星アキラは自由に生きたいっ   作:Magical forest

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星アキラは高校の文化祭に出演する

 

舞台裏に行くと、スクールアイドルの子達が舞台の道具や音楽などの準備に追われていた。

 

まだ着いたばかりみたいで、服は制服のままでまだアイドル衣装に着替えてもいない。これは確かにすぐに始められないな。後40分ぐらいの時間は必要だろう。

 

文化祭の各教室や部活の出し物はほぼ終わりの時間に近づいており、出し物を撤収してみんな体育館に集まってきている。この状況で40分間観客を待たせるのは大変だし、時間になってもライブが始まらないと騒がしくなって収拾が付かなくなるかもしれない。

 

僕に時間を繋いでほしいという状況を察した。

 

僕はスクールアイドルの子の1人に声をかけた。

 

「ちょっと、君、忙しい所すまないけれど、僕のお願いを聞いてもらえないかな?」

 

その子は僕を見ると、固まってしまった。

 

「あっ、星アキラだっ。うそっ!! 千世子ちゃんも居る!!」

 

忙しく動き回っていたみんなの視線が僕に集まる。周りの子達も僕達を見て固まる。

 

「作業を中断してごめん。そのまま作業を続けてください。」

 

「申し訳ないんだけど、1曲目に演奏する予定の曲を聞かせてくれないかな?」

 

「はいっ、喜んでっ・・・・。あっ」

 

その子はスマフォを取り出そうとすると、焦って床に落としてしまう。 幸いスマフォケースのおかげで被害は無いみたいだ。

 

「ごめんなさい。この曲です。」

 

すぐにスマフォを拾うと、1曲目の曲をスマフォで再生してくれた。

 

「アップテンポでいい曲だね。 すごくコールも入れやすそうだし、1曲目から盛り上がりそうだね。 ありがとう。 助かったよ。 それじゃ前座は任せてちょうだい。」

 

「えっ、それってどういう事ですか? あっ、」

 

どうせ僕達が舞台で話し始めれば状況がわかるんだから、スクールアイドルの子から離れて、文化祭の実行委員の子に、僕達がトークしている間に、吹奏楽部の発表で使っていたピアノを再び舞台に出すようにと、サプライズのために舞台の幕が開くまで僕と千世子ちゃんの名前をアナウンスで出さないようにお願いした。

 

そして、真面目そうな生徒会長の子にお願いする。

 

「ねぇ、そこの生徒会長の君」

 

「はい。」

 

「すまないんだけど、君のワイシャツと眼鏡を貸してもらえないかな」

 

「は?」

 

そして僕と千世子ちゃんは、マイクを持って舞台の上に立って準備が完了する。舞台の上から観客席を伺うと、スクールアイドルのライブが始まらなくて、ざわついているみたいだね。

 

そして、実行委員の子がアナウンスをする。

 

「スクールアイドルの舞台が遅れていますので、準備が整うまで臨時で超有名人による超特別トークショーを開催します。 それではお楽しみください!」

 

舞台の幕が開く。そして「何だ?何だ?」と舞台の上の僕達に注目が集まる。そして、舞台に立っているのが星アキラと百城千世子だってわかると、「キャー――」と言った悲鳴や「わーーーー!」と言った驚きの声で体育館が振動したと思えるほどの叫び声で溢れかえった。

 

そしてその叫び声やエネルギーは僕と千世子ちゃんに集中した。

 

まさしく若さと青春、生命溢れる叫び、さながら僕が前世で体験した武道館でのVTuberライブみたいで、少し懐かしくなった。

ちなみに、横の千世子ちゃんは少し目を白黒させていた。千世子ちゃんも、こういう場面で舞台に登場して騒がれる事は多いけれども、同年代の子達から、こんなにバイタリティーあふれる声を舞台の上で浴びる事はほどんど無かったので、少し驚いているようだった。

 

出オチでいきなり盛り上がった。さて、話し始めますか。 僕は少しヒートアップしすぎた会場を少し冷やすように優しく観客に話しかける。

 

「こんにちは。 星アキラです。 今日は文化祭の舞台を見に来てくれてありがとう。 スクールアイドルのライブが始まるまでの間、僕達のトークを聞いてくれるかな?」

 

そして僕は観客にマイクを向ける。

 

「わーーーーーー!!!!」っていう歓喜の声が体育館の中を埋め尽くしていく。 うん。 出だしは好調だね。すごく若さ溢れる反応だ。

 

「こんにちは。百城千世子です。 ライブが始まるまで、みんなよろしくね!」

 

「きゃーーーーー!!!!」今度は女の子達から歓喜の悲鳴が上がる。さすが千世子ちゃん。一瞬、盛り上がった観客の圧に押されかけたけれども、場慣れしていて全く心配無い。

 

正直に言って、この場に連れてきたのが千世子ちゃんで良かった。 景ちゃんを連れて来ていたら、固まって何も言わないでぴすぴす(ピースピース)ぐらいしかしていないだろう。・・・演技させれば最強なんだけど・・・。

 

「さて、どうして僕達がこの場に居るかと言うと・・・・。」

 

最初の話題は状況報告。たこ焼き屋さんの娘さんのために道具を運んで来た話をする。

 

「出来上がったたこ焼きはすごく美味しかったわね。」

 

「そうだね。僕達も運んで来た甲斐があったよ。」

 

「文化祭も面白かったわ!」

 

「執事喫茶や文化祭の出し物なんて、僕達は普段なかなかできないから、すごく貴重な体験だったね。」

 

「私、芸能人以外の同年代の子達とこんな学園生活を送った事が無かったから、すごく新鮮だったわ!」

 

「僕もだよ。僕もこんな素敵な学校で、ピュアピュアドキドキな学園生活を送ってみたかったよ。」

 

「アキラちゃんの場合は、どこに居ても珍獣キャワキャワモキモキな学園生活を送るだけから、どこの学校でも駄目だと思うわよ。」

 

「千世子ちゃん、酷いよ! 僕をアフリカにいるUMAみたいな扱いにしないでよ!!」

 

会場から一斉に笑いが起こる。観客もだいぶリラックスをして僕達の話を聞き入ってくれている。

 

「そういえば、そもそも僕達が伊豆にいる理由を宣伝しないとね。」

 

「そうね。今、伊豆の下田では私が主演の映画『デスアイランド』の撮影中なの。 集A社の人気コミックが原作なんだけど、デスアイランドで起こるサバイバルとデスゲーム。 そして私達スターズの俳優と外部オーディションの俳優合わせて24人の豪華共演。 映画が完成したら是非観に来て欲しいわ。」

 

僕はタモリさんの声真似で、みんなに聞く。

 

「こんな風に千世子ちゃんが頼んでいるんだけども、みんなーーーー。映画を観に来てくれるかな?」

 

「「「「「「「「「「いいとも!!!!」」」」」」」」」」

 

流石高校生。ノリが良い感じで一体感がある。

 

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「そういえば、アキラちゃん、さっき生徒会の会長さんにワイシャツと眼鏡を借りていたわよね。何に使うの?」

 

「文化祭、トラブル・・・。ライブ、代打。 このシチュエーションってすごく燃えない? 僕が大好きなとあるアニメや漫画のシーンに被るんだ。」

 

「ちょっと心当たりが無いわね。」

 

「じゃ、ちょっと変装するからお待ちを。」

 

そう言って、僕は上着を脱いで素早くワイシャツを着る。 ちなみに、中にTシャツを着ているのでご安心を。ズボンは最初から黒色だったから、学生服っぽい感じで良かった。

 

そして手鏡を出して櫛で髪型を七三分けの真面目な髪型にして、メガネを装着する。 この間1分10秒の早業だ。

 

「坂道のアポロンの西見 薫(にしみ かおる)君が完成!!」

 

「なるほど。西見薫君になり切って、ピアノを演奏するつもりなんだ。」

 

「せっかくだし、僕も文化祭で出し物をしたいんだよ。みんなーーーー!僕がピアノを弾いていいかな?」

 

「「「「「「「「「「いいとも!!!!」」」」」」」」」」

 

この高校の生徒達や文化祭の来場者はやっぱりノリが良かった。すごく喜んでもらえているみたいだった。

 

そんなわけで、文化祭でのトラブルの間にジャズピアノを弾いて場を繋いだ西見薫君を真似て、僕もピアノを弾き始める。

 

最初の曲は『My Favorite Things』 この曲は前に阿良也がゲストの放送時にも弾いたね。

 

元はThe Sound of Musicというミュージカルの中で主人公のマリアが子供達に歌った歌が元で、これをジョン・コルトレーンが大胆にアレンジして、今は押しも押されぬジャズのスタンダードになった名曲だね。日本では、JRの宣伝で京都に行く曲としても有名だね。

 

みんなが聞きやすいように、複雑でリズミカルなメロディーをなるべくクリアな和音で聞きやすく演奏する。

 

入りは、注意を引きつけて楽しい気分になるようにね。

 

曲を弾き終わると、沢山の拍手で盛り上がった。 そして拍手が弱くなる瞬間を見て次の曲に入る。

 

本当は坂道のアポロンのアニメで西見君はジャズのメドレーで続けていたけれども、僕は2曲目の曲調を変えるつもりだったから、曲を最後まで終わらせた。

 

そして2曲目は『Someday My Prince Will Come』和名『いつか王子様が』。 ディズニーの白雪姫で歌われた主題歌で、それを多くのジャズミュージシャンがカバーした元祖アニソンだね。

 

今回の僕が演奏するのは最強の不良中年ジャズピアニストである、ビル・エヴァンスがアレンジしたバージョンで、クリアな音質と流れるようなコード進行、そしてちょっと切ないタッチと優しい音色。

 

アニメではメドレーの途中で一瞬で終わっちゃったけど、僕はちゃんと弾いて観客のみんなにはこの曲でリラックスしてもらうよ。

 

そして、曲が終わると、さらに沢山の拍手。そして拍手が鳴り終わるとともに、最後の曲。

 

最初の1音節を引くだけで何の曲か判る。ジャズスタンダードの王道中の王道『Moanin』。坂道のアポロンでも劇中曲として使われているね。

 

この後に控えるスクールアイドルさん達の曲とはまた違った、ジャズのカッコ良さとハードボイルドな男らしさを出しながら演奏する。

 

そして演奏が佳境に入った時に、演奏中に舞台裏に行ってもらっていた千世子ちゃんから合図があった。

 

実は舞台の幕が開く前に千世子ちゃんにお願いしていたことがあった。 それはもしも演奏中に準備が間に合うのであれば、僕が前奏をするから、それに合わせてスクールアイドル達のライブを始めて欲しいというものだった。

 

『Moanin』を引き終わると同時に、そのまま転調してジャズのリズムで前奏としてスクールアイドルのライブ1曲目のフレーズを弾く。しばらくすると1曲目の音楽が流れ始めて、僕もそれに合わせてピアノの伴奏を行って、スクールアイドルが登場する。

 

「みんなーーー! ライブが遅れちゃってごめんなさい!! そしてアキラ君、千世子ちゃん、ありがとう!!」

 

『Moanin』の演奏から前奏を挟んでシームレスにスクールアイドルのライブが始まる。完璧に決まったね。

 

会場は一挙にヒートアップして、一気にライブの雰囲気一色に塗りつぶされて、地鳴りのように盛り上がる。

 

ここからスクールアイドルの1曲目は僕のピアノとのコラボになるね。案の定、ライブは1曲目からものすごく盛り上がる。

 

そして、スクールアイドルの1曲目の伴奏が終わると、万雷の拍手とともに、僕は礼をして舞台裏に引っ込んだ。

 

「アキラちゃん、スクールアイドルの子に1曲目を聞かせてもらった時にこれを狙っていたの? 事前の打ち合わせ無しにこんな事ができるなんて、正直凄すぎて身震いがしたんだけど・・・。」

 

「スクールアイドルの子に1曲目を聞いた時は、スクールアイドルの曲を潰さない流れを考えていたんだけど、『Moanin』でちょっと盛り上げて、そのままライブに繋げると、楽しそうだったからね。 駄目だったら演奏を打ち切ってしずしずと引っ込むつもりだったけど、成功して良かったよ。」

 

「なるほど、スクールアイドルのライブを潰さないで、お互いを高めあうか・・・。」

 

千世子ちゃんは、何か考え込んでしまった。

 

そして、スクールアイドルのライブを舞台袖から見届けると、文化祭の実行委員や生徒会、たこ焼き屋の娘さんやそのクラスメイト達にお礼を言われて、その後に帰ることにした。

 

帰りは正門から出る事になって、ほとんど全員の生徒さん達が僕達を見送って手を振ってくれた。

 

千世子ちゃんと僕も、手を振ってそれに答える。今日の休日はすごく充実した一日となった。

 

帰り道、夕日が照らす海岸線を軽トラで走りながら、千世子ちゃんは無言でずっと考え込んでいた。

 

千世子ちゃんはこうなると、外から話しかけられずに、ずっと思考していたいから、僕も特に話を振る事無くそのまま下田のホテルへと車を走らせた。

 

下田のホテルに着いて千世子ちゃんを降ろそうとしたら、千世子ちゃんがお礼を言って来た。

 

「アキラちゃん、今日はありがとう。すごく面白かったし、演技の解決策も見つかったわ。」

 

「え゛っ、演技の解決策とか冗談で、気分転換以外に全く何も考えてなかったんだけど。」

 

「でも、煮詰まっていた私を誘って文化祭に連れ出してくれたし、結果的にリフレッシュして解決策も見つかったわ。ありがとうアキラちゃん。」

 

そう言って、千世子ちゃんは車を降りてホテルの部屋まで行ってしまった。

 

千世子ちゃんの言う演技の解決策に全く心当たりが無いけど、なんか解決策が見つかったみたいで良かった。

 

僕は車を降りる時の千世子ちゃんの嬉しそうな顔を思い出しながら、たこ焼き屋さんに車を返却しに行った。

 

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