星アキラは自由に生きたいっ 作:Magical forest
僕達の出演する銀河鉄道の夜の発表があってからしばらくして、顔合わせの舞台稽古の日になった。
僕は車に景ちゃんと千世子ちゃんを乗せて、劇団天球の練習場に向かっている。
「キアラさん、今日は思いっきり気合が入っているんですね。」
「そうですわ。あの巌裕次郎がせっかくわたくしをご指名してくれたのですから、気合を入れて他の劇団メンバーをビビらせる必要がありますわ。」
「ビビらせると言うか、ドン引きさせるというか、脳が破壊されると言うか、とにかくすごいわね。しかもTPOを弁えた服装をしているし、正直に言って私よりも美人で目立つと思うわよ。」
今日の
足は稽古で動きやすいようにパンプスではなくて、スニーカーを履いている。
ぱっと見でそんなにオシャレな恰好じゃないんだけど、街を歩いていると間違いなくみんなの目を引きまくる。それぐらいヤバイほどの美人オーラが出ていた。
なによりも僕の中性的でスレンダー体形を生かして、黒髪女子で活動的な美人お姉さんという恐ろしい属性を全力で磨いた格好と容姿に仕上がっている。普段の放送時にもここまで気合を入れた格好はして来なかった。
お化粧が終わって全身鏡で
美人の中にほんのわずかに匂う男っぽさ。 男性は千世子ちゃんのように、可愛い女の子を守りたいという本能の他に、強くて健康的な女性に自分の子供を産んで欲しいという欲望も持っている。僕の今の恰好は、そんな男たちが求める欲望の結晶であり、男で無ければ理解できない、男にとっての理想の女性像でもあった。
千世子ちゃんとキアラが街を歩いている所を、男性にどっちがいい?と聞かれると、普段は千世子ちゃん7でキアラ3ぐらいの比率だと思うけれども、今二人で街を歩くと千世子ちゃんとキアラが半々か、キアラの方が勝っている可能性が高かった。
景ちゃん? 今の景ちゃんは、Tシャツの前面にデカデカと『アサガヤ』という名前が入ったクソダサTシャツと、ジャージのハーフパンツという、ウルトラクソダサファッションを極めていた。景ちゃんの顔がすごくいいので、そんなクソダサファッションでも目立たないし、舞台稽古であれば、動きやすい景ちゃんの恰好が正解だ。
でも、僕と千世子ちゃんと、ズボラ女子全開ファッションの景ちゃんが三人で一緒に歩いていると、景ちゃんを選ぶ人は少ないのではないかなぁ・・・・。
景ちゃんはお金が無かった子供の頃のトラウマで、ファッションとか化粧道具にあまりお金をかけないんだよね。
運動神経はいいし、健康的な美しさも、もちろん持ち合わせているんだけど、役者ならそのポテンシャルを万全に発揮できる恰好をするべきだよね。貧すれば鈍するじゃないけれども、景ちゃんも自分の立場や状況に合ったオシャレを教育する必要があるかもね。ただ、今回の舞台稽古は本来は景ちゃんの恰好が正解だけどね。
とはいえ、本当にオシャレした景ちゃんが渋谷の街とか歩いていると、大パニックになるだろうから、これはこれで本人にとっては人混みに紛れる迷彩みたいな役割で良いのかもしれない。 ただ、『星アキラと密会!秘密デート』とかの飛ばし記事が出た時に、写真を撮られた景ちゃんの服装がこれだったら、星アキラ!もっといい服を景ちゃんに着せろよ!って感じの別の批判が来そうで怖いんだよね。
「今日のキアラさん、本当にキラキラしていて眩しいです。キアラさんを見ているとぼーっ見とれて胸が高まります。 今回の舞台はそんなに気合を入れて挑む感じなんですか?」
「もちろんよ。今回の劇は巌裕次郎の人生の総決算の劇なんだから、ここで巌のじっちゃんの性癖を破壊して度肝を抜いてあげるんだから。」
「ある意味、劇団天球のホームに行く感じで、私達はアウェイなんだからハッタリは必要なのは判るけれども、今日のキアラちゃんはやりすぎよね。私も舞台稽古のTPOがわかっていない、顔だけの女優って思われるのが怖くて、おしゃれは抑え気味で動きやすい格好で来たのに、キアラちゃんはそのTPOの中で最大の好感度を狙って来たわね。まさに男子に優しい理想の女子って感じ。 今のキアラちゃんに、ホテルに行かない?って声をかけられたら、男も女もみんなホイホイと付いて行っちゃうわよね。」
「おーほっほっほ。その通りですわ。 わたくしの美貌と演技力で劇団天球の方々の性癖を軒並み破壊してさしあげますわ!!」
「・・・キアラちゃんはこれさえ無ければ、すごくいい子なんだけど・・・・。」
こんな感じで、僕達は劇団天球の練習場に到着した。