星アキラは自由に生きたいっ 作:Magical forest
-------------木梨かんな視点-------------
「それじゃ、かんな、またまた明日ね~。」
「うん。それじゃまた明日。」
放課後に運動部に行く友達を見送ると、私は盛大にため息を付いた。
「は~~~~~っ。」
私も、文華高校の演劇部に所属していて、ちょっと前までは私もあの子と同じく、放課後にすぐに部活に行っていたんだけれども、今は演劇部を幽霊部員になって帰宅部状態だった。
中学の時には演劇部が無くて、わざわざ演劇部がある高校を選んでまで入った演劇部だったのに・・・。
どうしてこんな事になったのか、それはデスアイランドのオーディションの時にまでさかのぼる。
あのオーディションは、演劇部の友達みんなで一緒に応募したのだ。 結果、2/3は1次選考落ち、残った子も2次選考の悲しみの表現で落ちてしまった。
結果、私だけが3次選考に受かり、そして、3次選考で周りの人が殺し合いをする中で、怖くて身を守ってオロオロとしていた私が、「状況を飲み込めなくて怯えている自然な演技が良いね。」とか言う理由で、選考を通り、まさかのオーディションの合格をもらう事となった。
完全に棚ぼただった。 私の頭上に落ちてくるはずがないはずの、幸運のぼたもちが降ってきたのだ。
私のオーディション合格に演劇部の友達は喜んでくれた。 そしてオーディションの最後にアキラ君と千世子ちゃんのエチュードを見せつけられた私は、部活以上にがんばって演劇の練習に打ち込んで、デスアイランドの撮影本番に臨んだ。
そしてデスアイランド本番。 演技のために、ゲロを吐いて、指示もされていないのに、本当に崖から飛び降りる景ちゃんを間近で見ていたら、私にはこれはできないと思った。
景ちゃんは、その演技力と実力で千世子ちゃんの横に立つ役を手に入れたのを見て、私には女優の才能が無い事ははっきりとわかってしまった。
本物との違いって感じかな? 流石にここまでの違いを見せつけられると、清々しいまでに、私は全く敵わない事が良く分る。 デスアイランドのオーディションに受かった時には、このまま映画で活躍して女優デビュー!?とか思っていたけれども、現実には本物との差を見せつけられただけだった。
デスアイランドの撮影中には芸能事務所へのお誘いとかもあったけれども、私は演劇をやりたかっただけで、女優になりたかった訳では無い事に気が付いて、丁重にお断りして、デスアイランドの撮影後は演劇部所属の普通の高校生に戻った。
戻ったんだけれども・・・。 私がデスアイランドに打ち込んでいたのが、高校一年生で入学して、演劇部に入って、初夏から秋ごろまでだった。 つまり、高校一年生として、部活で仲間との人間関係を固める一番大切な時期を私はデスアイランドの撮影で潰してしまったのだ。
みんな演劇部でグループとなっており、私が入る隙間は無くなっていた。
いや、認めよう。 これは自分のせいだ。 あんな夢にまで見た演劇部なんだけれども、デスアイランドでプロの役者さんやプロの撮影現場に触れて、高校の演劇部が急にレベルの低い物に見えてしまったのだ。 上手く隠しているつもりだったけれども、演劇部のみんなはそんな私を見抜いていたのだろう。
結果、私は双方の同意の元、私は演劇部の幽霊部員となり、ほぼ帰宅部となってしまった。
デスアイランドのオーディション合格が無ければ、今頃、演劇部に打ち込んで青春を謳歌していただろうに、どうしてこうなってしまったのか・・・。
「は~~~~~っ。」
ため息をつくと幸せが逃げるって言うけれども、私はそんなため息を我慢することが出来なかった。
家に帰って、玄関を開けると、玄関にお洒落なローファーと革靴が置いてあった。 誰かお客様でも来ているのだろうか? そう思って警戒してリビングのドアを開けると・・・・。
「アキラお兄ちゃん、弱っわ――――い!」
「ぐぬぬぬぬっ。 ハメ技とは卑怯ナリ! 正々堂々と勝負するナリ!!」
「うふふふっ。 なんのお構いもできずすみません。」
「いえいえ、この手作りのシフォンケーキ、すごく美味しいです。」
なぜか、コロ助の声で弟とスマブラをするアキラ君と、テーブルで母親とくつろいでいる千世子ちゃんが居た。
なお、スマブラは弟にボロ負けで、アキラ君は最後に涙目になって負け惜しみを言っていた。
「卑怯なハメ技に負けただけナリ! ハメ技禁止の万全の体勢なら絶対に負けなかったナリ!!!」
「アキラお兄ちゃん、弱すぎるよ。まぁ、ゲームがプロ級の僕に負けて当然だけれどもね。」
「こんど、ブタゴリラ級のもっと強いやつを連れて来て、コテンパンにしてやるナリ!」
「あははははっ。 最弱のアキラお兄ちゃんが連れてくる人なんて弱っちいに決まっているよ。」
「くっ、悔しいナリ! 今に目に物を見せてやるナリ! 首を洗って待っているナリ!」
弟よ、あんた誰にケンカを売っているか分かっているの? あんまり挑発しちゃうと、本当にプロゲーマーが出てくるわよ?
私はアキラ君に勝って、粋がっている弟の将来を心配した。 そして、弟と同レベルのアキラ君の精神年齢も心配した。
何ていうか、リビングの中でスターがくつろいでいて、非常にカオスだった。
「かんなちゃん、そこに立っていないで、こっちに来て座ったら?」
「あっ、あのっ、これはどういう事態でしょうか・・・・。」
私はすごく緊張していた。 自分の家のはずなのに、知らない空間みたいだ。 この状況で普通に振舞える、うちの母と弟はある意味大物ではないだろうか・・・。
「くっ、これで勝ったと思わない事ナリ! 今度は絶対に負けないナリ!」
惚れ惚れするような捨て台詞を吐いて、アキラ君がリビングのテーブルに来た。
「お母さんっ、これどういう状況なの!?」
「えっ、かんなちゃんのお友達って聞いたから、お家で待っていてもらったんだけど、違うの?」
「かんなちゃん!? 私達友達じゃないの!? あんなにデスアイランドの撮影で仲が良かったのに!?」
今度は、千世子ちゃんがシリアスなボケをかました。 千世子ちゃんってこんなふうにボケるんだ。 こんな千世子ちゃんは、VTuberの放送でしか観た事が無かったから、生で見るとすっごく新鮮だった。
「デスアイランドの撮影って言っても、ほとんどモブの私と主役の千世子ちゃんが友達になれる訳が無いじゃない! そりゃ、景ちゃんとは仲良くなって連絡先を交換したし、たまにLinaで話しているけど・・・。」
「そんなっ、酷いわ! デスアイランドではあんなに仲良くしてくれて、ずっ友とか言ってくれたのに!!」
そう言うと、千世子ちゃんは美しい瞳から綺麗に一筋の涙をこぼした。
「あ―――っ。お姉ちゃんが泣かした! いけないんだ!!」
弟が私を非難する。 いや、ずっ友とか言った記憶が無いし。 でもこの状況を周りから見ると、どう考えても悪いのは私に見える。 私を一瞬で追い込んだトップ女優の演技力に戦慄した。
「さて、茶番はこのぐらいにして、僕もシフォンケーキ食べたいよ。」
「そうね。すごく美味しいわよ。コーヒーとの相性は抜群よ。」
「僕は紅茶党だから、コーヒーの良さはわからないな。 あっ、お母さん、ミルクありますか? ケーキに牛乳は最高なんですよね。」
「もう、紅茶党ですら無いじゃない。」
「午後に紅茶なんて飲んじゃうと、目がギンギンになって眠れなくなっちゃうよ。」
「相変わらずお子様ね。」
千世子ちゃんは、ケロって泣き止んでいた。 そして、アキラ君の千世子ちゃんへの雑な扱いに驚いた。
「お父さんは何時ごろに戻ってくるの?」
「いつも、夜の7時頃には戻ってきますけど・・・。」
「それじゃ、このまま夕ご飯をご馳走になって、それから家族会議かな。」
「もちろん、今日のお夕飯は腕によりをかけてご馳走するから、楽しみにしてね!」
ずうずうしく夕食まで要求するアキラ君。 それに対して、お母さんは、すごくやる気みたいだ。
その夜に、お父さんが帰ってくると、超有名人の二人を見て固まっていた。 良かった。 お父さんは正常みたいだ。 普通そうだよね。 父親に癒しを感じるとは思わなかった。
家族 + アキラ君 + 千世子ちゃんで夕食のコロッケを食べると、その後に驚愕の家族会議が始まるのであった。
ちょっと長くなっちゃったので、2回に分けます。 続きは明日投稿します。