星アキラは自由に生きたいっ 作:Magical forest
謝罪会見を終えた僕は、しばらく仕事は無いからゆっくりしようとか思っていた。
謝罪会見の夜には、僕は自分の謝罪会見を素材にした海馬社長のMAD動画を作成して、ニフニフ動画にアップしていた。このように、MAD動画をアップして自分の知名度を上げて売名を図るという新時代のメディア戦略もばっちりで、僕は自分自身のメディア戦略に空恐ろしい物を感じていた。これでは現代の諸葛孔明と言われても誰も否定できないだろう。
僕が動画をアップすると「仕事が早い」、「何これwww」、「頭がおかしいw」などの僕を褒めそやすコメントが付いて、あっという間に日間1位に躍り出た。やっぱり僕はすごいんだ!
動画日間1位になった喜びで僕はベッドの上で舞い踊っていたが、日間1位だったのは一瞬で、すぐにハイパーポーションで謝罪した馬先輩に一瞬で抜かれてしまった。
さすがニフニフ四天王の一角、僕みたいな雑魚が粋がって本当にすいませんでした。僕は枕を涙で濡らしながら寝た。
さて、明日はどんなメディア戦略をしようかな? 僕のアンチスレにF5攻撃でも仕掛けるかな?
ところがそんなふうに、のほほんと出来たのは、謝罪会見の当日だけで翌日から僕にバンバンと仕事が入り始めた。
情報バラエティー番組への出演、雑誌の取材、インタビュー、対談、まさかのCM撮影など、突然分刻みのスケジュールで目が回る忙しさを味わう事になった。
まるでブレイク中のアイドルのような仕事だった。逆に本業だったはずの子役業務は全く入って来なかった。
やべぇ、もしかして僕を役者じゃなくてアイドルと勘違いしている!?
アリサママに「ちょっと仕事忙しすぎるんですけど~」と抗議をしたけれども
アリサママは「あなたの自業自得じゃない」と言って微笑みながら取り合ってくれなかった。
なんてことだ。可愛いアキラちゃんへの児童虐待だぞ!!児童相談所とかに僕が相談したらアリサママはどうするつもりなんだ!?
そういえば、最近アリサママの表情が少し豊かになった気がする。
「どうせ1ヶ月ぐらいしたらみんな飽きるわ」
アリサママの言葉の通り、9月末ぐらいには僕の仕事は落ち着きを取り戻していた。
それでも僕への仕事はひっきりなしに来て、自殺未遂の前よりもはるかに僕への仕事は多かった。
反面、ウェルカムで準備していた僕への子役の仕事は全く無かった。もしかして、僕に役者の才能が無い事をマジで世間に見切られちゃっていますか!?
そんな訳でようやく自由時間ができるようになった10月上旬のある日。僕はついに夜凪家に遊びに行った。
平日に景ちゃんが学校から帰ってくる時間あたりに尋ねたんだけど、出迎えてくれた景ちゃんは小学3年生とは思えないぐらいに、すごくやつれて、目のクマが酷くなっており、元気が無かった。
学校でいじめられているのかな?と思って聞いてみると、そうでは無いようだだった。
景ちゃんがこんなにやつれている原因はすぐに分かった。1才の双子のルイちゃんとレイちゃんの面倒をずっと見ているからだ。
大人1人でも厳しい子供を2人同時に。しかも小学3年生の子供が1人で面倒を見ているなんて正気の沙汰ではない。
あの夜凪ママがこんな状態を許すわけが無い。夜凪ママの事を聞くと、景ちゃんが帰ってくると、近所の24時間のスーパーで夜明けまで働いているらしい、そして夜明けに戻ってくると、景ちゃんが学校に行って、ルイちゃんとレイちゃんの面倒を見ていると言う。
「どうしてそんな事になっているの?お父さんは?」
「あんな男の事を聞かないで!!」景ちゃんは激昂すると、ワンワンと泣き始めた。双子もそれにつられて泣き始めたので景ちゃんは涙を流しながら双子の世話をしていた。
これはどうも夜凪家はかなりまずい状態になっているらしい。
景ちゃんの今日の夕食を見ると、昨晩に夜凪ママがもらってきた売れ残った近所のスーパーの、冷たいままのお弁当と言う有様だったので、僕は近くの商店街でバラの豚肉と野菜などを仕入れて、豚肉のすき焼き(豚すき)を作ってあげた。
景ちゃんが「これ豚肉でしょ、こんなのすき焼きじゃない!!」とか言ってくれればまだ救いがあった。でも豚すきを食べた景ちゃんは涙を流しながら美味しい、美味しいって食べてくれた。涙を流してまで美味しいと言ってもらえるのはうれしいけれども、正直な所、僕はこのシチュエーションにはなって欲しくなかった。
せめていろんな事をお話しながら楽しく料理を食べたかった。これは早急に手を打たなければいけなさそうだ。
ちなみに、僕の稼ぎならA5牛のすき焼きでも問題無かった。豚すきにした理由はこのことが夜凪ママに知られて、材料費を出しますとか言われた場合に、非常に問題になるからだった。ただでさえ困窮している家にA5牛のすき焼き代など払わせる訳にはいかない。その点、豚すきであれば「安い豚肉で作りましたので材料費はいいですよ」で角が立たない形で断れる。
僕は夜凪ママには会いたいので話す時間を作ってほしい旨の書置きと、景ちゃんにテレフォンカードと僕への電話番号を渡して、緊急時や夜凪ママと会う時間が決まったら連絡して欲しいと言って、夜凪家を出た。
帰り道で僕はアリサママに電話した。