星アキラは自由に生きたいっ 作:Magical forest
ニムニム生放送で人気配信者だった私は、ある日「VTuberやってみませんか?」というDMを受け取って、あるVTuber事務所の3期生としてデビューすることになった。
VTuberはこれからさらに発展が見込めるコンテンツで、配信で生活できるのであればすごく嬉しいので、2つ返事で了解した。
同期は5人で、それぞれファンタジーな格好のVTuberとしてデビューし、私はニムニム放送のリスナーも来てくれて、出足は非常に好調だった。
同期の一人と仲良くなってそのままカップリングが出来て、てぇてぇ感じで放送も回り、リスナーも雪だるま式に増えていった。
もう一方の同僚もカップリングができて、カップリング同士で交流もでき、わたし達4人は順調にリスナーを増やして収益も上がって行った。
5人の同期で2つのペア。同期の1人が余って孤立してしまい、その1人とはチャンネル登録者数に如実に差が付き始めた。
私達4人はニムニム生放送やキュアキャスなんかの配信経験者だったのに対して、その子は全くの素人で、放送内で会話を回すのも苦手としていた。
秋色ダリアというそのVTuberは、ファンタジー世界を旅する吟遊詩人という設定だったけど、秋色ベースの落ち着いた容姿でやや地味であり、ファンタジーでカラフルな他の同期と比較しても目立ちにくくて、ビジュアル面でも最初からハンデを負っていた。
放送内容もクラシックのエピソードを紹介してその曲を生演奏してみたり、ゲームが苦手だったりと正直に言って、非常に絡みにくい物だった。
JPOPかアニソンでも歌ってくれればまだコラボできたんだけど、歌配信もそんなに行わなかったので、なかなかきっかけを掴めなくてずるずると時が過ぎた。
ダリアさんはいつも放送内容を改善しようと努力していたし、すごくリスナー思いだった。
しばらくすると、ダリアさんも放送の技術や話術も上がってきて、何かきっかけがあればブレイクしそうなのを、同期のみんなでじれったく応援していた。
実はダリアさんの放送はすごく好きだった。安心できる落ち着いた声と音楽に溢れた生放送。サムネ作りや放送の準備をしている時には必ずアーカイブを聞いていた。
そんな彼女に魅かれて、少しずつだけれども明らかに質の良いリスナーさんたちが集まって来て、他のVTuberとはかなり毛色が違う独自のコミュニティーが出来ていた。
でもそれは「企業VTuberに求められる放送なのか?」と問われると非常に難しい所だった。私達はコラボをするから相互に登録者数が増えていくけれども、独自のコミュニティを築く彼女のチャンネルへの流入者は限られていた。
実際にダリアさんと他の同期とのチャンネル登録者数は10倍近く付き始めていた。
ついにVTuberとして契約が打ち切られるかもという話が出てきてしまった。
でもそれが転機だった。完全に追い詰められた彼女は、なんと「売れなくてクビになりそうなのでどうすれば良いか、号泣しながらリスナーと相談する」というとんでもない生放送を配信する。
これこそVTuberとして求められる放送であった。この放送は切り抜きで広められて一気にバズってチャンネル登録者数が増え始めた。
私達同期にとっても、彼女を助けられる最後のチャンスだった。
彼女がバズっているうちに、すかさず同期5人の3期生全員コラボを申し込み、「3期生全員本音トーク」と称してダリアさんをこれまで助けられなかった経緯と彼女へのダメ出し、そして3期生としてダリアさんとコラボしていきたいという生放送を放送した
放送内では台本なんて全く無し。全員がダリアさんへの思いを正直にぶつけ合う伝説の生放送になった。
ダリアさんは泣いていた。私たちもみんな泣きながらお互いの思いをぶつけ合い、そして放送が終わる事には初めて3期生全員が1つにまとまった。