星アキラは自由に生きたいっ 作:Magical forest
アキラ君が『走れケイティ』でりーちゃんに要求した事は以下だった。
1. 旅をする現地の文化を尊重して、旅先の国の文化や常識を尊重した話にすること
2. 無理に新しいことをせずにパターン化してもよい
3. 過激な表現は避けること
4.大人でも子供でも、わかりやすいシナリオにすること
5.無理に日本のアニメファンや評論家の意見にこだわらなくてもよい
6.何話から観てもわかる構成にすること
アニメ制作サイドからすると結構不思議な要求だった。 そもそもどの年齢層やターゲット層に見せるのかもよくわからない不思議な設定だ。
アキラ君は『男はつらいよ』みたいな感じの人情と笑いでパターン化してくれればいいって言っていた。新しいことに挑戦してもいいけど、先にパターン化してそこから展開したほうが楽とも言ったアドバイスをしている。
ふつうは斬新なアニメを目指すと思うんだけど・・・。
結果、第一話で出来上がってきたのは、適度に面白いけれども、日本のアニメファンからしたらちょっと物足りないアニメが出来上がってきた。
アキラ君は出来上がったアニメに喜んで、さっそく売り込みに行った。 売り込み先は日本ではなくて、ネッコフリックスとハリウッドのブローカーを伝手にした、全世界のテレビ局が対象だった。
逆に日本ではネッコフリックス独占放送で、一般のテレビ局では放送されなかった。
いや、これは無理筋でしょう。 私を始め、ムサニの面々は全員そう思った。 私たちは盛大な爆死を覚悟した。
ところが、ここから話は予想外の方向に向かった。 アキラ君は最初から日本語版の他に、英語、フランス語、スペイン語、中国語、その他のテレビ局から依頼された言語でローカライズした。
そして全世界でネタバレ無しに一斉に放映した。
日本が舞台の最初の3話は案の定、そんなに人気が出なかった。 日本ではネッコフリックスでしか放映していないので、このアニメの存在を知らない人が居るぐらいだった。
そして次の舞台はフィリピン。 なぜこんなマイナーな国に行くのかとみんな思った。アメリカとかヨーロッパとか中国とか市場が大きくて有名な国はいっぱいあるじゃんと。
私たちは爆死の確信をさらに強く持った。だが、この辺から風向きが変わってくる。
徹底的な取材と、現地の人たちの協力、りーちゃんが現地に取材をしてまで書き上げた渾身のシナリオが火を噴いた。
潤沢な予算をかけてムサニの努力で書き上げたフィリピンのカオスで混沌としていてエネルギッシュな情景と、生き生きと描かれる現地の生活、そして人情味のある人間ドラマが徐々にファンを獲得していった。
このアニメはまずはフィリピンで大ヒットし始める。 そしてその後東南アジアの国々を旅するごとにその国でヒットした。 同時に周辺国やアジア全体での視聴率が回を追うごとにどんどん上がっていく。
1クール終了時にはアジアでそれなりにヒットするようになり、2クール目が制作決定。 2クール目はなんと中東。 3クール目が南米。 ことごとく主要な国を飛ばしてマイナーな国々を回った。
でもそれがヒットの要因。 ふつうは取り上げられるはずのないマイナーな国々の旅、そして綿密な取材で描かれるリアルな現地の生活。
ケイティが旅した国は必ずヒットした。 そして2クール目には世界的な注目が集まっていく。
アニメの内容は男がつらいよと孤独のグルメを足して2で割ったような感じとなった。とにかく不思議な魅力があって、観るのに体力を使わないし、話を飛ばして観ても問題ないけど、笑いとたまに人情でほろりとくる感じ。話の内容自体も海外のアニメファン向けではなくて一般向けだった。当然、アニメファンも楽しめるけどね。
そこに、回によって交互に千世子ちゃん達のお助けキャラが絡む感じ。
あれよあれよと言う間にアニメの収益は改善していった。全世界の放送収入とメディアやグッズの売り上げがスターズに集まった。気が付いたら放映しているアニメの中で断トツの収益を上げていた。
私たちは日本だけをベースに考えていたんだけど、全世界を商売相手にすればパイが何十倍も大きい。 しかも、海外のアニメファン向けじゃなくて、一般向けの市場に流していたためカジュアルなファンがいっぱいついて、4倍の製作費などあっという間にペイできた。もっともこんな売り方はハリウッドに強力な伝手があるアキラ君じゃないと無理だろうけど。
そんな世界的なヒットを背景に遅まきながら日本でも一般に放送されて、ヒットすることになった。『走れケイティ』は製作が日本でありながら、世界から日本に逆輸入されためずらしいアニメとなった。(正確にはネッコフリックスで先に放映されていたけれど)
主人公のケイティが見習い悪魔って世界の宗教的にはまずいんじゃないの?って思っていたんだけど、彼女は見習い悪魔として世界を旅しなさいという神様の啓示を受けて旅に出ていた。 なので見習い悪魔は自称だけど、啓示を行った神様もどの神様とかいう描写もなかった。
彼女は声を聴いた神様を探して旅をしていた。彼女自身は神様は信じるけれども、どの宗教にも入っていないという不思議な話だった。だから彼女は現地の宗教や風習を偏見なく肯定していった。
彼女の生き方自体がいろんな宗教の宗教家さん達にも問題がないようで、ケイティの旅路は様々な人の注目を集めた。こういった部分が初期から宗教学者さんや民俗学者さんなんかでチームを作っていた成果が出ている。
景ちゃん達は日本語のほかに、英語の声もがんばっていた。 子供のころからアキラ君に英語を教えてもらって発音とかも良かったので、彼女は声優としてもヒットした。 英語以外の言語はさすがにそれぞれの言語の声優さんを当てているけど、彼女は人一倍声優の演技をがんばって、今では声優としても全く遜色がないし、声優としての世間の評判も上々だ。 というか、最近は景ちゃんがゾーンに入るとほかの声優さんが喰われるので手加減してあげて(泣)
そして、ヒットと共に、ムサニの収益も上がり、おいちゃんは2クール目から助監督に昇格して、3クール目には監督として何話か受け持つようになっていった。 制作進行の仕事を後輩に譲って、今では彼女がメインの監督だったりする。今、ムサニには世界各国から国際郵便で大量のファンレターが届いている。
だから今日の銀河鉄道の舞台は『走れケイティ』の声優さん達が出演する舞台でもあり、私たち5人の恩人とも言える人達の特別な舞台なのだ。