星アキラは自由に生きたいっ   作:Magical forest

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星アキラは朝食を食べる

「アキラさん、起きてくださいっ。」

朝に景ちゃんが僕を起こしに来る。

 

「むにゃむにゃ。もう食べられないよ。」

 

「そんな漫画みたいな寝言止めてください。」

 

「んんっ、判ったから起きるよ~。昨日の夜はなめこの栽培で忙しかったらまだ眠いんだよ~。」

 

「早く起きないと朝ごはん無くなっちゃいますよ!」

 

「判った。判ったよ~。起きたから大丈夫だよ~。」

 

僕はおもむろに起き上がると、寝不足の眼を擦りながら食堂に向かった。

 

「アキラ遅いわよ。最近たるんでいるんじゃないの?」

 

アリサママはキリっとしたいつもの無表情で、僕に毒を吐く。

 

「ルイちゃん~♪レイちゃん~♪、アリサママとまんまを食べましょうね~♪」

 

「あう~。あい~。」

 

「まんま~。」

 

さっきの無表情は何だったのかとニコニコしながら双子にご飯をあげ始めるアリサママ。

 

夜凪一家が住み込みのお手伝いさんを初めてから、2週間が経過した。

この間に一番変わったのは、まさかのアリサママだった。

 

--------- 2週間前 ---------

 

アリサママは、お手伝いに来た夜に夜凪ママさんと、景ちゃん、ルイ君とレイちゃんと顔を合わせると、夜凪ママと景ちゃんを見るなり、「こんなにすごい美人なのに目にクマができてやつれちゃって・・・。この家に来たからにはいい物をたべてゆっくり休むのよ。」と言って、自分はルイ君とレイちゃんの面倒を見て、夜凪ママと景ちゃんにお風呂を勧めて、ゆっくり休ませた。

 

翌日、アリサママは張り切って夜凪家のために朝食を作ろうとして、消し炭と形容しがたい物体が出来ていたので、僕は急遽、近所のマクドナルドで朝マックを買ってくることになってしまった。

 

マックなんてほとんど食べた事の無いはずのアリサママから「アキラ、私はサンキューセットでいいわ。」という謎のオーダーを受けたので、マックの店員さんに伝えたら怪訝な顔をされた。店長さんも知らないみたいだ。僕は、結局普通の朝マックのセットを人数分買って、アリサママに報告したら「ハンバーガーのセットだったんだけどもう無いのかしら?」とか言っていたので、後でネット調べたら、1987年のセットだった。知るかそんな物!!

 

「アリサママのマクドナルドはどんだけ古いラインナップなんだよ!」と、セット内容を見たらハンバーガーもチーズバーガーもソーセージマフィンもフィレオフィッシュもポテトSもドリンクSも、全て今でも売っていた。そしてハンバーガーのSセットとチーズバーガーのSセットは、なんと今の方が1987年よりも安かった・・・。マクドナルドの企業努力すげぇ。 僕もドナルド教を信仰するべきなんだろうかと本気で悩んだ。

 

なお、普通に買ってきた朝マックは、アリサママも夜凪家の二人も美味しそうに食べていた。

 

僕も遅れて朝マックを食べ始めた時に、僕はとんでもない物を見てしまった。

 

「ルイちゃーん。まんましましょうね。あーん」

 

「きゃっきゃっきゃっ」もぐもぐもぐ。

 

「レイちゃんも食べましょうね。あーん。」

 

「あうーあ。」もぐもぐもぐ。

 

なんと突然、あのアリサママが満面の笑みを浮かべて、夜凪ママが作った離乳食を双子に与えているではないか。

 

「アっアリサママっ、料理に失敗して頭おかしくなっちゃった?それとも千年パズルとかに意識を乗っ取られているとか、いや、ははーん。もしかしてトラックに轢かれた中の人が転生して入れ替わっているんだね! 僕は詳しいんだ。」

 

あまりの衝撃でボトっと、ソーセージマフィンを落としながら早口でしゃべる僕の頭に、突然、アリサママの正拳突きが飛んできた。

 

「ぐはっ。」

 

「何バカな事言っているの? あなたこそ、ついに頭おかしくなったんじゃないの?」いつもの無表情でしゃべるアリサママ。

 

そして、アリサママは再び、「ルイちゃーん。また、もぐもぐしまちょうね~。」とニコニコしながら双子に離乳食を与えている。

 

「アイエエエ!ナンデ!?アリサママナンデ!?」

 

「ルイとレイがアリサさんに懐いて良かったわ。」ニコニコの夜凪ママ。

 

「アリサさんが優しい人で良かった。」と嬉しそうな景ちゃん。

 

何の違和感も感じていない様子の二人。おかしいのは僕なの!?僕がおかしいの!? いや、夜凪家の人たちに優しいのは嬉しい。でもこれは変わりすぎでは?

普通は変わるにしても、いろんなイベントで夜凪家とアリサママとの絆が少しずつ生まれて、何かの騒動があって絆が深まってついに改心するとか、そういう感動のイベントとかあるんじゃないの!?

こんなの視聴者全員、置いてきぼりだよ!!

 

「さあ、あとでアリサママとあそびましょうね~。」

 

「アリサママというよりもアリサおばちゃんでは? ぐはっ」

 

僕の不用意な一言で、再びアリサママの正拳突きを浴びる僕。

 

「アキラさん、女性にそんな事を言ってはいけませんよ。」と夜凪ママ

 

「アキラさんって、意外とデリカシーが無いんですね。」と景ちゃん

 

 

--------- 現在 ---------

 

そんな衝撃的な展開があったのが2週間前。今ではこの朝食の光景もすっかり見慣れた物になっていた。

 

僕はアリサママが静かな生活を好むと思っていた。でも嬉しそうに双子に離乳食をあげるアリサママを見ていると、実はアリサママは大家族の生活に憧れていたんじゃないかと考え始めている。アリサママも一人っ子だったし。

 

どちらにしても、夜凪家との新生活は思っていた以上に順調だった。


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