星アキラは自由に生きたいっ   作:Magical forest

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夜凪景は感情表現の修業をする1

 

---------- 夜凪景視点 ----------

 

私が感情表現にチャレンジして1週間。 大した成果も無く撃沈して公園のベンチに倒れていた。

 

「景ちゃん、もう一時間だよ。こんな所で寝ていたら風邪をひくよ。」

 

様子を見に来てくれたアキラさんが言った。

 

「寝てないですっ。考えているんですっ。どうやれば感情表現の課題をクリアできるのか。」

 

他の人に伝えやすい感情表現が上手く行かない私は思わず、アキラさんにトゲのある言い方で突っかかってしまう。

この辺は、我ながらすごく子供っぽいとは思うけれど、子供の頃から付き合いのあるアキラさんにはどうしてもこんな感じで素の自分を見せてしまう。

 

「今日で7日、後3日でこの課題をクリアしないと、私は降板になっちゃうんですっ。」

 

「まぁ、現実問題、これだけ大々的に宣伝していて、こんな理由で景ちゃんを降板させる事なんて商業面から絶対にできないけどね。」

 

「そう言う事じゃ無いんですっ。」

 

私は自分が倒れているベンチをバンって台パンしながらアキラさんに言った。

 

「そんなに難しく考える事じゃないと思うけどね。」

 

「むぅ~。アキラさんにはわかりませんよ。」

 

私はフグのように頬を膨らませながらアキラさんに言った。

 

「いや、たぶん、景ちゃんならすぐにでも解決できるけどね。 でも人間悩む時間も必要だよね。」

 

そう言って、アキラさんはふらふらとまたどこかに行ってしまった。

 

私にアドバイスもせずにどっか行っちゃうなんて、本当に何しに来たんだろう! 私は自分が感情表現ができない焦りから、心の中で勝手にアキラさんに怒りをぶつけた。

 

その後に、私はまたしばらく木陰で感情表現の練習を始めた。

 

「ダメだ。 全然しっくりこない。」

 

もうちょっとで何かを掴めそうな気がするんだけど、全然つかめないこの感じ。私は1週間ほど、そんな悶々とした日々を過ごしていた。

 

「景ちゃん、そんな事をしても悶々とするだけで、何も解決しないよ。ねぇ気分転換に僕のコンサートを聞きに来てくれないかな?」

 

振り向くと、髪をオールバックにして、伊達メガネをかけたアキラさんが立っていた。手にはヴァイオリンを持っている。

 

服装はジーンズと裾を出したワイシャツに適当に結んだネクタイというラフな格好。

 

今のアキラさんは5歳ぐらい年上の二十台中盤のダンディーな男性に見えた。アキラさんは大人の男性を演じていて、完全にちょっとアキラさんに似ているだけの別人だった。このアキラさんを見て星アキラだって見破れる人は千世子ちゃんとか阿良也さんとか環さんみたいな人だけだろう。

 

私は伊達眼鏡とマスクを着けて、アキラさんの後について行く事にした。なんか楽しそうな事がありそうな予感がして胸が高まった。

 

私達は井之頭公園の人通りの多い通路に出ると、井之頭公園の池の周りをぶらぶらと歩いた。今日は土曜日だから結構人通りがある。 しばらくしていると、アキラさんに声をかける人が居た。

 

「あっ、居た居た! 有馬さんだ! トイッターを見て急いで来ました。今日はどこで演奏をするんですか?」

 

私と同じ年齢ぐらいの高校生の女の子だった。

 

「適当にぶらぶらとして、いい場所を探している最中だよ。」

 

そう言うと、その子はアキラさんの後ろに付いて来た。

 

「アキラさん、あの子は?」

 

「しーーっ。今の僕は有馬公生って言うんだ。ちゃんと公生って呼んでね。」

 

そう言うと、アキラさんは軽くウィンクした。私は黙るとコクコクと首を縦に振って頷いた。

ちなみに、後々、私はこの有馬公生って名前は『四月は君の嘘』って言う漫画の主人公の名前だと言うことを知った。この子達も、この名前が偽名だってみんな知っていたみたいだ。

 

「トイッターの告知だと、演奏するのは11時ごろからですよね。キヨっちとメグっちも来るそうですよ。 渡辺さんや山田君も今向かっているみたいです。」

 

その子はスマフォでトイッターを開きながらアキラさんに言う。何か他の人とも連絡を取り合っているみたいだ。

 

「今日はコンサートもやっていないみたいだし、野外ステージの近くでやろうかな。あそこなら多少音を出しても邪魔にならないし。」

 

「そちらの子は有馬さんのファンの子ですか?」

 

その子が私を指して言った。

 

「いや、いとこで、暇だって言うからついでに連れてきたんだ。」

 

「へー。いとこさんが来るとか珍しいですね。有馬さんの演奏がいつでも聞けるなんて羨ましいですね。」

 

「君のいとこがそうであるように、いとこ同士なんて、遠慮が無くてそんな感じじゃないよ。」

 

「なるほど。そう言う感じなんですね。」

 

そう言うと、アキラさんは井之頭公園の野外ステージ近くの道に陣取って、ヴァイオリンを取り出すと、ヴァイオリンケースを自分の前に開いて置いてから調弦を始める。

 

アキラさんが音を出し始めると沢山の人が寄ってきた。

 

その中にはスマフォを持ったお母さんとルイとレイも居た・・・。

 

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