星アキラは自由に生きたいっ   作:Magical forest

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I want to make my movie. その5

-------------柊雪視点-------------

 

(空港から降り立つ柊雪)

 

「ミスターX。 着いて来たけどここはどこなの?」

 

「ここはイリノイ州シカゴ。 君の映画の舞台となる街だ。」

 

「ええええええっ―――――――――――――――――――――っ!!!!!!」

 

「ミスターXによって、シカゴに連れ去られたYuki。 見知らぬ街でYukiは無事に映画を撮影する事ができるのでしょうか?」

 

「雪君、ここの近くにあるエバンストンという街に君が住む家が用意してある。住所はこの紙に書いてある。それでは健闘を祈るぞ。 猿君。」

 

「だから、私は柊雪です!!」

 

そう言って、ミスターXは人混みに紛れてどこかへ行ってしまう。

 

「いや、女性を拉致して、異国の空港にほっぽりだすとか何を考えているのよ!」

 

私は怒るものの、もはやどうしようもない。幸いローミング設定をONにしてスマフォは普通に使えた。

 

私は、スマフォで経路を探索してシカゴのオヘア空港からエバンストンへ向かう道を検索する。幸い公共交通機関で繋がっているようだ。

 

「Yukiは空港ターミナル内でCTA(シカゴ交通局)のブルーラインの列車に乗って、一旦ダウンタウンで降りると今度はパープルラインに乗り換えてエバンストンを目指します。」

 

(パープルラインから見えるミシガン湖と全米第三の巨大都市シカゴ中心部の巨大なビル群の風景、そこから郊外の電車に乗って、徐々に緑が広がって行く様子)

 

私はエバンストンの街に降り立つと、街を見渡す。 緑と建物が調和した綺麗な都市だった。 

 

幅広い道路に、広大な芝生。 そして整然と並ぶ沢山の街路樹。 特に歩道から建物の間に広い芝生が広がっているのが日本と違った外国の文化を感じさせる。 ミスターXから指定された家は、エバンストン駅から東側のミシガン湖に近いエリアにあった。

 

(エバンストン周辺の街の風景、静かでのどかなアメリカの住宅街)

 

「思ったよりもはるかにのどかね。 アメリカって治安が悪くて、ちょっと歩くとそこかしこから銃声が鳴り響くかと思っていたわ。」

 

私はアメリカ人が聞いたら、ぶちキレるような事を考えながら街を歩いた。

 

スマフォで調べた所によると、エバンストンというのは、ノースウェストン大学があって古くから栄える街で、全米屈指の高級住宅街であるらしい。 もしかしたら今から行く家も、ものすごい高級住宅が用意されているかもしれない。

 

私はミスターXに悪態をつきつつも、日本とは全く違う街の風景に心を躍らせていた。見るものがみんな新鮮に見える子供の頃のような感覚だ。

 

「YukiはミスターXに指定された家を目指して住宅街を歩きます。」

 

「ええええっ~~~! ここなの~!!」

 

そうして、ミスターXから指定された家に着くと私は絶望した。

 

高級住宅の隙間に建つ趣(おもむき)がある家。 いや、趣とかそんな言葉で言っているけれども、正直に言おう。 ボロ屋だった。 おんぼろ家屋。 元は芝生と思われていた庭も、雑草ぼうぼう。 外壁は長年洗っていないのが丸わかりである。

 

「ここ、高級住宅街だよね? 亀有の下町にあってもボロくて目立つだろうに、よくこんなにボロくて周りの人が取り壊さなかったわよね。」

 

そういえば、エバンストンは非常に古くからある街だった。 この家は幽霊が出る家とか、取り壊そうとすると祟りが起こるとかで放置されているのかもしれない。

 

「YukiはミスターXにもらった鍵を使って、このおんぼろの家に入ります。」

 

「こんにちは~。誰も居ないですよね?」

 

私は恐る恐る、玄関を開けて家の中に入る。 家の中はほとんど何もなかったけれども、意外な事に手入れは行き届いていた。

 

私は台所やリビングなどを見て回った後に、二階に上がってベットルームを見た。 ベットルームにはチープだが、新品のマットレスと布団が置いてあった。 良かった。 流石に冷たい床の上で夜を過ごす事は無さそうだ。

 

台所には少数の鍋やわずかな調理器具もあったし、最低限の生活は出来そうだ。

 

そう言って、ベッドの壁を見ると、不自然な膨らみがあるのに気が付いた。

 

私はその膨らみに違づくと、膨らみが不自然に動いたような気がした。

 

「だっ、誰!?」

 

「忍者ハットリカンゾウただ今参上!! 拙者に気が付くとはケンイチ氏もなかなかやるでござるな。」

 

「きゃ――――――――っ。」

 

膨らんでいた布が取っ払われて、中からのっぺりしたお面を被った青い忍者が現れた。 私は思わず悲鳴を上げた。

 

「ケンイチ氏、シカゴまでよくぞ参られた。 ここがケンイチ氏の暮らす家でござる。ニンニン。」

 

「壁から突然現れた謎の忍者、彼は一体何者なのでしょうか!?」

 

「ちょっ、ちょっと待って! 今、事態を飲み込んでいるから!」

 

「了解したで奉った。 ちょっと待つでござる。」

 

「日本語ぐちゃぐちゃね。 いいわ。 ちょっと説明してくれる?」

 

「了解でござる。 ケンイチ氏。」

 

「あと、私はケンイチじゃなくて、柊雪よ!」

 

「承知つかまつりましてござる。ニンニン。」

 

「もう突っ込まないわ。それで、こんな所で何をしているの?」

 

「ミスターXからの依頼で、雪氏に連絡するために来たでござる。」

 

「それで? 何の連絡なの?」

 

「まず、この家でござるが、雪氏の物でござる。 すでに所有権等も雪氏に移転してあるので、好きに使って良いでござる。」

 

「わーお。太っ腹というか、不良物件というか、まさかこの歳で、異国の地で一国一城の主になるとは思わなかったわ。」

 

「ここは、家であって、城ではござらんが。」

 

「ツッコミを入れる所はそこなの? もっと別にツッコム部分があると思うんだけど。 それで、この私はこのボロ家で何をすればいいの?」

 

「好きに暮らすと良いでござる。」

 

「はぁっ!?」

 

「でもスマフォや財布などは没収するでござる。 雪氏はがんばってお金を稼ぐでござる。 あと、雪氏の生活は、ここにあるゴープロのアクションカメラで自分で撮影するでござる。」

 

「Are you absolutely sure? (マジで言ってんの?)」

 

「sure. (その通りでござる。) しばらくスマフォやPC、インターネットなどの情報機器は禁止でござる。ニンニン。」

 

「スマフォや元手の資金が無いのに、どうやってお金を稼ぐのよ!!」

 

「そこは雪氏の采配でなんとかするでござる。 それでは拙者は雪氏の財布とスマフォを回収し終わったので、立ち去るでござる。」

 

「えっ!?」

 

そう言って、私のポケットを漁ると、本当にスマフォと財布がなくなっていた。

 

「いつの間に!?」

 

「また、連絡があれば来るでござる。」

 

「泥棒! 女性の物を盗むなんて最低! あなたもう来なくてもいいから!」

 

「拙者がクビになると、別の人になるのでござるが、良いでござるか?」

 

「別の人って誰よ?」

 

「次の人は良く笑うセールスマンの人でござる。御仁であれば、雪氏の映画撮影も順調に行くかもしれないでござるな。」

 

「え゛っ、その人って、もしかして喪黒福造って名前じゃない?」

 

「良く知っているでござるな。その御仁でござる。あの御仁であれば、きっと雪氏の映画も順調に撮影できるでござる。」

 

「途中の撮影は順調になるかもしれないけど、私が慢心して欲を出して、最後は明らかにバッドエンドのオチじゃないの!! ドキュメンタリー的にはすごく面白いかもしれないけれども、私の人生が終わっちゃうわ! 変えなくてもいいからっ。 次回もよろしくお願いします!」

 

私は必死にハットリ君に懇願した。

 

「なにか必死でござるな。 了解したでござる。 では、さらばでござる! ニンニン。」

 

そう言って、忍者ハットリ君は窓の外にかけられたロープから下に降りて去って行った。 あんな所にロープが掛かっていたのか。 明らかにセキュリティ上やばいので、後で撤去しないと・・・。

 

翌日、お金が無くてお腹を空かした私は、庭に何か食べれる草や果物が生えていないかを物色していると、いくつかカメラが設置されている事に気が付いた。

 

「あっ、私のこの生活もドキュメンタリーのコンテンツになるんだ・・・。」

 

てっきり、渡されたゴープロの映像だけかと思っていた。

 

私の脳裏に、武蔵野アニメーションで藤堂美沙さんから言われた『進め!電波少年』の文字が浮かぶ。

 

「「アメリカのボロ屋に無一文の映画監督を放り込んでみた~!」」

 

電波少年の司会をするお笑いタレントが企画を読み上げる声が幻聴として聞こえる。

 

「なんでもありの昭和の時代ですら、ものすごい物議を呼んだのに、今の時代にこんなのやる? 普通?」

 

私は頭痛を覚えて、また寝たくなったけども、そうすると餓死寸前になって、最後は栄養失調で救急病院に搬送されるまでがセットでドキュメンタリー化されるのが目に見えているので、なんとか踏ん張って異国での無一文生活を始めることにした。

 

あの番組をオマージュするのであれば、今後、生易しい手助けなんて全く無いはずだ。生死に影響するまで助けてくれない事は察せられる。

 

「私は映画を撮りたいだけなのに、どうしてこうなっちゃうの。」

 

私はブツブツ文句を言いながらも、反面、異国の地でサバイバル生活が始まった事に気が付いて、ハングリー精神と血が沸き立つのを感じる。

 

見知らぬ環境、無一文の危機的状況を前に、私の奥底に眠る生存本能が刺激されて強い柊雪が目覚めていた。 私の精神は高揚してハイになっている。

 

庭にスイバが咲いているのを見つけた。 とりあえずこれをおひたしにして食べればろくにカロリーは取れないが、腹は膨れるだろう。 そうしたら周りを見て回って、私が助かる道を探そう。 とりあえず、近所のミシガン湖あたりで野生生物を採取して栄養を取るか。

 

都会であっても、いや都会だからこそ、野食で競合する動物やライバルが居ない分だけサバイバル生活は簡単だ。 スーパーで美味しい野菜が手に入るのに、誰も河原に生えているまずい野草なんて取って食べたりはしない。 

 

こんなサバイバル生活は墨字さんの撮影を考えたら日常茶飯事だ。 あのアホ監督に着いて行って、女である事を隠して戦場でアシスタントとしてカメラを回している事を考えたら、死ぬほど楽でイージーな生活だ。

 

異国で困難な生活に放り込まれたせいか、日本では絶対に目覚めないもう一人の柊雪が顔を出してきた。

 

見てろよ、あのクソガキ珍獣とミスターX! 私は絶対に生き抜いてやる! 私は据わった目で隠しカメラを睨みつけた。

 

「突然始まったYukiの無一文生活。 果たして彼女は無事にアメリカで生活する事ができるのでしょうか?」

 




ちなみに、今回現れた忍者ハットリくんは、実写版忍者ハットリくんでググってもらえると顔がわかると思います。白黒の方ですw(グロ注意)

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