星アキラは自由に生きたいっ 作:Magical forest
2014年の初詣で引いたおみくじは大吉だった。 私は今年こそ仕事が上手く行くように神様にお祈りをした。
私の勤めていたアニメーション制作会社の経営が悪化したために、そのあおりを受けて退職する事になってはや二年。 経営悪化の理由は、アニメの権利関係でごたついて、費用を回収できなくなったためだったのだけど、それまでの仕事が快調だっただけに、すごく不運だったと思う。
私は、なんの準備も出来ていない状態でフリーランスのアニメーターとなって、なんとか原画の仕事をもらって食いつないでいるものの、私の経済状態は年々悪化して、どんどん追い詰められていた。
前の会社で後輩だった久乃木さんとルームシェアをしてなんとか生活費を切り詰めてはいるけれども、アニメータの中でも原画の年収は低くて、がんばっても私の年収は200万円に届かなかった。
このままじゃダメということで、去年から中古のパソコンとタブレットを買って、友人のみーちゃん(藤堂美沙)に教えてもらって、勉強しながらCGのイラストを描く仕事も始めたけど、そちらの仕事もスマフォのキャラクターを描く仕事が数点あっただけで、収入アップには至っていない。
もちろん。原画マンとしては、原画を描くスピードを上げて、沢山の原画を描いて収入アップを目指すべきだけれども、原画自体の単価が安くて、がんばってもなかなか収入増にはつながらなかった。
前のアニメーション制作会社に入社した時とは違って、今では原画とアニメーションの仕事は業界の水準レベルでできるようになったけれども、原画担当のアニメータの年収水準自体が低いので、普段やっている仕事量のわりには、生活が苦しい状態がずっと続いている。
いつものように、受注した原画の仕事をやっていた三月初旬に、私は原画を描きながら、何気なくTVを付けてると、アカデミー賞の中継がやっていて、アキラ君が助演男優賞を受賞した所をぼーと観ていた。
その時に、私のアキラ君を見た印象は、なんて輝いている人なんだろうという月並みの感想だった。 スターの輝きっていうのかな? 私はスピーチで無邪気に笑うアキラ君から目が離せなかった。
私は、描いている最中の原画の紙を横にずらして、セイバーのコスプレをして無邪気に喜ぶアキラ君を無心で鉛筆が動くままにサラサラと描いていた。
仕事じゃない形でこんな風に絵を描くのは本当に久しぶりの事だった。
何も考えずに、体が動くのに任せて描いたアキラ君の絵は、自分で描いたとは思えないほど生き生きとした表情の絵だった。
私はこの線画をPCに取り込んで、ペン入れと彩色を行って、受賞おめでとうのメッセージと共に、大してフォロワーの居ないトイッターに絵をアップした所、これまで見た事無いぐらいリツイートやコメントが付いて、ぷちバズってそのイラストを見たアニメーション会社の人から新しい仕事をもらう事ができた。
「珍獣様ありがとうございます。」
私はこの体験から、密かに幸運の珍獣としてアキラ君を崇める事にした。
実は珍獣の着ぐるみを着たマスコットアキラ君のイラストを勝手に作って机に飾っている。このイラストを飾ってから仕事も少し順調になった。
とは言え、やっぱり生活は苦しい。 今年で状況が好転しなければアニメーターとしての夢をあきらめて、故郷の山形に帰る事になるだろう。
そんな生活を続けていて、季節は夏へと移り変わったある日。 私の仕事用のメールアドレスにアキラ君本人から仕事の依頼が舞い込んだのだった。