星アキラは自由に生きたいっ   作:Magical forest

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新名夏と木梨かんなのその後

 

-------------新名夏視点-------------

 

小春日和の秋の日の午後、私とかんなはケーキバイキングでやけ食いをしていた。

 

「うううっ。 まさか弟に先を越されるとは。」

 

「まさかあの姉の陰に隠れて引っ込み思案の妹がこんなに大胆だったとは・・・。」

 

私達がなぜこんなやけ食いをしているのかは、ちょっと前に発生した出来事のためだ。

 

スターズに入った後の私達の仕事はとても順調だった。 

 

イカ娘でブレイクした私達は、そのままの勢いでスプラトゥーンのイカ娘コラボCMへの出演が決まった。 それでアキラ君がそのままメガホンを取ってくれて、CMデビュー。 もっともこれは私達の出演料よりも監督さん達の出演料の方がはるかに高い気がするんだけど・・・。

 

Youtubeチャンネルでのコラボも普通にしているから、その辺もコミコミの契約だと思う。

 

そしてCMの評判も良かった事で、私達の仕事の方向性なんだけど、アキラ君は、「ここまで来たらお笑いで天下を取るんや! ワイが社長になったらスターズを最高のお笑い軍団に育て上げるで!!」とかやっていたら、後ろからハリセンを持ったアリサさんが来て、アキラ君の後頭部を強打した後に、鬼の形相でずるずると社長室まで引きずられて行ってしまった。

 

その後、アリサさんが戻って来て、あんな事があった後に優しい笑顔を浮かべて、「アキラが変な方向で仕事を入れてごめんなさいね。 さっきアキラとOHANASHIして、貴方たちのプロモーションは私の方で引き受ける事にしました。 ちゃんと良い仕事ができるようにがんばるのでよろしくね。」とニコニコしながら言ってくれた。 さっきの鬼の形相を知っているだけに、その雰囲気を微塵も感じさせないアリサさんの表情に、二人でドン引きした。

 

そんな、アリサさんが取って来てくれた仕事はなんと、化粧品のCMだった。 私がキレイめのメイクで、かんなが可愛い系のメイク。 銀座の有名百貨店の化粧品売り場に私とかんなのポスターがでかでかと張り出された時には、二人で行ってポスターの前で記念撮影をしてしまったぐらいだった。

 

この仕事によって、私達の世間のイメージは大きく変わった。

 

アリサさん曰く「コメディしかできない女優と、コメディもできる女優は違います。 ここでイカ娘で付いた笑いのイメージから、綺麗な女の子としてのイメージのギャップを世間に見せつける事で、そのギャップの虜になる人間を増やすのと、仕事の幅を広げてもらいます。」との事だった。

 

流石、スターズ。 伝説的な女優である星アリサが後進育成のために立ち上げて、あっと言う間に業界大手にまで上り詰めた超有力芸能事務所。

 

前の事務所では絶対にこんな仕事なんて取って来れないし、取って来れたとしても、私にこの仕事をくれる事も無いだろう。 ブレークしたイカ娘のイメージそのままで、賞味期限が切れるまで使い潰された可能性すらある。 アリサさんはやり手の女社長って有名だったけれども、私達にまでこんな仕事を与えてくれる社長の手腕に驚愕した。

 

スターズと言えば、マネージメントが凄いという事でも有名だけれども、やっぱりマネージャ陣も凄かった。 ここの事務所の特徴は、三直(さんちょく)と呼ばれる、強力なマネージメント体制およびタレントのバックアップ体制だった。

 

新人であれば、マネージャーが一人で複数のタレントを見るのは他の事務所と変わらない。 ただ、ここがすごいのはタレント一人あたりで複数人のマネージャが付くことだった。 結果、タレントから見ると、自分に兼任ではあるけれども、ほぼ三人のマネージャが付く事になる。 その複数のマネージャ陣をさらに統括する統括マネージャが存在して、マネージャーのスケジュール管理を行っていた。

 

結果、休日が安定しない不規則な芸能人相手に、雑用係のようなきつい仕事であったマネージャという職業を、通常の労働条件として安定させる事に成功している。

 

この事務所の笑い話として、担当の子のコンサートに自分のマネージャが観客として来ていたみたいなのが普通にある。 ちゃんと労働時間を考えてマネージャのシフトが組まれているので、こういう普通では考えられないような事態が発生するのだ。 そしてこういう体制のため、マネージャさんの配置転換も容易であるらしいし、マネージャ個人の偏った考えでタレントを潰すような事もなく、タレントをチームで支えるのがスターズの特徴だ。

 

私も、数年のアイドル生活だったけれども、スターズのマネージャさんはバッチリとスーツを着こなして覇気ランランなので、すぐにわかる。 他の芸能事務所のような、長時間労働でどこかくたびれたマネージャさんとは違うので、ある程度この業界に居ると、見分けはすぐに付く。

 

他の事務所も真似したらいいのにって思うんだけど、業界の慣習やそもそもの人件費の面でとても真似できないらしい。 

 

そして、この強力なマネージャや組織によるタレントの育成がまた凄かった。 新人タレントを育成する事を命題としている芸能事務所なので、新人へのサポートが手厚い。 また、人材も豊富なので、過度にタレントに仕事を入れるような事も無かった。

 

だから、みんなスターズに入りたがるけど、入るのは非常に困難だ。 毎年開催される新人発掘オーディションは3万人以上の応募があるけど、例年契約できるのは一人だけである。 私もアキラ君と千世子ちゃんが来て直接スカウトされなければ、この事務所の敷居を跨ぐ事すらできなかったはずだ。 かんなも同じだと思う。

 

いや、かんなについては、意外に新人発掘オーディションで普通に入れるかもしれない。 彼女の演技力と柔軟さの才能は半端ない。 普通にオーディションに応募すれば受かりそうだ。 かんなの才能を見抜いたアキラ君や千世子ちゃんは流石だと思う。 そして、かんなを歯牙にもかけない夜凪景ってどれだけ化け物なのよ!

 

そんなイメージ戦略が功を奏したのか、なんと本郷監督の映画で私の主演が決まったのだ。 そして、かんなにも別の監督からオファーが来て、同じく映画の主演を務める事になっている。

 

今、民放ゴールデンタイムのバラエティ番組の仕事をしながら、二人で一生懸命レッスンをしている。

 

まさに順風満帆な芸能生活。 

 

アイドルを突然卒業させられた時では、全く考えられないような生活を送っていた。

 

そして、そんな変化は私達だけでは無くて、家族にも影響を与えている。

 

かんなの弟は高校への進学と同時にVTuberを始めてすごくブレイクしている。 VTuberの機材等はアキラ君におねだりして中古の機材をGETしたらしい。

 

かんなの弟さん、アキラ君におねだりできるとか強すぎない?

 

それで、VTuberのイラストだけれども、アキラ君から久乃木愛さんというイラストレイターを紹介してもらって、VTuberのアバターを作ってもらっていた。

 

久乃木愛さんも沢山の有名なVTuberのアバターを手掛けている人で、かなりの額だったらしく、かんなが弟の代わりにアバター代を出そうとしたんだけれども、アキラ君から断られて、弟さんのアキラ君への正式な借金となった。

 

アキラ君曰く「本気でVTuberをやるのであれば、借金は自分で返せるようになる必要がある。 ちゃんと自覚と責任をもって活動しなければいけない。」

 

との事で、その話を聞いた時になるほどなと思った。

 

それから、私とかんなの家族。 同じ芸能人の娘を持つ家族同士と言う事もあって、イカ娘以降で家族ぐるみのお付き合いをするようになって、母親同士でお互いに相談に乗り合ったり、週末は仕事で忙しい私達を尻目に家族で外食に行くことが多いらしい。

 

そして、私にも妹が居た。 私に似て美少女(自画自賛)で、アイドル活動をするアクティブな姉に隠れて、大人しい性格で引っ込み思案な子だったはずだけど・・・、どうもかんなの弟さんに一目惚れをして、アタックの末に付き合う事になったらしい。 奥手かと思っていたら、付き合うときは積極的だったとか、こんな所で戦国武将、新名家の血筋が発揮されたのだろうか?

 

私とかんながこの話を聞いた時は、全く意味不明だった。どうしてそうなるの?って思った。 そして私とかんなが、妹とかんなの弟さんに会った時にはもうラブラブだった。

 

こいつらは、私達が仕事で忙殺されている間に、今から3年間のラブラブリア充の高校生活を送るのだ!

 

その後、毎回、家族からは妹とかんなの弟のリア充報告と、夏も良い人が居ないの?とか言う理不尽なプレッシャーを受けまくっている。

 

私とかんなは、間違いなく芸能界で勝ち組であるはずなのに、互いの妹と弟に完全敗北を喫して、血の涙を流していた。 そんな家族からのリア充報告にキレた私とかんなは、ケーキバイキングに来てやけ食いをしているのだ。

 

かんながショートケーキをフォークで串刺しにして、一口で口の中に放り込みながら言う。

 

「かんなも良い人を探しなさいって、そんなの出来る訳ないでしょ! 女優なのよ! 女優! そんな軽はずみに付き合っていたらスキャンダルじゃないの!」

 

「夢にまで見た仕事が軌道に乗ってきた時期に、男性とお付き合いなんてできる訳無いでしょ! 本当にママは何を考えているのよ!」

 

家族に対する愚痴を言いながら私達はケーキを食べる。 おそらくこの後しばらくはダイエットで苦しむ事だろう。

 

そして数年後、晴れて大学を卒業した二人は、そのままゴールイン。 私とかんなの家族は親戚関係となり、かんなは私の事をお義姉さんと呼ぶようになるのであった。

 

当然結婚式で、独身の私達が再び血の涙を流した事は言うまでもない。

 




今回でイカ娘編は終了となります。 次回からは新展開になると思いますが、その前に、年末まで忙しいので、ペースを落として閑話を何本か投稿させていただく予定です。
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