星アキラは自由に生きたいっ   作:Magical forest

203 / 387
絵麻ママはみんなで銀河鉄道を観に行く2

 

有楽町駅で待ち合わせをした私たちは、そのまま帝国国際劇場へと足を運んだ。

 

「おいちゃん、よく休み取れたね。今忙しいんでしょ?」

 

「えまっち様、何をおっしゃるやら。そりゃ、ケイティを始めF4の方々が出演するなら、何をおいても観に来させていただきますよ。 ましてやSS席の超プラチナチケット。 ムサニ(武蔵野アニメーション)でも観に行くって言ったら、それはもう垂涎の的でしたよ。」

 

彼女はもみ手をしてアキラ君達に全力で媚びながら言った。

 

「もう、監督なんだからしっかりしてよ!」

 

「はいはい。でもよく5枚もチケットが手に入ったわね。 しかもSS席なんて!!」

 

「アキラ君達に感謝してね。 普通は絶対にこんな席で観られないんだから。」

 

「もちろんですよ。アキラ君様にはいつも助けてもらっております。 足を向けて寝られませんよ。」

 

彼女がこう言うのには理由があった。 実は、現在私たち5人は再び集まってムサニでアニメを作っている。とは言っても、今の私は本業はイラストレーター兼VTuber兼漫画家で、ムサニではキャラデザをしているだけなんだけど・・・。

 

きっかけは私がアキラ君の手引きで、VTuberのメディアミックスとして、週刊誌に数ページの四コマ漫画を連載し始めた事だった。

 

ストーリーは見習い悪魔のケイティが悪魔とは何かを知るべく世界中を旅する物語で、仲間に珍獣アキラン、超絶美少女天使(自称)のチヨコエル、カメレオンアラヤ、アホお嬢様コンビのキアラとラーヤが旅先で絡んでいくような物語だった。

 

私はイラストを描けても、漫画なんて無理だったから、この仕事を断ろうとしたんだけど、アキラ君は「心配ご無用」とか言って、りーちゃん(今井みどり)を連れてきた。

 

さらに、りーちゃんの下に監修の宗教学者の人と、パートタイムでケイティが旅する現地に詳しい人、そして私の漫画のアシスタントさん(女性)×2が加わり、あっという間に週刊連載のチームが出来上がってしまった。

 

原作がりーちゃん、作画が私という体制で、過酷と言われる漫画の週刊連載が始まった・・・・のだけれども、私はりーちゃんの上げてきた四コマに線画とペンを入れるだけで、背景やトーン、印刷用の調整みたいな部分は全部アシスタントさんがやってくれた。

 

結果、私は月に3日ぐらい働くだけのお気楽モードで週刊連載の仕事を終えていた。

これでイラストレーターの他に漫画家ですとか言うのがおこがましすぎる。

 

「先生、絵を描くのがむちゃくちゃ早いですね。」ってアシスタントさんからキラキラした目で言われるんだけど、ごめん。 世の中には、私よりももっと繊細できれいな絵を素早く仕上げるアニメーターさんが沢山居るのよ・・・。

 

そんな感じで、本当に週刊誌の漫画家なのか?と疑問に思う生活を1年ほど続けていたら、やたらと人気が上がってきて、ぼちぼちと週刊誌の表紙やカラーの扉絵を飾るようになってきた。

 

これはどちらかというと、私よりもVTuber活動を頑張っている景ちゃん達の影響の方が大きいと思う。私たちの漫画はそんなみんなに支えられて、人気がどんどん上がっていった。

 

私の絵と国民的なキャラクターが一緒に表紙になった時には本当にびっくりしたよ。

 

その頃になるとアニメ化の話がちらほらと出始めていた。

 

四コマ漫画でアニメ?って思ったけど、実際に特に日常系で四コマ漫画で成功しているアニメっていうのも多いし、サザエさんも元は四コマ漫画だ。 そして、この四コマ漫画もある意味日常系でもあった。

 

アニメ化の話はわりとすんなりと進んだ。 もともとこの漫画は、スターズの企画持ち込みでメディアミックスした経緯があったから、スターズ主導でアニメ化の企画が進められた。

 

ここでさらにアキラ君の次の一手が繰り出される。 アキラ君は私との個人的なつながりを理由に、おいちゃん(宮森あおい)を名指ししてムサニにアニメの発注を行った。

 

当時のムサニは、いろんなアニメの下請けなどをして、なんとか存続できていたけど、経営は青息吐息だった。 そこに突如来た大型案件に沸き立った。 

 

アキラ君はアニメ化にあたって、まずはりーちゃんのシナリオチームの人員の大幅拡充を行う。 宗教などのセンシティブな部分を監修する宗教学者さん達の他に、ケイティが旅する国の情報やアイデアを集めるチーム、ケイティが旅する国の情報を提供する現地の人たち、宗教以外の他国の文化視点での問題点や改修点を指摘する文化学者さんや言語学者さん、脚本の体裁と配色をするサブライターさん、それらの人員をマネージメントするサブリーダーさん。 ちなみに、サブリーダーさんはスターズのマネージャ陣から研修目的をかねて派遣されていた。

 

こうしてりーちゃんの下に常時10人以上の人が働く事となった。当のりーちゃんは、全力でシナリオだけに集中できる体制が整って、理想の仕事環境の前に戸惑いまくっていた。 ただ、ここまでチームが整えられると、りーちゃんが脚本でミスをする事は無くなり、人物目線のシナリオを書く、彼女の持ち味が大きく引き出されて行った。

 

同時にアキラ君はアニメの制作現場に非常に高いクオリティを要求した。第一回目の制作会議はアキラ君も出席したんだけど、制作日数はともかく、そのクオリティでは無理だという意見の大合唱だった。

 

「でも値段以上のクオリティに挑戦するのがムサニなんじゃないの?」ってアキラ君が言うと、「私たちもベストは尽くしますが、値段以上のクオリティを要求されても対応できません。」渡辺社長がきっぱりと言った。

 

「じゃあこのクオリティを実現する値段っていくら?」ってアキラ君が聞くと、渡辺社長は業界標準の制作費の2倍を提示した。 普通はお断り価格だ。 でもこのクオリティなら、まぁ確かにこのぐらいにはなるだろうって、私も納得して見守っていると、アキラ君は「なるほど、安いね。 アニメーターさんの給料が心配になるよ。 ならこの値段でやってくれる?」って言って、その値段のさらに倍。 つまり業界標準の4倍の値段を提示した。

 

なんとアキラ君は52話分のアニメの制作費を13話にぶち込んだのだ。

 

「この値段でやってくれるなら、ここですぐに契約書にサインするけど、これで納得してもらえないなら、別の所に話を持って行くけどどうする?」

 

「はい・・・。これでやらせてください。」

 

ムサニの面々はうなだれて大人しくなった。アニメに命をかけるムサニの人たちでも、欲しいものは欲しいのだ。 別にアキラ君は彼らのアニメにケチを付けた訳でも無かった。

 

私は人生で初めて札束で頬をたたく瞬間をリアルに見てしまった。 札束で頬をたたくって拝金主義で否定的なイメージがあるけれども、使いどころを間違えなければ、本当に効果的なんだなと他人事ながらに思ってしまった。 でもアキラ君は百戦錬磨の役者さんなんだから、そういう心理的な効果もいろいろ計算しているとは思うけど。 そこからはアキラ君のペースで話が進んだ。

 

とんでもない制作費を出したアキラ君だけれども、制作の概要が決まったところで、おいちゃんに一任して、制作について特に口出しするような事は無かった。

 

シナリオについてもりーちゃんに紐が付いているから、変なシナリオのアニメが作られることも無いし、余計な口出しもしないから現場から反感を買うこともない。

 

制作の進捗や品質確認については、スターズから派遣されたマネージャさんが毎回確認していた。この人も制作費の使い道や、日程のかけ方などに特に問題が無ければ口出しをしてくる事は無かった。

 

こういう組織作りはアキラ君はスターズを作ったアリサさんの血を引いて本当に上手だと思う。アキラ君は最初の交渉をしただけで、人を集めて、あとは監視を含めて、できる人を雇って丸投げした。 専門の人を適材適所に投入するアキラ君の手法がわかると、ムサニの動揺も収まってアニメ制作に邁進するようになった。

 

そしてCGでみーちゃん(藤堂美紗)が加わり、『走れケイティ』の制作は始まる。

 

声優のキャストについてはスターズ側に一任されていたんだけど、新人多めでベテランが締めるというわりと安定したラインナップだった。 

 

事務所のタレントのゴリ押しとかも無かった。 唯一の例外は、アキラ君とずかちゃん(坂木しずか)とのコラボ配信の時に、マリオカートで9連敗を喫したアキラ君は、10連敗目を記録しそうな瞬間に、「だっだめだ! 負けてまう。 もし、ゴールの手前で待ってくれたら、ケイティの居候する家の娘さんの役をあげるから待って!」「本当ですか!?」って感じで10連敗を免れ、視聴者からアニメの配役を餌に、ずかちゃんから勝利を買った卑劣な男として配信は大いに盛り上がった。

 

翌日のニュースサイトやトイッターには「星アキラ、卑劣な手段でマリオカート10連敗を脱する。これには、ずかちゃんファンもニッコリ。」という感じで怪しげなリーク情報とともに、炎上の話題を提供していた。

 

もっとも、ずかちゃんの起用はムサニとの間で同意ずみだったみたいだけど・・・。こういうメディア戦略ってアキラ君にしか出来ないよね。でも本気で10連敗したくなかっただけに見えたし・・・、絶対にわざとじゃないよね? アキラ君がおバカかわいい。

 

肝心のF4の声優さん達なんだけど、これがなんと本人達が声をそのまま担当した。 とは言っても、景ちゃんがやるケイティ以外は、他のメンバーは準レギュラー扱いだったので、出ずっぱりって訳でもなくて、ある程度都合が付いた。 もっとも、みんな忙しいから別録りも多いけどね。

 

そんな感じで『走れケイティ』のプロジェクトは順調に進んだ。 でも、アニメの第一話完成直前で私は疑問だった。面白いアニメだとは思うけれども、相場の4倍の制作費をかけるほどだとも思えない。 こんなの絶対にペイできないのにどうするつもりなんだろう? って思っていたら、関係者全員がアキラ君の販売戦略に度肝を抜かれる事になるのであった。

 

 




今回はほぼ、絵麻ママの近況になっちゃいました。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。