星アキラは自由に生きたいっ 作:Magical forest
アキラ君の配信の翌日、昨日の夜は何度もアキラ君の放送をリピートして見ていたので、私はかなり遅く起床した。
そして、自分のトイッターアカウントを見たらビビって固まった。 前日まで百人ぐらいだったフォロワー数が突如数万人に増加していた。
フォロワーの中にはアキラ君の他に千世子ちゃん、景ちゃん、阿良也君のアカウントも含まれており、私のトイッターはとんでもない状態になっていた。
それだけではなく、お仕事用のメールアドレスには千世子ちゃん、景ちゃん、阿良也君、ラーヤちゃんのアバターを作る依頼の他に、沢山の依頼が入っていて、頭がパニックになってた。
この時の私は全く冷静じゃなかったけれども、あとでこの時のことを冷静に振り返ってみると、実は私は、一晩にして生活に困窮するアニメーターから、星アキラのアバターを作成した日本トップクラスのイラストレーターに全く意図せずに変身していたのだ。 とは言っても異世界物のライトノベルみたいに部屋の風景が変わった訳でも無ければ、別人になった訳でも無い。 ただ何が起こったのか脳の理解が全く追い付いていなかった。
私は呆然として言葉が出なくなって、一緒に住んでいる久乃木さんと一緒にあうあうしていると、ピンポーンって玄関のチャイムが鳴った。
「こんにちは。 昨日のアキラ君の放送見ていたわよ。 本当にいい絵を描くようになったのね。」
入ってきたのは前のアニメーション制作会社で総務担当だった興津由佳さんだった。 前のアニメーション会社の経営が悪化してからは非常勤になってたはずなんだけど、何で?
「何で?って顔をしているわね。 原因としてはあなたが二次元アキラ君のママになったからかしらね。」
「アキラ君が私のことをママって言ってくれたのは嬉しいですけれども、別にアリサさんと違って本物のママって訳でも無くて、放送中の冗談みたいな物ですよ?」
「私はムサニ(武蔵野アニメーション)を非常勤になった後にエージェントに頼んで、並行してできるマネージャや事務の仕事を探してもらっていたの。 それがアキラ君の目に止まったみたいで、私とあなたの関係をちゃんと調べて、アキラ君と面会した上であなたのマネージャとして働くように、ここに派遣されて来たって訳。」
「私に興津さんを雇えるお金なんて無いんですが・・・。」
「アキラ君から1年分の費用はすでにもらっているわ。 別にフルタイムで働くわけでもないし、ムサニと掛け持ちだからそこまで高額って訳でも無いんだけど、ちょっと付き合いの出来たイラストレーターのために、1年分の給料をポンって出すアキラ君は本当に凄いわよね。」
「アキラ君にそこまでしてもらう訳には行かないのですが・・・。」
「してもらうも何も、私の1年分の給料はすでに支払い済みよ。 あなたも、来年には私を余裕で雇えるぐらい稼いでいるだろうから、来年以降の私の契約はその時になったら考えようですって。 アキラ君は今後もあなたに仕事を頼みたいみたいだから、あなたがこのまま失敗するのを望んでいないのね。」
「失敗するも何も、私にそこまでの仕事は・・・。」といいかけて、さっき見たお仕事用のメールアドレスの事を思い出した。
「あなたよりも、アキラ君の方がずっと現状を理解しているのね。 面会した時も思ったけれども、あの子っておちゃらけているように見えても、そこら辺の大人よりもずっと大人よね。 さてと、まずはあなたに来た仕事の仕分けをしましょうか。」
そういうと、興津さんは私の今抱えている仕事を確認した後に、私の仕事用メールに来た仕事のうち、優先的に受けるもの、期限を確認して合うようなら受けるもの、お断りする物をテキパキと仕分けして、お断りする仕事は角が立たないメールを書いて片っ端からばっさりと断って行った。
「おいちゃん(宮森あおい)の仕事を断るのはまずいんじゃ・・・・。」
「私もムサニに務めているから、内心ではこの仕事は受けて欲しいわ。 でもこの仕事は1カット4000円。 口パクだけだと1~2時間ぐらいで終わるけれども、このシーンは1日~2日はかかるわよね? 正直な話、この仕事を受けても最低賃金にも全く届かないわ。 対して、アキラ君が発注してきた千世子ちゃんのアバターは、多く見積もっても3週間ぐらいの仕事で百万円近くよ? そして原画の仕事は、その他大勢のスタッフロールの中にあなたの名前が載るだけだけども、アバターの方はあの百城千世子のアバターを作った絵師として、日本中から尊敬と賞賛を集められるのよ? どっちの仕事の方が重要かなんて比べるまでも無いじゃない。」
「でもずっとお付き合いしている訳ですし・・・。」
「イラストレイターの仕事は今の機会を逃したら、おそらく今後やって来ないわ。 対してアニメータの仕事なら、あなたの技術があればいつでも仕事を取って来れるわ・・・業界の単価は安くて生活は苦しいけど・・・。 それなら今しかチャンスが無いイラストレイターの仕事をやってみるべきじゃないの?」
「分かりました。 でもおいちゃんの方には私から電話を入れて断っておきます。」
「だめよ。 そんな事をしたら宮森さんに絆されて仕事を受けちゃうに決まっているじゃないの。 この件は私の方から断りを入れておきます。」
興津さんを雇ったアキラ君の采配は実に見事だった。 今なら珍獣軍師を名乗ってもいいと思う。 おそらく私だけだと、仕事を断り切れずにダラダラと色々な仕事を受けて、期限を守れないか、中途半端な納品になって、そのまま信用を失って、このチャンスを生かすことができなかっただろう。
興津さんがクリエイティブな作業以外の自営業にまつわる諸々の作業をやってくれたお蔭で、私はイラストやアバターの仕事に集中できて、やった仕事が認められて、また新しい仕事が来るという好循環へと突入して行った。 久乃木さんも私の仕事を手伝ってくれるようになった。
そして、ほどなくして私はアキラ君、キアラちゃん、千世子ちゃん、景ちゃん、阿良也君、ラーヤちゃんと言った、日本をときめくこの世代のトップ俳優達のママとなったのと同時に、私の子供達(イラスト達)を良くテレビとかYoutubeで見るようになった。
この子達の使われ方は、Youtubeの動画に出る事も多かったけれども、それ以上にテレビのちょっとした番組宣伝やコーナーなどの用途に使われる事が多い。
例えば景ちゃんと千世子ちゃんは、朝6時からのニュース番組で1コーナーを持っており、6:40分頃から私が作ったアバターを使って、二人でお洒落アイテムを紹介するコーナーを持っていた。
録画らしいんだけど、そのままの姿でやると撮り貯める時も、毎日分の放送の度に別の服を着て収録しなければいけないのが、アバターを使うと着替えなくてもいいし、商品をアップで映して商品紹介に集中できるのと、キャラクターが受け入れられやすくてすごく好評だって言ってた。
最近ではスタジオに入れない時も、代理でこのアバターを使ってテレビなどに出演する事があって、それぞれのメンバーの第二の顔として私の作った子供達が活躍していた。 最近の私はテレビで見る自分の子供達の活躍に興奮して、完全に親バカになっていた。