星アキラは自由に生きたいっ 作:Magical forest
星アキラが自殺未遂騒動の謝罪についての記者会見を行う。
芸能関係のニュースを扱う各社や新聞社に電話やFAXで連絡があったのは8月のある日だった。
「へぇ。ちゃんと会見するんだ。」
あの自殺未遂はスターズや星アキラから見て忘れて欲しい過去のはず。復帰するにしても、しれっと復帰して、軽い復帰報道を行って、自殺未遂なんて無かった事にすると考えていたので、この記者会見はすごく意外だった。
アキラ君が3か月の昏睡状態を経て意識を取り戻した後に、回復期間が3ヵ月。あの事件からちょうど半年。
「回復は順調で今は静かに療養させてあげて欲しい」とスターズから報道各社に要請があり、回復に向かっている事が軽いニュースになった後は、各社も大人しく報道を控えていた。
いくら星アキラの病状に世間の注目はあっても、あんな経緯で自殺未遂になった子供の病室にずかずかと踏み込んで、本人に「自殺した時どう思いました?自殺の後遺症とかないんですか?」なんて聞いてしまったら、虚偽の記事で芸能記者全体の評判を地に落とした、あの週刊誌記者並みの批判を浴びて、芸能記者という職業が本当に反社会的な職業であると認知されかねない。
スターズと報道機関双方の思惑もあって、事件も風化しかかっている。
そりゃ自殺未遂した俳優という評判は、今後もアキラ君には付いていくかもしれないが、アキラ君は被害者だし自ら掘り返すことも無く、お互いのお約束の元でこの事件は自然に収束すると思っていた。
それが今回のスターズ側からの星アキラの謝罪会見。何か面白い事が起きると私のカンが告げていた。
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記者会見場に入った私は、テーブルを見て会見者側の席が1人分しか用意されていなかったのを見て失望した。おそらく代理人1人が状況を会見して当たり障りの無い事を言って終了だろう。
会見開始は午後2時40分から。ワイドショーでも生放送できる時間だ。
実際に何社かはテレビ局と生放送の準備をしているようだが、これでは会見場を一瞬映して星アキラの会見が行われていますというニュースを伝えた後に、スタジオに戻す感じになるだろう。テレビ局的には無駄骨だな。同じことを思ったのか、テレビ局のスタッフもリラックスして気を抜いているようだ。
そして記者会見の時間の時間になった。扉が開いて星アキラが会見場に1人で現れた時に会場は驚きに支配された。自殺を起こした本人が一人で現れるとは全く予想していなかった。
会見者は星アキラ以外には誰も居なかった。会場は一瞬にして、困惑と異様な雰囲気が漂う。
これは面白い事が始まりそうだ。みんなそう感じたようで、後ろではTV局のディレクターが興奮した感じで、局にワイドショーでの記者会見の生放送枠をそのまま取るように連絡している。
星アキラは背筋を伸ばして堂々とテーブルの前まで来ると、「この度は私の自殺未遂と一連の報道によって世間並びに関係者の皆様に多大なるご迷惑とご心労をおかけして、申し訳ございませんでした。」と言って、90度頭を深々と30秒以上頭を下げた。
一斉に炊かれるフラッシュの閃光。会見前の穏やかな雰囲気が一変して、ものすごい緊張感が会場を支配した。カメラマンや周囲の記者、TV局などの会場に居たすべての人間が、食い入るように彼を見つめる。彼は椅子に座らずに、席からマイクをとって堂々とそのまま話し始めた。
彼はまず、自殺の経緯と3ヵ月の昏睡。同時に3ヵ月のリハビリの後回復して後遺症などが無い事を3分ほど報告した。みんな知っている情報だったので、特に目新しさも無かった。
簡単に現状を報告した後、「それでは皆様の質問に答えさせていただきたいと思います。」と質疑応答に入る。記者から戸惑いの声が漏れる。会見に設定された時間は30分。まだ5分しか経っていない。普通は20分ぐらい自分の主張を言った後に、5分、10分の質疑応答の時間があるだけだ。これでは残りの25分間、アキラ君は記者の皆からサンドバックにされてしまう。
何で場を仕切れる保護者を置いておかないんだと、私は記者側にもかかわらずスターズの事務所側の不手際に苛ついた。
「××新聞社の○○です。問題となった週刊誌の記事なのですが、いつ、どのような経緯でお知りになったのでしょうか。」
「はい。自殺を起こす3日前の夜です。母親である星アリサから、僕に対して、『役者としての才能が無く、これ以上子役を続けて行っても、こう言った報道が増えていくだけだから、役者をこのまま続けるのか、それともここで辞めるのか、この週刊誌を読みながら身の振り方をよく考えなさい。』と言われて、あの週刊誌を手渡されました。」
1個目の質問からとんでもない爆弾が炸裂した。