星アキラは自由に生きたいっ 作:Magical forest
ダリアさんとコラボしてみると、意外にも放送はすごく盛り上がった。
特に私達4人は元は単独の配信者の集まりだから実はボケが多く、カオス化するのが定番だった。
正直いまさら、誰もツッコミ役にはなれなかった。
でも彼女の的確・・・、いや、かなりの頻度でそこツッコむの?っていう謎方向のツッコミが入る事で、カオス化していた放送がある程度収束して放送内で良い感じの流れができるようになった。
まさしく欠けていたピースがそろった感じ。
でもこういった会話術は、彼女自身が場を回すために努力して獲得した能力だというのは、みんな判っていた。
あらためて3期生5人全員でグループを作って、ダリアさんをダリ姉という感じでグループ内でみんなから慕われるようになるのに時間はかからなかった。
姉のような立ち位置だけど、妹のようにポンコツで、涙もろくて誰よりもリスナーを大切にする激情家。それが彼女。
常識人?いやVTuberに常識人は居ない。それは間違いない。
容姿の面でも大幅に改善した。私たちの事務所はチャンネル登録者数が一定数になると次のビジュアル(ガワ)を作ってもらえれるという制度だったんだけど、ダリ姉はその登録者に至らずに初期のビジュアルのまま悪戦苦闘していた。
彼女のママ(ビジュアルを描く絵師さんの事)は、4人でデビューするはずの3期生が突然1人追加になったために、4人と被らない彩色とコンセプトにしたら、目立たなくなってしまい、修正する時間も無かったと反省していた。
実際、彼は超人気絵師さんで沢山のVTuberのママであることから、推しを公言する事は無いんだけど、しょっちゅう彼女の放送に現れてスパチャを投げていくことから、ダリ姉推しであることは明白であった。彼もまた孤独に絵を描く作業中にダリ姉の声と音楽に癒されているんだろう。
そんな彼がバズって規定数に達したダリ姉の新しいビジュアルに全力投球した結果、ダリ姉の雰囲気に合った、初回のビジュアルとは全く違う垢ぬけたビジュアルに大変身して、ダリ姉の人気が加速した。
2組のカップリングで、「てぇてぇ」する私たちの間にできた共通の親友。それが彼女の立ち位置。私たちのグループに彼女は綺麗に収まった。
何度もコラボをしていると、馴染んできて、ついに私たちのグループで全員が一堂に会するオフコラボ(直接会ってコラボする事)が実施された。
初めて会うダリ姉はウルトラ美人だった。濡烏の髪に色白の肌、整った容姿をした完膚なきまでにお嬢様だった。
えっ?何でVTuberなんてやっているの?実写ならビジュアルだけでチャンネル登録者数うなぎ登りなのに。
ダリ姉が美人すぎて、顔合わせの時に私達4人の方がコミュ障になってしまった。何て事だ。ガワより中の人の方が美人とか意味が解らない。
でもオフコラボ放送が始まればダリ姉はダリ姉だった。あの独特のセンスのツッコミは生でやるとさらに切れが良くて大好評だ。
ダリ姉の中の人の正体を知ったのは、彼女の歌が上達して3期生全員でライブをやった後だった。
その頃には、みんな仲良くなって、夜遅くまでボイチャなどでくだらない話で盛り上がったり、一緒に遊びに行ったり、お泊り会などもしていた。
3期生全員でライブなんてちょっと前までは全く考えられなかったけど、みんなでアニソンを大合唱して、私達の歌にダリ姉のピアノの生演奏を付けてくれたりして、リスナー達と一緒に最高のライブができた。
そのライブ会場を出る時に私達と一緒に居たダリ姉が見られたらしく、中の人が特定されたようだった。私達は、もともと配信者からVTuberになったから素顔はわりと知られていた。
私達の認識では、ダリ姉は元々配信は素人だったし、良いとこのお嬢様で昔、音楽を習っていたんだろうなぐらいの認識だった。コンクールに出たみたいなことを配信で言ったことも無いし。
ライブの翌日にダリ姉の正体がバレて、トイッターや掲示板界隈がざわざわしていたので、私も初めて掲示板に書かれていた彼女の本名でググってみた。
事故で亡くなった、世界的なピアニストの父とヴァイオリニストの母を持ち、両親を継いでピアノとヴァイオリンの両方を操る天才演奏家!?
ピアノとヴァイオリンの両方で子供の頃から国内の賞を取りまくり、海外でもいくつもの賞を取ったクラシック界の至宝になるはずだった人?
両親の死を契機に音楽活動を辞めたみたいだったけど、辞めた後の就職先がVTuber?
えっと?何? 私たちが普段癒されていたあの放送は、実はコンサートホールで何万円も出して聞くような音楽だったってこと?
そりゃあいい音楽な訳だよ。ダリ姉の音楽をお金に例えるようなゲスいことはしたくないけど、これにはびっくりだよ。
その日の夜にみんなで音声チャットでおしゃべりするときに「何でVTuberになろうと思ったの?」って聞いたら、ぶらぶらニートしていたら、昔コンクールでライバルだったグランドマネージャにスカウトされたって!?
大学生で起業した社長の片腕で、実質的に会社を取り仕切っている、あのミステリアスなキャリアウーマンの過去をこんなところで知るなんて!
4人だったはずの3期生に突然1人追加されたのも納得だよ。
ガワから設定までバーチャルと嘘で固められたVTuberを演じる中の人(演者)。嘘と真実を織り交ぜてみんなを楽しませるこの業界にこんな本物が転がっていたとは。
VTuberはやっぱり魔境だね。
大分長くなったので「ある同期VTuberの話」はここで一旦停止です。ダリ姉のお話は今後も閑話的に続けていこうかと思っています。