星アキラは自由に生きたいっ   作:Magical forest

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夜凪景は撮影機材を調達する

 

翌日の放課後に私はスタジオ大黒天の事務所に居た。

 

「撮影の道具を貸して欲しいって?」

 

「そうです。」

 

「うーん。 学校で自主製作の映画を撮るんだよね?」

 

「はい。」

 

「うちの道具を素人が使うのは難しいと思うわよ。一応セットを持ってくるからちょっと待っていてね。」

 

「これが、カメラ、これがカメラレコーダー、それでこれがマイク。 このカメラでProress422のコーデックで録画して、コンピュータ処理でカラーグレーディングを適用して、好みの色合いにする形ね。」

 

「う゛っ、このカメラすごく重いんですが・・・。」

 

「ENGカメラでバッテリーを合わせて8Kgあるからね。 肩に乗せて使うの。 これでもデジタル化で軽くなったらしいわよ。 でもこの重さのお陰で大分ぶれにくいけど、長時間構えるのは本当にきついわね。 私も2時間以内の撮影に使うか、三脚を使うもの。 ニュースの現場で何時間もこれを構えてブレないプロのカメラマンさんは本当にすごいわよね。」

 

「三脚で支えるって言っても、この三脚もすごく重いんですがっ。」

 

「業務用は三脚だけでも8Kgはあるからね。ブレずに良い絵を取る事だけに特化して、使いやすさとかは二の次だからね。一般の三脚は1.2Kgぐらいなんだけどね。」

 

「いつも撮影現場で見ていましたが、このカメラって、実際に持つとこんなに大きくてこんなに重いんですか!? こんなのクラスメイトや吉岡君が扱えるとは思えないんですが・・・。よく雪さんってこんなのを使えますよね。」

 

「まぁ、4Kgぐらいのハンディカムもあるから、そっちでもいいんだけど、素人が扱うと手振れが酷くてあんまり見れた画にならないし、撮影後に動画をグレーディングできるPCとか、そんな設備があるとも思えないわ。 これらは高い機材だけど、壊しても景ちゃんのお給料なら簡単に補填できるから、貸すのは問題無いんだけど、文化祭用の映画撮影でうちの機材を使うのは、オーバースペックすぎて全くおススメできないわね。」

 

「そうなんですか・・・。私達の映画はできないんですか・・・。」

 

「いや、そうじゃないわよ。 別の所から借りた方がいいってだけ。 景ちゃんがアキラ君のYoutube放送のアシスタントをしていた時は、何で撮影していたか覚えている?」

 

「それは一眼レフカメラ・・・。あっ。」

 

「そうよ。 別にアマチュアの映画なんだからプロ用の機材に拘る必要は無いわ。 ずっとアキラ君の放送アシスタントをしていたんだから、1眼レフカメラで動画を撮るのは慣れているでしょ? アキラ君や千世子ちゃんは、趣味や経費で新しいカメラやレンズをバンバン買っているから、放送で使わないカメラはいっぱい余っていて、アキラ君の家の放送機材部屋に一杯転がっているわよ。」

 

私達はアキラさんの家(離れは自分の実家)で、夕ご飯がてらに撮影機材を借りることにした。

 

「お母さんの手作りコロッケはジャガイモがゴロゴロしていて、すごく美味しいですっ」

 

「一人暮らしをしているけれども、野菜とかちゃんと食べているのよね?」

 

「大丈夫ですよ。景ちゃんは私と一緒にご飯を作っていますし、お野菜もしっかり取っていますよ。 ・・・引っ越した最初のうちは、景ちゃんが近所のスーパーでお弁当が半額になるまで待っていてドン引きでしたけど。」

 

「ちょっと待てばお値段が安くなるんですからいいじゃないですか!」

 

「売れない女優ならいざしらず、いまや世界中の人が憧れる夜凪景が半額弁当を待つなんて、そりゃドン引きね。 雪さんも一緒のマンションに引っ越してもらって良かったわ。」

 

一緒にご飯を食べている千世子ちゃんが言った。 

 

「ドンびき~!」「ドンびき~!」

 

「ねえ? 千世子お姉ちゃん、ドンびきってな~に?」「な~に?」

 

千世子ちゃんが離れに泊る事は多くて、最近は家を出て独り暮らしをする私よりもレイとルイは、千世子ちゃんに懐いている気がする。

 

双子の面倒を見ているアリサさんならともかく、実の姉を差し置いて千世子ちゃんにまで負けるなんて納得が行かない。 そもそもこの子達ぐらいの歳には、私は・・・・・。 いや止めておこう。 お母さんが元気で、あんな苦労を知らずにレイとルイが育つのであれば、それで良いじゃないか。 今の私はすごく幸運で、幸せなんだから。

 

「それで景ちゃんの自主製作用の映画のカメラを貸して欲しいんだよね。」

 

「そうですっ。」

 

アキラさんが質問してきた。

 

「うーん。 普通に考えるとンニーのフルサイズに単焦点レンズなんだけど、素人が扱うと、どう考えても被写体深度が浅くて、微妙にピントがボケた映像を量産する気がするんだよね。」

 

「そうね。ンニーのAF(オートフォーカス)の性能はいいけれども、フルサイズで被写体深度の浅いレンズなんかを使って、AFが迷ったりしたら、シーン全部がリテイクになっちゃうから、止めた方がよいわね。素人がいきなりMF(マニュアルフォーカス)でばっちりと焦点を合わせられるとも思えないし。」

 

カメラに詳しい千世子ちゃんも会話に加わってきた。

 

「そうなると、ファナソニックのGHシリーズにズームレンズって組み合わせが無難だよね。」

 

「そうね。 昼間であれば、マイクロフォーサーズで、F2.8~F5.6ぐらいのレンズを組み合わせて、広角から標準、望遠のズームを揃えてあげた方がいろいろな画が撮れて喜ぶんじゃないかしら。 これなら無難でピンボケもほとんど起こらないだろうし。」

 

「薄暗かったり、暗いシーンは撮らないんだよね?」

 

「はい。日常の学校の風景がメインなので、撮っても夕焼けのシーンまでです。」

 

「そうすると、後は手振れ防止用の三脚とジンバルか・・・。」

 

「マイクロフォーサーズに軽めのレンズなら、普通の電動ジンバルで大丈夫じゃないの?」

 

「そうだね。 素人が手持ちで手振れ無しの動画なんて撮れないだろうし、電動ジンバルをセットで付けるのがよさそうだね。 あと三脚とマイク、外部ビデオモニターの他に、照明とか、レフ板は必要なのかな?」

 

「クラスメイトが協力してくれるって事で、撮影に人数はかけられるとは思うけれども、レフ板は良いとは思うけれども、照明は止めた方がいいんじゃないの? 不自然な明かりが当たってシーンを台無しにする未来しか見えないわ。」

 

撮影に詳しい雪さんが言った。

 

「照明は配線したり、セットしたりで機動力も落ちるし、熟練しないと不自然な光が当たりすぎて、撮れる画も悪くなっちゃうから、自然光と、簡単なレフ板が良さそうだね。 もっとも、レフ板はレフ板ですごく奥が深いんだけど・・・。」

 

「プロの写真家さんじゃないんだから、顔を照らしてそれっぽく見えればいいんじゃないの?」

 

「確かに。白色のレフ板なら、少なくとも照明ほどの失敗はしないだろうし、そんなに不自然にならないかな。今は昔と違ってISO感度を上げても動画は破綻しないし。とりあえずISOをオートにしておいてホワイトバランスで調整すれば、大体どうにかなるからね。」

 

「うーん。プロの映像作家の身からすると、簡単に綺麗な画像が誰でも撮れる時代になって困るわね。」

 

「僕達プロの役者とYoutuberなどの一般の人達との垣根も、どんどん低くなっているからね。」

 

「そうね。 だって、アキラちゃんはプロの役者じゃなくて、Youtuberだってみんな勘違いしているものね。」

 

「ぐはっ! 千世子ちゃん、その毒舌は効くよ。 一応、僕の本職は役者なんだよ!!」

 

「本職は珍獣じゃ無かったの?」

 

「ぐおっ!!」

 

「ごめん、間違えたわ。 本職はクソガキだったわねw」

 

「アキラお兄ちゃんはクソガキ~!」「クソガキ~!」

 

双子も一緒にアキラさんを煽る。

 

「ぐふっ!!」

 

「千世子ちゃんの毒舌コミュニケーションの前に僕は瀕死だよ・・・。」

 

そう言って、アキラさんはテーブルに倒れこんでピクピクとしていた。 アキラさんってこういうギャグっぽい演技がすごく上手いと思う。 ・・・これって演技だよね? 本当にダメージ受けていないよね?

 

アキラさんが食事でなぜか瀕死になった後に、みんなで放送機材部屋に行って機材を貸してくれた。 1眼レフカメラが3台、レンズが6本、小型マイクに折り畳み式のレフ板、手振れ防止用のジンバルと三脚。 小型モニターとその他アクセサリ。  全部をボストンバックの中に入れると、結構かさ張ったけれども、最初に借りようとしたプロ用の機器よりはずっと軽くて、クラスのみんなでも取り扱いができそうだった。

 

その日は離れの実家に泊って、翌日の朝にアキラさんが車で、機材ごと私を学校に送ってくれた。

 

「ふーん。 ここが景ちゃんの学校なんだ。」 そう言いながら、アキラさんは学校に機材を持って行くのを手伝ってくれた。

 

こうして機材が揃い、私達の自主製作映画の撮影が始まる事となった。

 

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