星アキラは自由に生きたいっ 作:Magical forest
「はい。自殺を起こす3日前の夜です。母親である星アリサから、僕に対して、役者としての才能が無く、これ以上子役を続けていてもこう言った報道が増えていくだけだから、役者をこのまま続けるのか、それともここで辞めるのか、この週刊誌を読みながら身の振り方をよく考えなさい。と言われて、あの週刊誌を手渡されました。」
「でっでは、自殺の原因は星アリサさんにあるという事でしょうか」
「いいえ。違います。自殺の原因はあの週刊誌の記事と、それに便乗して盛り上がった掲示板やSNSにあります。母は私が星アリサの息子として、社会の期待に求められているレベルの役者になれないと判断していました。将来、そう言ったプレッシャーに潰されて苦労しないように、まだ生き方を変えられる子供のうちに、あの週刊誌を私に与えました。勘違いしていただきたくないのは、これは母親からの悪意ではなく、子供の事を考えた上での純粋な母親としての愛情から来る行動であると言うことを、ご理解していただきたいです。」
「でも実際にあなたはその母親から渡された週刊誌で自殺に至っていますよね」
「はい。それは母自身も週刊誌に同調して、掲示板やSNSがあんなに悪ふざけをして私を叩くとは考えていませんでした。こういった動きは母と私の両方で誤算でした。私は同調したSNSや掲示板などの意見をみんなの総意と勘違いしてしまいました。このわずかなすれ違いと、私の弱さから私は自殺未遂に至ってしまいました。このことについては、私が目覚めた後に母親から謝罪されました。こういった経緯で、皆様にご迷惑をおかけして大変申し訳ございませんでした。重ねてお詫び申し上げます。」
海千山千の芸能記者が星アキラと言う子供の答えに明らかに押されていた。星アキラは記者のいやらしい質問にも臆することなく堂々と答える。
「□□スポーツの▲▲です。あなたが3日間部屋に籠っていた間、あなたの母親は一度も会いに来ていませんよね。そう言った対応は母親として失格なのではないでしょうか。」
「まず第一に理解していただきたいのは、星アリサと言うのが一般の母親ではなく、スターズの社長として沢山の俳優やスタッフを守る立場にあるということです。私に雑誌を渡した翌日に、母は所属俳優の撮影のために出張しており、私の自殺の連絡を受けて、すべての仕事を投げ出して戻ってきました。母は僕とスターズの人たちを守るために、一生懸命働いていました。僕は母である星アリサの子供であり、最大の理解者であり、家族です。一般的な母親の定義を強引に当てはめて、僕の前で母のことを悪く言うのは辞めていただきたいです。」
自殺に対する母親の行動や、育児放棄疑惑についての質問は全て論破されていった。
「◎◎デイリーの◇◇です。あなたの父親は不詳なのですが、アキラさんは父親についてご存じなのでしょうか。また父親が欲しいと思った事は無いのでしょうか。」
今ここでそれを聞くの?という質問だった。星アキラの父親は、ずっと謎の存在であり、明かされる事も無かった。完全にプライベートな質問であり、答えるわけが無い嫌がらせのような質問であった。この質問で星アキラを怯ませるつもりだろう。
「父親については全く知りません。昔、母に聞いた時には「10人ぐらい心当たりがあるけど聞きたい?」と、いつもの真顔で言われたので、それ以来怖くて聞けていません。」
会場に軽い笑いが起き、空気がちょっと和んだ。
「父親が欲しいかという問いについては、正直不要です。父親の役割とは何でしょうか?精神的な事を挙げる人も多いかもしれませんが、第一には家庭に収入をもたらしてくれて、家庭を営むお金を稼ぐことではないでしょうか。しかし私達の家族では、母親は社長で収入も安定していますし、私も子役での収入で蓄えがありますので、現状では全く困っていません。家が貧乏で母が困窮していたら、確かに父親が居ないことを恨んだかもしれませんが、幸いにして私の家は余裕があります。父親の名前は一生言わなくても良いので、そのまま墓の中まで持っていってもらって、星アリサのミステリーの一つとして語り継いでいただけたら嬉しいです。」
余裕の回答であった。この子は本当に10歳なのだろうか?星アリサはどんな教育をしたらこんな子供に育つのだろうか? 育児放棄するとこうなるのだろうか?
これまでの話から、星アリサは虐待はしていないが、育児放棄気味だったのは間違いが無いようだ。でもそれを外から批判できる要素は、星アキラによって全て潰されてしまった。
育児放棄の被害者である星アキラ本人が問題ないと公言している以上、本質的には家庭の事情であり、外野から言えることはほとんどない。
星アリサの行いについても、少しサイコパスな気がするが、役者を目指す子供をしつける厳しい母親と言われれば、そのレベルとも取れない事も無い。
彼に対して虐待でも行っていれば話は別だが、星アリサが虐待を行っていれば、アキラ君はこの場で「母に虐待されています」と、素直に答えただろう。子供が大人の論理で弁護するという、とんでもない記者会見だが、話す内容は正直でおそらく嘘はない。
そもそも、「星アリサの育児放棄疑惑の記事」→「星アキラの記者会見」という順番でこの会見が組まれたのであれば、この辺の事を先に記事にして盛り上がったのだろうが、星アキラの方から最初にこの場で堂々と公言した上で、問題ない旨の見解を合わせて述べているいる以上、嫌疑を挟むようなニュース性もほぼ失われてしまっている。
この状況では、スターズや星アキラを敵に回してまで、この事を記事にするメリットは全く無い。それどころか、下手に憶測を入れて書けば、私もあの週刊誌記者と同じ末路を辿る事だろう。
可愛い顔して非常に手ごわい。でもいつまでも自分ペースで行けるとは思うなよ。
「▽▽芸能情報の●●です。」ついに私の質問の番が回ってきた。