星アキラは自由に生きたいっ   作:Magical forest

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星アキラは映画撮影を見学する1

 

銀河鉄道の夜の舞台の後の仕事をひと段落した僕は、景ちゃんからはちょっと遅れて休暇に入る事にした。

 

とは言っても、休暇中はYoutubeの放送以外は特にやる事も無く、ご飯以外は5時間ほど星アキラモフモフパジャマを着て、スマフォを片手にゴロゴロしていたら飽きた。

 

若い僕の肉体は刺激を求めているのだ。 これでアラフォーとかになったら仕事疲れで一日中ベッドの上で死んだように寝ているのかもしれないけれども、まだ若い僕の肉体は、前世と合わせて成熟した僕の精神に反して活発に動こうとしていた。

 

成熟した精神って言っても、前世の年齢と今の年齢を足したら・・・すでにアラフォーじゃないか!?

 

ケモミミとモフモフしっぽの付いた着ぐるみパジャマを着て、くたびれた休日の珍獣として、スマフォを片手にぐだぐだとダレていた僕は、精神年齢がすでにアラフォーである事に驚愕した。

 

アラフォー精神に18歳の体。 つまり今の僕は、軽自動車にF1のエンジンを積む感じだな。(違う)

 

ちなみに、今の僕は、まさしく全盛期を迎えている肉体を持て余しているのでは全く無い。 ここのところ毎日忙しかったのに、たまの休みで何をしたら良いのかわからなくなっていると言う、ブラック企業戦士にはよく見られるアレである。 つまりワーカホリックで、仕事をしていないと落ち着かないという、かなりヤバイ状態だった。

 

僕は18歳にして、ワーカホリックと言う不治の病に侵されている事に愕然とした。このままではブラック芸能事務所(スターズ)の社畜になってしまう!

 

『社畜珍獣』という言葉が僕の頭をかすめた。 畜産なのに珍獣? 会社で畜産されているなら、珍しい獣じゃないのでは? それなのに珍獣とはこれいかに?

 

『社畜珍獣』という言葉のラビリンスに頭を悩ませていると、僕は『社畜珍獣』の言葉が正しい日本語なのかを、どこかの先生に聞いてみるべきだと思った。 流石にこの社畜珍獣の悩みで、1日を浪費するのは無駄だというのは、精神年齢がアラフォーの僕にもわかる。

 

そうして時計を見ると午後3時前。 そう言えば、今日の放課後は景ちゃんが学校で映画の撮影をするとか言っていた。 僕は『社畜珍獣』の日本語が正しいのかを確認するがてら、景ちゃんの映画撮影を見に行く事にした。

 

思い立ったら即行動。 若くてピチピチの僕は素早く行動に移す。 精神年齢がアラフォーだった事は、三歩歩いたらすぐに忘れた。 鳥頭珍獣という新たなる珍獣ジャンルが生まれた瞬間だった。

 

ただ、残念なことに、そこからさらに三歩歩いたら、鳥頭珍獣が生まれた事を忘れたので、僕がこの鳥頭珍獣を思い出して、珍獣ジャンルとして世に出るのは、ここからさらに18年後の話となるのであった。

 

とかいう、どうでも良い妄想をしながら、服を着替えて外出の用意をして、景ちゃんの学校に行こうと玄関に向かっていると、玄関で同じく休暇に入った千世子ちゃんにばったりと会った。

 

「あれ、千世子ちゃん? 今日は休暇じゃないの?」

 

「今日の夜に、両親と待ち合わせて外食に行くから、この家でそれまで時間を潰すつもりで来たんだけど、何か楽しそうな所に行く感じね?」

 

まずい。 千世子ちゃんまで学校に来てしまったら、大騒ぎになってしまう! 僕は景ちゃんの学校に行こうとしているのを気付かれないように、完璧な演技で誤魔化した。

 

「ナッなんの事ダイ? ぼっボクには全く分からないなァ。」

 

完璧な演技だった。 この場合、役者として、誰にも気づかれないようなスマートな演技をするべきだとみんな考えるだろう。 たとえばこんな感じだ。

 

「ちょっとコンビニに行くだけで、すぐに戻って来るよ。 あっ、千世子ちゃんも何か買ってきて欲しい物とかある?」

 

だがしかし、それこそ素人の浅はかな考えだ。 百戦錬磨の女優である千世子ちゃんがそんな嘘を見破れない訳が無い。 であるならば、大げさに動揺して見せる事で、重要な用事なんかじゃなくて、逆にコンビニにでも行く気なんだなと思わせる作戦だ。 なんて高度な心理戦。 まるで伊藤カイジと利根川幸雄の戦いのような、超弩級の心理戦が今、僕と千世子ちゃんの間で繰り広げられているのだ!

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僕が助手席のドアを開くと、千世子ちゃんが降りてきて口を開く。

 

「ありがとう。アキラちゃん。 へ―。 ここが景ちゃんの高校なんだ。 まさしく普通の高校って感じね。でも文化祭の準備でみんな楽しそうね。」

 

「なるほど。 景はこんな学校に通っているんだな。」

 

景ちゃんが通っている高校の駐車場に止めた僕の車から降りた二人が、思い思いの感想を述べる。

 

景ちゃんの学校は来週開催される文化祭の準備でみんな慌ただしく動いていた。

 

あの高度な心理戦の敗者は僕だった。 それと同時に、九州から帰って来て、食堂で夜凪ママの出すおやつを食べていた阿良也も顔を出して、着いてくることになってしまった。

 

阿良也曰く「面白そうな匂いがした。」

 

お前の匂いは、演じているかどうかを判断する匂いだろうが! 匂いが万能すぎるだろ! これだから天然キャラは・・・。

 

結局、僕と千世子ちゃんと阿良也という、いつものメンバーで景ちゃんの映画撮影を見学する事になってしまった。 景ちゃんのクラスメート達には驚かれない事を祈ろう。 ・・・無駄な祈りのような気がするけれども・・・。

 

校舎を見渡すと、景ちゃんは今、渡り廊下で撮影しているっぽい。 渡り廊下に人だかりができていて、上空にマイクが飛び出ているのがわかる。 あれでは野次馬の整理が大変そうだ。

 

僕達三人は、そんな渡り廊下を目指して歩き始めた。

 

 

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