星アキラは自由に生きたいっ 作:Magical forest
「渚沙ママさんこんにちは。ルイちゃんもレイちゃんもこんにちは。」
「ミトンちゃん、こんにちは。」
「「ミトンお姉ちゃん、こんにちはー!」」
「渚沙ママさんも早いですね。あっ、メグっち、キヨっち、こっちこっちー!」
ルイとレイも見に来た人に挨拶をする。ハンドルネームみたいだけど、みんな顔見知りみたいだ。
お母さんは私に気が付いたみたいだけど、特にリアクションを示さなかった。ルイとレイもだ。
・・・実の娘や姉を相手にその対応はちょっと傷ついた。とは言っても、アキラさんが正体を隠している事はわかるので、私もとりあえずお互いに知らない人を装った。
私はアキラさんの後ろに立っているので、お母さんやルイやレイにも声をかけられる事は無かった。
そうこうしているうちに、あっと言う間に人が集まって、「みんな忙しい中来てくれてありがとう。」って普段のアキラさんの声とは違う、別の落ち着いた声で言うと、アキラさんは演奏を始めた。
「それじゃ、最初は創聖のアクエリオンから行くよ。」
そういうと、アキラさんはヴァイオリンで曲を演奏し始めた。クラシックじゃなくてアニメかなんかの曲なんだろう。軽快だけど、メロディーのはっきりした綺麗なヴァイオリンの音が公園に響き渡る。
井之頭公園の中だから、周りの車の音はするし、通行人の声や音も入って来る。 でもアキラさんが演奏を始めると、ここが吉祥寺の中にポツンと存在する公園とは思えないぐらい、公園の雰囲気がコンサートホールみたいに変わって、アキラさんのヴァイオリンの音しか耳に入らなくなった。観客の人はアキラさんの演奏に聞き入ってうっとりとしている。 通行人も足を止めてアキラさんの演奏を静かに聞いていた。
音楽にあまり詳しくない私でもわかる。 これはすごい演奏だ。 自分がただ単に公園の中に居るのではなくて、何か非日常の体験をしている気分になる。
そう。この感じは、阿良也さんの舞台を観ている感じに似ている。空間には阿良也さんしか居なくて、その息吹を直に感じるみたいなそんな感じ。
今、アキラさんはヴァイオリンを演奏している訳だけど、こんな大都会の公園でそんな空間を作り出せる事に驚いた。
演奏が終わると、観客のみんなは満面の笑みと、大げさなぐらいの拍手でアキラさんを称えた。
みんなアキラさんに素晴らしい演奏の感想を伝えようと、沢山の拍手とおおげさな身振り手振りで、アキラさんへの賞賛と満足感を伝えようとしている。
それぞれの顔には満面の笑みとこの瞬間に生ですばらしい演奏を聞けた幸せな表情が宿っていた。
アキラさんの演奏を聞いて幸せになって、そして幸せですばらしい演奏だったことをお礼としてアキラさんに伝えたいって、みんなそれぞれ一生懸命に体で表現している。
その時私は雷が落ちたような衝撃を受けた。
私は阿良也さんの芝居は大げさだけどリアルで、その大げさなしぐさが表現の技術だと思って、今までその技術を習得しようとしていた。
でもそうじゃないんだ。 人は本当に感動した時や感情が高ぶった時にはそれを伝えるために、大げさに相手にわかりやすい仕草や行動をするんだ。 だから阿良也さんの芝居は大げさ身振りなんかじゃなくて、人が自分の心を強く誰かに伝えたい時の衝動や行動を切り取って、それを動作として表現しているんだ。 これは人間が誰かに感情を伝えるための自然な行動で、それを阿良也さんが洗練しているだけ。 だから阿良也さんの芝居はリアルで自然なんだ!
私がこの1週間、ずっと悩んでいた事が全部繋がった気がした。
拍手が鳴りやむと、アキラさんは「それじゃ、いつもみたいにリクエストを受け付けます」って言った。
そうすると、ちょっと内気そうな中学生ぐらいの女の子が前に出て来て、「千本桜」をお願いできないでしょうかって言ってきた。
「千本桜? いいよ」
そうアキラさんが言うと、その女の子に軽く微笑みながら千本桜を演奏し始めた。
千本桜はボーカロイドの曲で、学校の友達に聞かせてもらってから私も好きな曲だった。
アキラさんはYoutube放送などで演奏するときはクラシックとか映画の曲とかをメインで演奏していたから、こんな流行りの曲を弾いてくれるとは思わなかった。
私はアキラさんの演奏に聞き入った。千本桜をリクエストした女の子も目を輝かせながらアキラさんの演奏に聴き入っている。
自分の好きな曲に合わせて、自然と体がリズムを刻んで動く。 感動する! 楽しい!
私は自分の心が思うままに衝動的に体を動かした。そして演奏が終わると私も自分の心の衝動に任せて、みんなと一緒に体いっぱいでその感動を表現してみた。
感情の表現ってこういう事なんだ! 私は自分の大げさな感情表現を違和感なく受け入れることができた。
そんな私を驚いたように観ていた雪さんを見つけた。私と一緒に来ていたんだけど、私が居なくなったので心配になって探しに来てくれたんだろう。
私は雪さんにアイコンタクトを送ると、雪さんもアキラさんの演奏を楽しむことにしたようだ。雪さんも演奏に聴き入り始めた。
その後も、みんなのリクエストを受けて演奏が続き、最後にユーモレスクってクラシックの曲を演奏してアキラさんの路上ライブは幕を閉じた。
夢のような演奏はあっと言う間に終わって、みんな口々に
みんながバラけた所で私はお母さんに声をかけた。
「お母さん、何でこんな所に居るの?」
「何でって、アキラ君の演奏を生で聞けるチャンスなんだから、都合が付けば来るに決まっているじゃない。」
「お母さんはアキラさんが路上ライブしているって知っていたの?」
「そうよ。1年ぐらい前からやっていたんだけど、段々とファンが増えて来て、最近はトイッターで場所と時間を告知してみんな聞きに来る感じね。私もトイッターフォローしている人が初期にアキラ君が演奏をしている動画を上げていて、それでアキラ君だってわかったから、そこから都合が会えば聞き行く事にしているわ。」
「お母さんってなにげにネットワークが豊富で耳がいいよね。」
「アキラ君の音楽を普段から良く聞いているだけよ。」
「アキラさん、何でこんなライブなんてやっているの? しかもお金も取らないで。 こんな事をしなくてもいくらでも大きな施設でコンサートとかできると思うんだけど・・・。」
「決まっているじゃない。 楽しいからよ。 お金をもらって沢山お客さんを呼んで聴かせるだけが価値のある事じゃないの。 人生の価値や心の充足はお金じゃ買えないのよ。 景もそのうちわかるようになるわ。」
「前から知っていたなら、私にも教えて欲しかった。そうしたら私も聞きに行けたのに。 こんな楽しいコンサートをお母さん達だけで楽しんでいたなんてずるい!!」
「最近の景はすごく忙しいし、リアルの路上コンサートだから景がドジをしてバレてアキラ君に迷惑をかけそうだったしね。」
「アキラ君の路上コンサート、本当に良かったわ。」
雪さんも感動の余韻に浸っているようだ。
そんな話をしながら、その後、私と雪さんはお母さんと一緒に食事に行った。 ルイとレイがお子様ランチを食べたいと言うので、レストランに行って、私達もメニューにあった大人のお子様ランチを食べて満足した。
アキラさんの路上コンサートも聞けて、感情表現のヒントも掴めて、お母さん達と一緒に食事も出来て、今日は本当にいい日だった。
その後に準備と練習をして、翌日から私はアキラさんを見習って路上で人形劇をすることで、表現の技術を磨くようになった。
幸せ、感謝、悲しみ、痛み、苦しみ。いろんな感情を人形劇を通して、一杯実践した。
こちらの景ちゃんは、原作と違って強烈な負のトラウマが無いため、怒りや悲しみと言った部分の感情表現は原作に劣る可能性が高いです。
家族を一人で背負うような体験も無いため、原作よりもやや子供っぽいですが、その反面、幸せな家族が居る事による、喜びや幸せなどの感情表現は原作よりも豊富で、アリサママから深く潜っても安定して戻って来れるような、精神的な指導とメソッド演技の英才教育、幼い頃からの子役の経験も合わせて、原作よりも深く役に入り込む事が可能です。 ですので、バランスの良い精神と合わせて、マイナスを伴わないで夜凪景の才能を純粋に発揮できます。
これを劣化と考えるのか、新しい可能性と考えるかは人によって変わると思います。特にこの辺は羅刹女あたりで大きな違いが出てくるかもしれません。
とは言っても、二次小説だし、この小説ぐらいは幼少期の景ちゃんや夜凪ママが救われる話として存在してもいいかなと、個人的には考えています。