口を開く。

 

「ホビホビの実の能力者の名は、シュガー」

 

 緑の髪をした、幼い見た目の少女らしい。なんでも、悪魔の実を食べてから、その副作用か何かで歳を取らなくなったとか。

 

「偵察部隊曰く、今日も地下の“交易港”にいるらしい。いつものように、護衛として最高幹部のトレーボルを引き連れてな」

 

 そして、彼女を死ぬ程驚かせて気絶させる。

 それが“SOP作戦”だと言う。

 

「そう、(S)シュガー、(O)おったまげ、(P)パニック作戦ということだ!!」

「……あーそういう……」

 

 ウタが頭を抱えて呟いた。

 よし、とウソップが言う。

 

「相手が少女なら恐くはねェ! おれ様について来い!! そうさおれたちがいるからには!!」

「負け戦はさせやしねェ!! さあ地下へと案内してくれ!!」

 

 ウソップと共に、フランキーが気合を入れて叫ぶ。

 それをロビンは、冷ややかな目で見ていた。

 ウタは頬を掻きながら言う。

 

「あー……、ねえフランキー、ちょっと言いにくいんだけど……」

「アウ! なんだウタ?」

「フランキーの見た目で、“潜入”ってちょっと無理がない?」

「…………アウ!!!」

────

 

 

 

 

 狭い地下道を、移動する一団があった。

 トンタッタ族と、ブリキの兵隊、そしてウソップ、ロビン、ウタである。

 この地下道は、今日この日のために、この小さな反乱軍が掘り進めていたものらしい。

 普通の人間が通ることを想定していなかったから、天井もかなり低い。

 

「いやー、ごめんね、運んでもらっちゃって。……重くない?」

 

 一味の三人は、普通にその道を通ろうとすると時間がかかりすぎると言うことで、腹ばいになった格好で、数名のトンタッタ族に担いで運んでもらっていた。

 

「トンタッタ族は、みんな力持ちなので大丈夫れすよ、ウタランド!」

 

 そんな元気な声が、体の下の方から聞こえる。

 すると──

 

「隊長、報告れす!!」

 

 後ろから駆けてきたトンタッタ族が、走りながら敬礼をして言った。

 

「フラランドが“オモチャの家”で暴れ出したようれす!」

「そうか! ……無事だと良いが」

 

 ブリキの兵隊が、その安否を案じて、小さく呟く。

 結局、フランキーはその巨体は潜入には向かず、そして地下道も通れないという理由から、別行動をとることになっていた。

 彼の役割は、“囮”。

 地下の“交易港”へと繋がる、“オモチャの家”へ侵入するべく暴れる暴徒を演じ、ウタたちが“SOP作戦”をしている間、敵の目を引き付ける役割だ。

 自信たっぷりに、ウソップが言う。

 

「心配無用! 奴はスーパーサイボーグだ!!」

「それが、どうやら幹部が四人も護衛に入ったと連絡が……」

「……し、心配無用だっ!」

 

 ウソップの声が裏返る。

 そんなウソップの様子に、ウタは苦笑を漏らした。

 ウタとてフランキーを心配していないわけではない。だが、彼も一人の海賊であり、男だ。引き際の見極めはできるだろう。

 そうこうしているうちに、一行は地下の“交易港”へとたどり着いた。

 あちこちに鉄のコンテナがあり、物を運ぶためかそこかしこから騒音が聞こえてくる。

 ガシャァアン! と積み荷を落とした音が聞こえたかと思うと、怒号が飛び、悲鳴が上がる。

 

「ウソップ、ウタ、こっちよ」

 

 ロビンがコンテナの際に背を付けて、二人を手招きした。

 二人がその影からそっと外を見ると──。

 

「……オイオイ、本当にもう港町じゃねェかよ」

「いかにも闇取引してます、って感じ」

 

 ウソップは冷や汗を流しながら、ウタは眉間に皺を寄せながら言う。

 チョコン、とウソップの肩に乗った、緑の帽子を被ったトンタッタ族──レオが、ひと際大きな建物を指差した。

 地下の天井へと延びる塔の周囲に、丸い砦を構えて、そこから管のようなものが飛び出した建物だ。

 

「あのイソギンチャクみたいな建物が、“幹部塔”れす! トレーボルとシュガーはそこにいるはずれす!!」

 

 つまりは、あそこまで騒ぎを起こさずに行かなければならないということか。

 ウタは振り返り、「兵隊さん、指示を──」と口を開きかけて、その言葉の行き先を失って、口を半開きにして固まった。

 

「…………あれ、兵隊さんは?」

「隊長なら別行動れす! “SOP作戦”が成功した瞬間に、油断あるいは動揺したドフラミンゴを討つという大役があるので!!」

 

 トンタッタ族数名を引き連れて、既に王宮へと向かっているそうだ。

 では、指揮は──。

 

「はい! “SOP作戦”の指揮は、英雄ウソランドにお任せするのれす!!」

 

 にっこりと笑って、レオが言う。

 嘘を吐いたことによる貧乏くじだ、とウソップが頭を抱えるが、「ウソランド……?」と心配そうなトンタッタ族の声に、

 

「少し予想外だったから、考えをまとめていただけだ!!」

 

 とウソップは胸を張って言う。

 

「……しかしよ、お前らみたいに小さければ潜入も楽だろうが、おれたちみたいにデカい人間はどう潜入すりゃいいんだ?」

 

 ウタはそう言うウソップの膝が震えているのを見逃さなかった。

 大丈夫、と尋ねようとした時に、先にトンタッタ族が何か黒い布を担いで持ってきた。

 

「ウソランド、ロビランド、ウタランド! 着替えを用意したので、これを着て潜入するのれす!」

「これ、って?」

「この地下で働くドフラミンゴファミリーの制服れす!」

 

 なるほど、これを着れば潜入も楽になるかもしれない。

 フランキーが騒ぎを起こしているおかげで、敵の注意は地上に繋がるだろう出口の方に向いている。

 少しくらい、顔なじみのない者が混じったところで、バレる可能性は低いだろう。

 トンタッタ族からその服を受け取って、ウタは首を傾げた。

 

「……ねえ、これ、どこから持ってきたの?」

「そこれすよ!」

 

 トンタッタ族が指差す先──コンテナの影には、肩まで地面に埋まって気絶をした、三人の男の姿があった。

 誰が地面に埋めたのか。

 トンタッタ族がやったのだろう。

 あの脚力等を勘案すれば、この小さい体にそれくらいの膂力を持っていてもおかしくはない。

 ただ……。

 

「ちょっと匂うなァ……」

 

 ウタは遠い目をしながら、今着ている服の上から、その黒い服に袖を通す。

 

「作戦のために我慢よ……。やだ、少し湿っぽいわ……」

「おい待てロビン! おれのと勝手に交換するな!」

 

 そうして制服を着てスカーフを巻き、帽子を被れば、どこから見てもドフラミンゴファミリーの一員だ。

 

「しっかし、ウタ、お前その髪色目立つなァ……」

「しょうがないでしょ、生まれつきこうなんだから!」

 

 ウソップの呟きに、少し語気を強めて反論しながら、ウタは髪をスカーフの中に押し込み、少し匂いのする帽子を、髪の毛が見えないようにぎゅうぎゅうと深く被る。

 これで変装はバッチリだ。

 ウソップも、先ほどのビビりはどこへやら──、トンタッタ族の膂力を目の当たりにして自信が出たのか、堂々と宣言する。

 

「よし! さァ作戦開始だ! このウソランドが指揮を執る! 行くぞ、小さき兵士たちよ!!」

 

 その声を契機に、ついに“SOP作戦”が開始される。

 この国の行く末を知る者は、まだ誰もいない。

 




いつもお読みいただきありがとうございます。
次回か次々回で見せ場のシーン? になるかと思います。よろしくお願いいたします。

今更ですが、気づけば20万字を越えておりました。ひとえに皆様のおかげです。ありがとうございます。

今後ともよろしくお願いいたします。
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