星アキラは自由に生きたいっ   作:Magical forest

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星アキラは高校の文化祭を楽しむ

 

下田から2時間ぐらい運転すると熱海に到着した。そして、僕は目的の高校の校門の裏口から軽トラを入れた。

 

 

----------------- たこ焼き屋の娘さん視点 -----------------

 

「10時ごろには到着するって言っていたけど、大丈夫かな?」

 

私は数人のクラスメイトとお父ちゃんがたこ焼きの看板と道具を持ってきてくれるのを待っていた。

 

「下田じゃ、千世子ちゃんがやっているデスアイランドの撮影で、人が押し寄せていてお仕事大変なんでしょ?」

 

「でも、父ちゃんは星アキラが代わりに荷物を運んできてくれるから大丈夫って言ってた。」

 

「はははは。面白いお父さんだね。」

 

「そろそろ届かないとお昼に間に合わないよ。」

 

「あっ、父ちゃん来た来た。 ちゃんと看板も持ってきてくれたみたい。」

 

私は父ちゃんにわかるように手を振って車を誘導する。

 

「おーーーい。父ちゃん、こっちこっち!!」

 

車が私の近くまでやってきて、運転席の窓からとんでもないイケメンが顔を出した。

 

「君がたこ焼き屋さんの娘さんだね。 お父さんの仕事が忙しいって事で、代わりに僕が道具を配達させてもらったよ。」

 

「「「「「「「!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」」」」」」」

 

なんと実家の軽トラの運転席から顔を出したのは星アキラだった。

 

「ところでどこまで車を持って行けばいいのかな?」

 

「「「「「「「・・・・・・・・・・・・・・・・」」」」」」」

 

よくドッキリとかでアイドルが高校とかにやってきてみんな驚いて、キャー―――とか騒ぐシーンがあるかもしれないけど、あれは仕込みや嘘かもしれない。

 

こんな不意打ちで有名人に出くわした時のリアルな反応は、みんな目が点になって固まるのが正解だわ。目の前のことが信じられないもの。

 

私とクラスメイトは状況が呑み込めずに棒立ちしていた。

 

「あれ? ドッキリの番組みたいにキャー――! 星アキラよ!! とかのリアクションを期待していたのに、やたらとリアルな反応だね。」

 

「アキラちゃん、当たり前よ。 ああいう番組でも事前に話しているか、事前にテレビの撮影班が入っているんだからみんなある程度、期待するか察しているわよ。 本当に完全な不意打ちならこうなるわ。」

 

助手席の人が呆れながらアキラ君に話した。 私は助手席に目を向けるとあの百城千世子ちゃんが居た。 私はますます混乱した。 何がどうしたらどうしてこうなるの!? どうして星アキラと百城千世子が実家の軽トラックに乗っているの!?

 

私は千世子ちゃんの大ファンにも関わらず、現状が飲み込めずに、思考が停止して棒立ちするだけだった。

 

「あっ、ああ、案内しますので、あちらの裏口まで車を移動していただけないでしょうか。」

 

「はい。了解しました。」

 

クラスの学級委員長が我に返り、アキラ君を裏口まで誘導する。 車が移動した後に私達は正気を取り戻し、そして叫んだ。

 

「「「「「「「キャー――――――――――――――――!!!!!!!」」」」」」」

 

よくある、ライブで推しを見た時の歓喜の叫びじゃなくて、あまりの意味の分からなさにみんな思いっきり叫んだ。

 

そしてその叫びを聞いた他の生徒や先生達がやってきた。

 

悲鳴を聞いて駆けつけてきた友人の一人が私に聞いて来た。

 

「どっどうしたの!?」

 

「ほっ星アキラと百城千世子がたこ焼きの道具を運んで来たのよ!!!」

 

でもアキラ君も千世子ちゃんも裏口の前に移動した後だった。

 

「嘘乙。」

 

「本当よ! 裏口に居るんだから!!!」

 

私達は急いで裏口に行った。

 

裏口では委員長と、アキラ君と千世子ちゃんが巨大なタコ人形を降ろそうとしていた。

 

「あっ、来たね。 たこ焼きの道具を中庭の露店に運ばないといけないんでしょ? 手伝ってよ。」

 

目の前で憧れの有名人がやたらフレンドリーにたこ焼き道具を降ろしている所を見て、信じていなかった人達もみんな、固まってしまった。

 

「「「「「「「キャー――――――――――――――――!!!!!!!」」」」」」」

 

「うん。ドッキリっぽいリアクションになった。 やっぱり驚かされる側にもある程度心構えが必要なんだね。 勉強になったよ。」

 

「それはそうよ。事態を飲み込めないと普通は悲鳴も出せないわ。」

 

やっぱりあの、星アキラと百城千世子が居る!!!

 

全く意味不明だった。

 

私達の世代には星アキラと百城千世子、そして夜凪景と明神阿良也の4人は絶大な人気で、必ずこの4人のうちの誰か一人は猛烈な推しになっている。

特に歳が同じこともあって、3年生の世代には星アキラ、私達2年生の世代には百城千世子、1年生の世代には夜凪景が絶大な人気で、同じ歳というのが自慢だったりする。

 

演技からYoutube、女装までオールマイティーなアキラ君

この年にしてカメラの目線で同性も失神させる天才女優、千世子ちゃん

千世子ちゃんの親友にして最大のライバルで演技の天才、景ちゃん

普段は不思議君だけど、演技をした瞬間にカメレオンのように雰囲気が変わる天才舞台俳優の阿良也君

 

アイドル歌手に憧れる人も居るけど、そんな人達もこの4人は別枠。なんていうか、アイドルとは違った本物の輝き? この4人がみんな仲が良いという奇跡。

役者っていう厳しい世界で演技の才能を元に本当に輝いているキラキラ星!

私達じゃ絶対になれない本物のスター達!!

 

そんな、星アキラと百城千世子の二人が目の前でうちのお古で倉庫にあった、たこ焼き道具を運んでいた。やっぱり何度見ても私はこの状況が意味不明だった。

 

「どっ、どうして、アキラ君と千世子ちゃんがうちのたこ焼き道具を!!!」

 

「えっ?お父さんに聞いていない? デスアイランドの撮影で人が押し掛けて、たこ焼き屋さんが忙しくて道具を運べないので僕が代わりに運んで来たんだよ。」

 

「あれは、冗談かと・・・。」

 

「まぁ、冗談かと思うよね。 それじゃ文化祭、エンジョイさせてもらうよ。 後で来るからたこ焼き楽しみにしているよ。」

 

そう言って、道具を降ろし終えると千世子ちゃんを連れて校舎の方に行ってしまった。

 

----------------- 星アキラ視点 -----------------

 

「そんな訳で任務も完了したし、まずは文化祭のチケットで割引がある執事喫茶でも行こうか。」

 

「アキラちゃん、ちゃんとゴープロをセットしている所が嫌らしいわね。」

 

「そうだね。今回の動画のコンセプトは百城千世子といっしょに文化祭を楽しむ企画だから、そんな感じのリアクションを期待したいかな。」

 

「別にいいけど、アキラちゃんのパターンだとこの会話も動画内に入るわよね。」

 

「もちろんだよ!!」

 

「どんな感じがいいの? まさかアキラちゃんが男性視点で映して、甘々ラブカップルする感じ?」

 

「いや、それやるとインターネット検証班が出て、後始末がウルトラ面倒だから普段の僕に容赦がない千世子ちゃんでいいや。」

 

「最近はアキラちゃんと一緒にどこか行ってもあまり騒がれなくなったわよね。」

 

「正直、僕達を熱愛報道しても意外性が無くてあんまり面白くないからね。子供の頃から普通に出歩いていたし。そして騒いだところで、事実の通り友達ですで終わりだからね。」

 

「そうね。でもこの前、二人で渋谷にキアラちゃん用の服を買いに行ったときは、アキラちゃんのファンからもいっぱい手紙とかメールが来たわよ。」

 

「えっ?そうなの? 迷惑かけちゃってごめん。」

 

「内容は、『キアラちゃんにこんな服を着せてください。』ってやつばっかりだったけど。」

 

「あっ、その内容。それ、僕の方にも来たけど千世子ちゃんの方にも来たんだ。 あっここみたい。」

 

僕達は執事喫茶をやっている教室に入る。

 

「お帰りなさいませ。ご主人様、お嬢様・・・・・!?」

 

僕達が執事喫茶に入ると、男装した執事さんが出迎えてくれたが、僕達を見るなりフリーズしていた。共学だから、男性の執事さんと女性の執事さんが両方いる。

男性のお客が来たときは女性の執事さんが出迎えて、女性のお客が来たときは男性の執事さんが出迎えるようだね。

ただ、僕達は男女で同時に来ちゃったけどね。

 

「こっ、こちらにどうぞ。」

 

「ありがとう。」

 

裏からアキラ君と千世子ちゃんが来たって声がして、そんな馬鹿なって言いつつも、ダンボールで区切られている調理スペースから生徒達がチラっと顔を出して、僕達を見ると「キャー―――っ」ってみんなで喜んでいた。

 

「いいね。青春って感じがするね。」

 

「なんか実物ってすごくわちゃわちゃして、すごくエネルギッシュなのね。景ちゃんはこんな感じの高校で勉強しているんだ。」

 

芸能科とは全然違った反応に新鮮さを覚える千世子ちゃん。

 

「自分が人気があるって自覚していたけれども、こんな感じで純粋に好意として反応してくれると嬉しいわね。」

 

「向こうにとっては、文化祭の出し物に有名人が来て、一生の思い出になったんじゃないかな。そういった意味で純粋に僕達もうれしいね。」

 

「私の実家が喫茶店で、このカップとかは実家で前に入れ替えたお古を持ってきたんです。」

 

頼んだ紅茶とクッキーは紙コップなどではなくて、意外にもちゃんとした物が出て来て、執事さんやクラスメイトの子たちと話しながら、千世子ちゃんとお茶を楽しんだ。

 

最後にみんなで記念撮影をして、執事喫茶を出ると、お化け屋敷や占い部屋、輪投げ、スーパーボールすくいなんかを楽しんだ。

 

千世子ちゃんも、同年代の本当に普通の子達と交流してリアルな高校生活っていうのを体感してすごく楽しんでいた。

 

お昼を過ぎたら、たこ焼き屋さんに行ってお父さん仕込みの本格たこ焼きを楽しんだ後に、千世子ちゃんと二人で体育館に移動してクラスの出し物や演劇部の劇を楽しんだ。

手作り感がすごくイイ。 プロ野球好きでも高校野球が大好きみたいに、みんなで力を合わせて一生懸命やっている劇は、雰囲気が楽しくて長く見てられる。

 

千世子ちゃんも難しい事を考えないで、劇を楽しんでいるみたいだ。僕達は周りの観客一緒に、驚き、笑って、劇を鑑賞した。

 

「次は他校のスクールアイドルのライブみたいだね。」

 

「今日のメインの出し物ね。 他の高校の文化祭にまで呼ばれるとかすごいわね。」

 

「このライブを目的で来ている人達も沢山いるみたいだね。なんか大会とかあって、いろいろ盛り上がっているらしいね。」

 

なんて会話をしていてたら、たこ焼き屋さんの娘さんと生徒会の役員さん?みたいな人が来て、

 

「スクールアイドルの子達の到着が遅れちゃって、準備がまだ整っていないんです。アキラさん、千世子ちゃんごめんなさい。ダメ元でお願いしたいのですが、30分ぐらい場をつないでもらう事ってできないでしょうか?」

 

「ごめんなさい。私達は完全にプライベートで来ているから事務所を通さないでそういうのは・・・。」

 

千世子ちゃんは断ろうとしていた。でも、僕はやるべきだと思った。

 

「いいよ。そういう事であれば出演料もいらないから、是非やらせてもらえないかな?」

 

「アキラちゃんどうして?」

 

「せっかくいい文化祭なんだから水を差すのもかわいそうだよ。それに僕も楽しかったからお返しできる事があれば、やる価値はあると思うよ。」

 

そう言って、僕達は案内されて舞台裏に進んで行った。

 

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