星アキラは自由に生きたいっ 作:Magical forest
(武蔵野アニメーションの会議室で映画の概要について説明する柊雪)
「だいたい、こう言う感じで話が進んで行くんです。」
「世界的な大ヒットアニメである、走れケイティを制作する武蔵野アニメーション。 日々忙しく様々なアニメが制作されて行きます。」
(走れケイティのヒットによって、人員や設備が拡充されて活気が出ている武蔵野アニメーション内の風景。)
(大量に張られている走れケイティのポスターや各自の机に置かれているキャラクターグッズ、参考用の資料の山、制作進行のチャートなど。)
(原画が書かれる様子、再び作画監督に復帰した小笠原倫子の仕事風景と、撮影や制作進行、動画検査などの様子。)
(キャラクターデザインをする安原絵麻、CGを監督する藤堂美沙、脚本を書く今井みどり、監督業務をする宮森あおいの様子。)
(夜凪景、星アキラ、百城千世子、明神阿良也、坂木しずかなどによる走れケイティの音声収録の様子。)
「このような環境で走れケイティは制作されているのです。」
「さて、映画の概要もわかったことだし、ちょうどお昼だし、移動しましょうか。」
スマフォで時間を確認していた宮森さんがそう言うと、みんな席を立った。
(武蔵境の街を歩いて移動する6人。 武蔵野プレイスから見る街並み、すきっぷ通りのごちゃごちゃして活気のある商店街。武蔵境通り住宅街の風景)
「Yuki達は、街の洋食屋さんに到着します。」
「この洋食屋さんですか?」
「そう。 ここで奥の個室を借りているから食事をしながら打ち合わせをしましょう。」
「こんにちは。丸川さん。」
「こんにちは。みんなよく来たね。さあさあ、ゲストの方はすでにお待ちだよ。」
「ゲスト?」
首を傾げる柊雪。
(キッチンべそべその店の奥にある個室に移動する6人。 そこで百城千世子がコーヒーを飲みながら待機している。)
「千世子ちゃん!?」
「何? 雪ちゃん?」
「なんでここに居るの!?」
「そりゃ、私が演出なんだから、打ち合わせの席に出るに決まっているじゃない。」
「てっきり、現場の雰囲気でまたカメラアングルとか演出とかを決めるかと思ってた。」
「あんなの、アキラちゃんじゃないとできないわ。あれはちゃんと現場で演出の意図を汲み取った演技を即席で俳優にさせないとダメなのよ。 高度の柔軟性を維持しつつ臨機応変に対応してヒット映画を作れるなんて、アキラちゃんぐらいだわ。」
「それに合わせてカメラワークや演出をした千世子ちゃんも相当だと思うけれども。 監督椅子に座って、ぐでぐでと指示していたマスコットキャラにしか見えなかったけど、やっぱりアキラ君ってすごいんだ。」
「アキラちゃんをミーアキャットだと思ったら大間違いよ。 カピバラとかカモノハシとか、そのぐらいの認識を持つ必要があるわ。」
「その認識の差が分からないわ。 なんならミーアキャットの方が集団で強そう。 パンダぐらいの隠されたパワーがあるとか?」
「パンダは変な模様が付いたただのクマじゃない。あんまり面白くないわ。」
「そう言えば、前にアキラ君もパンダについてそんな事を言っていたわね。スターズの俳優ってみんなリアリストなの?」
「大半の人間は、状況や置かれた立場によってリアリストになったり、ロマンチストになったり、オプティミストになったり、ペシミストになったりするわ。主義なんてものは、自分がどう考えるかによって自由に変わるものなのよ。 役者ならなおさらね。 ただ、私とアキラちゃんは演技の客観性を重視するから、リアリストが出る側面は強いわね。」
「なるほどね。 それで、演出としてシナリオの書き出しを手伝ってくれるの?」
「もちろんよ。 その前にお昼ご飯にしましょう。 このお店はカレーが美味しいらしいわ。」
「そうなの。 ここは、武蔵野アニメーションの元社長さんがやっているお店で、カレーが本当に美味しいのよ。 私はハンバーグカレーで!」
「私はエビフライカレー」
「ハンバーグ定食で。」
「私は白身魚のフライ定食にするわ。」
「うーん。エビフライカレーで。」
「目玉焼きカレーをお願いするわ。」
「ナポリタンスパゲッティーをお願いします。」
「オムライスをお願いするっす。」
「はい。わかりました。」
「この店のシェフの名前はMasato Marukawa。 武蔵野アニメーションの元社長で、今はリタイアして洋食店を営んでいます。」
(キッチンにカメラが入り、調理風景を映す。)
(ハンバーグの種を冷蔵庫から取り出して、フライパンで焼く。 表面に跳ねる肉汁と共に美味しそうに焼き上がって行くハンバーグ。)
(玉ねぎ、ウィンナー、ピーマンが炒められて、ケチャップを加えられ、ケチャップだけ炒められて、酸味を飛ばしながら甘さが凝縮したナポリタンのソースに加えられるスパゲッティ。)
(フライヤーで、黄金色に透き通った油の中で揚げられるエビフライや白身魚のフライ。)
(油を敷いたフライパンの上に溶き卵が入り、絶妙な半熟卵の上に載せて包まれるチキンライス。)
(混ぜられながら、寸胴鍋の中でブクブクとスパイスと具材が沸き立ってスパイシーな香りと湯気を放つカレー。)
(手早く料理されて行って、盛り付けられて行き、みんなのご飯が出来上がって行く。)
「洋食と言われる西洋料理をベースに、日本で独自に発展した料理が手際よく作られて行きます。」
「できました。こちらをどうぞ。」
「ありがとうございます。」
(テーブルの上に沢山並べられる料理達。)
「うわっ。美味しそう。」
「温かいうちに食べましょう。」
「「「「「「いただきます。」」」」」」
「カレーがちょっと辛くて病みつきなりそう。 それにエビフライもサクサクしていて美味しい。」
「目玉焼きカレーも、卵がスパイスをまろやかにして美味しいわね。」
「前まではここでお昼を食べるなんて月に1度あるかないかだったけれども、今は収入が上がって普通にお昼の選択肢として選べるようになって、本当に幸運だわ。 星アキラ様々ね。」
「普通に、値段を見る事も無く、ここで料理を注文しているのが怖いわ。」
ナポリタンスパゲッティーを食べる絵麻さんが言った。
「とりあえず、好きな事をしてちゃんと収入があるのは良いことっす。そんな辛気臭い顔しないで、今は美味しく食べるっすよ。」
みどりさんが言った。
(みんな美味しそうにおしゃべりをしながら、洋食を食べる様子)
「さてと、食事も終わったことだし、本編に行きますか。」
「Yukiが映画のストーリと場面での撮りたい内容を説明し、Chiyokoがその場面での演出を提案して、MisaとShizukaが意見を言って、Aoiがまとめて、シーンのイメージを絵コンテとしてEmaが書き起こし、Midoriがシナリオの詳細を落とし込んでいきます。」
「すごい。あっと言う間にシナリオが出来て行く。 それに絵麻さんの絵コンテを書く速度がやばい!」
「銀河鉄道の夜の舞台を観た後あたりから、絵麻っちの絵を描く速度がすごく上がったわよね。 それに余計な線を全く描かなくなったし。」
「昔はフォロワーの絵描きさんも絵麻っちのイラストを真似るのは難しくなかったみたいなんだけど、最近のイラストは難しくてオリジナルと同じように描くというのは無理って言っている人を結構見るわね。簡単な画だけれども、真似ができないって。」
「もし、雪ちゃんの映画がヒットしたら、この絵麻っちの絵コンテは将来的にすごい額になりそうっす。」
「わからないわよ? 雪ちゃんの映画が大コケして、絵麻っちの絵コンテだけ素晴らしいって評価になるかもしれないし。」
「あおいさん! やめて! プレッシャーをかけないで!!」
「今でも絵麻っち直筆の原画は価値があるし、最近はアニメコレクター以外にも、現代美術専門のコレクターがポップアートとして欲しがるのよね。」
「おそらく、この絵麻ママ直筆の世界に1冊だけのシナリオ絵コンテは、未来には何十億の価値になるかもしれないわね。 もしかしたら、ピカソやゴッホなどと同じように人類の遺産になるかも。」
「流石にそれは言いすぎよ千世子ちゃん。」
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「みんな集まって和気あいあいという雰囲気で夜には絵コンテ入りのシナリオ本が完成します。」
「まじで絵麻っちの絵コンテの速度がやばいわね。ケイティでもおいちゃんの代わりに絵麻っちが絵コンテを書いてあげたら?」
「だめよ! 絵麻っちのお給料を考えると、私の下請けなんて絶対にやらせられないわ! 今でもキャラクターデザインのお金はうちじゃなくて、スターズが直接出しているのに、今の絵麻っちをムサニで直接雇う場合の、給料が怖すぎるわよ。」
「そういえば、私のシナリオ原稿料とスタッフの給料もスターズから出ているっす。スターズはまじでリッチっす。そしてムサニよりもはるかに社会的信用度が高いと言う・・・。」
「大丈夫よ! 今はうちも走れ!ケイティで持ち直して、有望アニメスタジオの一角に名を上げてきたんだから!」
「それ、アキラ君に見放されたら、一巻の終わりじゃないの?」
「やめて! 疲れている時にたまにその悪夢を見るんだから!」
「うわぁ、おいちゃんも大変ね。」
「アキラ君なら大丈夫よ。 むしろケイティが赤字になっても喜ぶかもしれないわよ?」
「何それ?」
「アキラ君にムサニが買収されちゃう? でも、それはそれでいいかも・・・。」
(ははははっ・・・。 あの珍獣本人は、実は赤字を出して欲しいと思っているのよね・・・。)
ついにYukiはシナリオが完成しました。映画の準備は着実に進んでいます。