星アキラは自由に生きたいっ 作:Magical forest
第6話で僕がアドリブで爆発した次の日、僕達俳優陣と制作陣が一堂に会議室に集められた。
「やっほー。主役のアキラ君が来たよ。」
僕は元気よく挨拶すると、阿良也も横でペコリとお辞儀した。
「アキラ、阿良也来たわね。 あなた達のために、特別席を用意してあるわよ。」
「流石アリサママ。 わかっている~。 主役の僕にふさわしい席だよね。どこ?」
「ここよ。」
会議室には、なぜかアリサママの横の席に一畳の畳が置いてあった。
「あなた達は、そこの畳に正座して反省していなさい。」
「ひっ酷いよアリサママ! この畳に座布団すら敷かれていないじゃないか! こんなのに正座したら、足がしびれて大変な事になっちゃうよ。」
「そうだ!そうだ! 俺とアキラはこのドラマに欠かせない大切な俳優なんだから、こんな畳の上で正座させられたら今後の演技に響くよ。」
「二人とも、三下のやられ役の演技をどうもありがとう。 それじゃ、ここに正座しなさい。」
「あっ、アリサママ本気なの!?」
「もちろん、本気よ。 あなた達が正座して苦痛に歪む表情を見れるかと思うと、気分爽快よ。」
「こっこの鬼ママが! こっ、こんなの可愛いアキラ君の大虐待だよ!! これが芸能記者とかにバレると、あの星アキラが虐待されているって大スキャンダルだよ!」
「そうだ!そうだ!」
「いいから、二人ともここに正座しなさい。」
「はい。」
「はい。」
僕と阿良也は、畳の上で正座しながら会議に参加する事になった。トホホ・・・・。どうしてこんな事に・・・。
「スターズ社長の星アリサです。 今回は私の呼びかけによって、お忙しい中、お集りいただき本当にありがとうございます。」
アリサママは、会議冒頭のあいさつを始めた。
「今回お集りいただいたのは、この横で正座して居るバカ二人のアドリブによって、ドラマの筋書きが大幅に変わった事への対策と同時に、無理が来ていた今後シナリオ展開について、話し合う場が必要だと考えて、この場を設けさせていただきました。 確かにこの二人は愚かにもアドリブでシナリオを破綻させたのは事実です。 私は芸能事務所の社長として、この二人の暴走を止められなかった事をここで謝罪させていただきます。 大変申し訳ございませんでした。」
そうして、アリサママは頭を下げた。
居心地が悪かったので、僕と阿良也も一緒に頭を下げた。
「ただ、この二人もシナリオを破綻させたくて破綻させたわけではなく、元々の脚本にかなりの問題があった事は事実です。 また脚本の方でも、もう対応が難しい状況である事を聞いています。 そこで、この会議でディスカッションを行い、問題点を洗い出して、このバカ二人が破綻させたシナリオのフォローと今後のシナリオの修正や改善を行いたいと考えています。」
アリサママは続けて言った。
「今回のシナリオ修正にあたって、スターズの方で声をかけさせていただいて、お忙しい中で手を貸していただける6人の脚本家の先生を用意させていただきました。」
アリサママが今回用意した脚本家の人達が順番に挨拶をする。 ドラマとかで有名な脚本家や、アニメや特撮経験のある脚本家など、よくこんな短期間でこれだけの脚本家をそろえたものだ。 まさしくアリサママの人望が成せる業だろう。
「こちらの脚本家の先生達と共に、今回のウルトラ仮面における今後の問題点や、それをどう修正していくかについて論議していきたいと考えております。」
「今回の司会として、弊社企画部部長の後藤にこの会議を仕切らせていただきます。」
後藤さんはスターズで謎資金が入った時に作られた企画部の部長をしている人だ。 若草物語の舞台企画以来、社内では切れ者としてパトレイバーの隊長さんをなぞらえて『カミソリ後藤』の名前で通っている。 パトレイバーみたいに昼行燈じゃないけど・・・。 僕もグッズ販売やイベントの時など、良くお世話になっている。
「皆さんこんにちは。 スターズ企画部の後藤と申します。 今回はウルトラ仮面のシナリオ改善という事で、皆さんといっしょに改善策を導き出したいと思います。よろしくお願いします。 まずは、皆様が考えているウルトラ仮面の問題点を自由にご発言ください。 ただし、1回の発言で話せる時間は1分以内なので、頭の中で話す内容を良く整理してから、発言をお願いします。 それではスタートです。」
そういって、後藤さんは皆から問題点を聞き取り、ロジカルシンキングでロジックツリーにその問題点をまとめた。
会議室には、どこからか持ってきた、大量のホワイトボードに問題点が整理されて記述されていく。
みんな口々に好きな事を言っているのに、ちゃんと情報は整理されていき、ウルトラ仮面の脚本がかかえる問題点を見事に整理しきった。
続いて、問題点がひと段落したら、各問題点についてブレインストーミングをしてその問題に対する解決方法や、興味を引くシナリオ展開や矛盾解消のためのアイデアなどを書き出していった。
そして、台本修正の方向性が決まると、それをブロックに分けて、用意した脚本家にそれぞれ担当部分の振り分けを行った。
ウルトラ仮面の経験が無いと書けないと思っていた脚本だったけど、要素をわけてみたら見事な切り口で分業が可能になって、本当に特撮の技術が必要なコアな部分だけ、ウルトラ仮面の制作陣の仕事となり、他の部分はスターズが用意した脚本家で分担できた。
そして、アリサママは、このスターズが用意した6人の脚本家と、元から担当していた1人を加えた合計7人の脚本家をまとめて、高級ホテルで缶詰めにした。
7人の脚本家はお互いに話ができる状態で缶詰めとなり、脚本の内容をお互いにアドバイスし合い、高級ホテルの料理やサービスを使って容赦なく飲み食いを行って、親交を深めて、急速に新しい脚本が完成していった。
脚本家の人達も高級ホテルでの缶詰は初めてらしくて、普通のアパートとかに閉じ込められるよりもずっと良いと好評だった。
そこで順にまとめられた脚本を監督や俳優さん達がチェックして、問題ない話から撮影していった。
脚本の出来は劇的に向上した。 これならアドリブでぶっ壊れた部分や矛盾も修繕されて、完成度も高くてすごくワクワクする展開となった。
アリサママに後で「どうしてここまで脚本に介入する事にしたの?」って聞いたら
「元々、私もこの脚本は良くないと思っていたわ。 アキラやスターズのメンバーをこんな駄作に出演させるなんて、かなりの不満だったのよ。 でもこの脚本は制作会社側が用意するものだから介入ができなかったわ。 ただ今回のアキラのアドリブで制作会社側の脚本家がキャパシティーオーバーでさじを投げた事で介入できることになったのよ。 それに、ここで介入する事で他の俳優や制作会社側にも恩を売る事ができたわ。 アキラと阿良也は一緒にいい仕事したわね。」
「ねぇ、今回の黒幕って、てっきり巌のじっちゃんが裏で阿良也を焚き付けていたんだと思ってたんだけど、そもそもこんなに短期間で沢山の脚本家とかホテルの準備とかできる訳が無いよね? 真の黒幕ってもしかして・・・・。」
「アキラのような勘のいいガキは嫌いだわ。」
アリサママは僕がドン引きするような邪悪な笑みを浮かべていた。