星アキラは自由に生きたいっ 作:Magical forest
星アキラは今、10歳にして人生のどん底にいた。
きっかけは彼を批判する週刊誌の記事であった。
その週刊誌曰く、星アキラは演技の才能が欠けている凡人であるとともに、母親の権力を笠に着た傲慢な人間であるが、彼の母親が息子の可愛さから強引に仕事を与えており、母親が居なければ役者の仕事もできない無能であるという主張である。
「僕は自分の力で役者の仕事ができていたのではないの?」
そして、そんな傲慢な彼の出演を強制されたプロデューサーや現場は浮いた演技をする無能な彼を嫌っているという情報と、星アキラの傲慢な振舞や無能な演技の例として、悪意を持って、身に覚えのない事がさも事実のように書かれていた。
「みんなあんなにやさしくしてくれたのに、それは全部嘘だったの?」
さらに悪い事に、ネットの掲示版ではその記事が注目され祭りとなっており、彼の人間性と演技を否定する書き込みで溢れていた。
「あんなに頑張って努力して演技したのに、どうしてみんな僕を認めてくれないの?」
今まで周りの信頼を得ていると思い込み、自分の才能と仕事に誇りを持っていた彼の心を悪意を持った言葉が深く傷つけていく。
役者とは何か?演技の才能とは何か?なぜこんなことを理不尽に書かれなければいけないのか。
様々な感情で頭がいっぱいになった彼は、部屋に籠り演技や役者の本を読み漁った。
そして、自分には役者の才能が無い事を最悪のタイミングで知ってしまう。
「僕には役者の才能が無いの?」
それは、彼が薄々気が付いていた事実であったが、絶対に認められない事実でもあった。
星アキラという人間にとって、役者というのは夢やあこがれの職業ではなく、子育てをネグレクト気味であった母親とを繋ぐ唯一の絆であり、今まで生きてきた彼の基盤そのものであった。
「そんな事言ったって、役者じゃなければ母さんは僕を見てくれないじゃないか。」
食事も水も取らず、部屋に籠って3日目、彼が今まで生きてきた理由をすべて破壊され、限界が訪れようとしていた。
「そうか、僕は役者になりたいんじゃなくて、ただ単に母さんにかまって欲しくて役者を続けていただけなんだ。これは、そんな間違った動機で役者を続けていた僕への罰なんだ。」
彼はまだ10歳の子供である。本来は、ここまで追いつめられる前に大人が彼に寄り添い、彼の心を優しく守ってあげる必要があった。
しかし、女優時代に心が壊され、ネグレクト気味だった彼の母親は、息子が大きな挫折をする前に、自分には才能が無い事を知るべきだという、理性的な教育方針を持ち、彼を一人にしてしまった。
問題の週刊誌を彼女から直接渡されたという理由も大きいだろう。
「もう僕は誰にも必要とされないんだ。」
ある意味、これも息子にこれ以上苦労の道を歩ませたくはないという、母親の愛の形ではあるのだが、普通の母親は、息子の精神状態に気を遣うはずであり、飲まず食わずで3日も部屋に籠ったら確実に心配する。
しかし、彼の母親である星アリサは、元は超が付くほどの国民的なスター女優であり、現在はスターズという芸能事務所の社長として多忙の身であった。
さらに、悪い事に、彼の母親である星アリサから見ても、星アキラという息子は、役者の才能こそ無いものの、自分にはもったいないぐらいの非常に出来の良い息子であった。
彼女は、息子ならこういった挫折を乗り越えてくれるという歪んだ信頼を持っており、彼を意図的に放置した結果、悪い方向に進んでしまった。
「もう僕は空っぽなんだ。」
彼はメモ帳に"ごめんなさい"と書いた後に、本棚の上にロープを通して、自殺した。
しかし、彼にとって幸いなことにこれは自殺未遂となった。
未遂に終わった理由は彼が首を吊るために飛び降りた際に、ロープを結んでいた本棚が彼の体重に耐え切れずに、前に倒れて彼を押しつぶし、大きな物音に気が付いたお手伝いさんが部屋に駆け込んで、救急隊に通報したためであった。
結局、星アキラは、本棚が崩れる際に後頭部に裂傷を負い、3か月もの期間、昏睡状態に陥る。
そして前世を思い出す。
前世を思い出した星アキラの物語はここから始まるのであった。
重いプロローグになってしまい、申し訳ないです。
この後3話ほど、この騒動の顛末(ざまぁ)が書かれます。
昏睡状態で、前世を思い出すのは4話で、星アキラが目を覚ますのは5話目になります。
星アキラが目を覚ました後はもっとライトな感じで話が進んでいく予定です。
星アキラが目を覚ますまでちょっと待っていただけたら幸いです。
次回は掲示板回の予定です。