星アキラは自由に生きたいっ   作:Magical forest

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星アキラは文化祭を観に行く3

 

みんなでお化け屋敷で大騒ぎをした後は、景ちゃんに校内を案内してもらって文化祭を楽しんだ。

 

みんな揃ってフォトスポットで撮影したり、演劇部の演劇を観たり、いろんな展示や絵画などを見たり。 景ちゃん以外はまともな高校生活を送っていないのもあって、普通の高校生活を楽しめる、とても楽しいひと時だったよ。

 

そして、文化祭も終わりに近づき、後夜祭になって行く。

 

映画は後夜祭の上映で、まだ明るいうちに時間があり、生徒会からピアノ演奏を頼まれたので、僕のYoutube動画として投稿しても良い事を条件に、体育館でピアノ演奏をしたりした。

 

ピアノ演奏は前座の子が上手かったので、前座の子を捕まえて二人で情熱大陸を弾いたり、フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーンを弾き語ったりして、最後は菊次郎の夏のSummerで締めて、楽しい演奏をしたね。

 

そして、いよいよ景ちゃんの映画の上映だ。

 

とはいえ、その前に上映するためのスクリーンの準備が必要だね。

 

本日、文化祭の整理をやってくれた、イベント担当部署が校舎に巨大なスクリーンを張ってくれた。

 

皆さんはドライブインシアターというのを知っているだろうか?

 

映画でそのシーンを見た事がある人も多いとは思うけれども、アメリカでは、野原にスクリーンを張って、そこで車の中から映画を楽しむのだ。

 

今回の文化祭は、そこまで大規模な施設を入れる気も無いけれども、せっかくなら景ちゃんや映画制作に協力した人達にも特別な体験をしてもらいたかった。

 

この映画を体育館の中のスクリーンで観るのもつまらない。 でかでかと校舎にスクリーンを張って校庭で生徒全員に映画を映すのだ。

 

「アキラさん、こんなものでどうでしょうか。」

 

イベント部署の担当者が僕に出来栄えを聞いて来た。

 

「うん。いいね。 巨大だけど、すぐに張れる移動式のスクリーンも良いし、臨時で設置した音響もいいね。 今日のチケット整理といい、良い仕事をするね。 打ち上げ会の方はマネージャに手配をお願いしてあるから、期待してね。」

 

「ありがとうございます。」

 

「こんな巨大な所で上映するなんて・・・。」

 

映画を撮った吉岡君が口をあんぐりと開けている。

 

「特別な日に上映する特別な映画だよ。 なら特別な場所で上映しないと。」

 

「アキラちゃん、ずいぶん奮発したわね。」

 

「千世子ちゃん、そう見えるよね? でも実はこれは、この前買ったばかりの新機材のテストでもあるんだよ。 イベント会場でぶつけ本番でいきなりミスったら大惨事でしょう? これはクライアントに提供する前の事前テストも兼ねているんだよ。」

 

「確かに、今日ぐらい時間に余裕が無いと、この機材をテストするのは難しかったですね。 なにせ大きいので。 途中いくつかトラブルはありましたが、実戦形式で段取りが付いて助かりました。」

 

「うちのイベント運営も、どんどん組織力と機材がレベルアップして行って助かるよ。」

 

「ちゃっかりしているわね。」

 

しばらくすると辺りは暗くなっていき、僕達や映像研究部のメンバー、一緒に映画を撮ったクラスメート達。 みんなグランドから校舎に張られた巨大なスクリーンを観ている。

 

そして、いよいよ吉岡新太監督の処女作がスクリーンに投影され始める。

 

映画の題名は『隣の席の君』。

 

普通の高校に通う女子高生、夜凪景の日常を題材にした映画だ。

 

吉岡君の目線で見る夜凪景の一日を記録しただけとも言える、山もオチも無い映画だ。

 

しかし、一緒のクラスに居るクラスメートの視点で見た、夜凪景の作り物ではない、本当の日常が生き生きと描かれている。

 

これは景ちゃんの本当のクラスメート達だからこそ撮れる特別な映画だね。

 

そして、クライマックスも無く、クラスメート達との楽しい日常を過ごした景ちゃんは、夕日の中を校門から下校して映画が終わる。

 

実は僕は、新宿のスタジオアルタ、渋谷の109フォーラムビジョンなどで上映する関係上、事前にこの映画を観ていた。

 

そしてこの映画を完成(・・)させるためには、もうひと手間を加える必要がある事に気が付いた。

 

この映画が誰のための映画(・・・・・・・)かという事だ。 この映画は観客に観てもらうための映画じゃない。

 

映画が終わって、学校の全校生徒から拍手が起きる。

 

映画のエンドロールに自分の名前を見つけたクラスメート達は涙を流しながら、みんな抱き合って感動を共有している。 景ちゃんもクラスメート達にもみくちゃにされながら、自分の映画が上映される感動を嚙みしめていた。

 

夜凪ママはそんな景ちゃんを優しい目で見ていた。

 

まさしく青春だった。 いや、アオハルかな。 本当に未熟な映画。 でもこの映画が持つ若さや初々しさ、思春期のエネルギッシュさは、景ちゃんを間近に見るクラスメートでしか撮れない、この瞬間だからこそ生まれた、魅力ある映画となっていた。

 

この映画は上映されて終わる訳じゃない。 この映画製作に携わった人たちのアオハルの一幕として、完成した作品をみんなで共有した思い出が出来て、そこで初めて完結するのだ。

 

だから僕はそれが強く思い出に残るように、特別な上映場所を作ってそこで上映した。

 

そんな青春真っ只中の高校生達による、エネルギッシュなアオハルの一幕を間近からライブで見ていると、僕もとてもアオハルをしたくなった。

 

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