星アキラは自由に生きたいっ 作:Magical forest
-------------柊雪視点-------------
撮影の仕事の後に阿良也君と待ち合わせをして、阿良也君を私の家に招いた。
「ふーん。ここが雪の家なんだ。超ボロ屋だね。想像以上だよ。」
「私も最初はそう思ったのだけど、住めば都よ。 それに撮影の舞台はこの家にするつもりなの。 だからわざとボロ屋のまま残しているのよ。」
「なるほどね。 ところで腹が減ったから何かご馳走してよ。」
「わかったわ。」
私は、近所の空き地に生えていたアメリカボウフウ(パースニップ)の根を剥いて、砂糖を入れてグラッセにした。
それから、近所の釣り人にもらったブラックバスをフィッシングナイフで捌いて、塩コショウの後に小麦粉をまぶして、フライパンでムニエルを作る。
近所に生えているミツバグサ、シャク、ルッコラ、スイバ、ルリジサなどを薄く刻んでヨーグルトとビネガーを加えてグリーンソースを作って、ブラックバスのムニエルにかける。
それから、下茹でしてあったセミの幼虫に衣を付けて油で揚げる。朝起きて、ソフトシェルと呼ばれる脱皮したての柔らかいセミを取ってすぐに茹でたものだ。
パスタを茹でて、近所に生えた雑草扱いのワイルドガーリックを葉っぱのまま、近所の人の家庭菜園でもらった唐辛子と一緒に刻んで、オリーブオイルに入れてじっくりとオリーブオイルにエキスを染み出させたら、パスタのゆで汁を入れて、さらにゆで上がったパスタを入れて塩コショウで味を調えて、ペペロンチーノを作る。
私は料理ができたら、阿良也君が待っているリビングに持って行く。
「さあ、出来上がったわよ。 近所の野食で作った格安ディナーよ。」
「ふーん。灰汁があって苦い気もするけれども、結構美味いね。でもなんか、後味がそこはかとなく雑味がある気がするんだけど。」
「それはそうよね。 市販の野菜は品種改良を行って、こう言った雑味を減らして美味しくしている訳だから、自然の味って言っても、商売ベースで成り立つような現代人にとって美味しい味と言うのは意外に難しいわね。」
「なるほどね。でもこの柔らかい木の実?のフライは美味しいな。ソラマメというかナッツと言うか・・・。」
「ああ、それ? セミのから揚げよ。ソフトシェルって言って羽化したての柔らかいセミを揚げたものよ。」
そう言うと、阿良也君は、ブーッっとセミのから揚げを吹き出す。
「汚いなぁ。ご馳走なのに。」
「お前、俺が虫がダメなのを知っていて出しただろ!!」
「ええ。そうよ。美味しかったでしょ? 木の実の味がするのも当然ね。 だってずっと土の中で木の樹液だけを吸って生きてきたんだから。だから何を食べているか良く分らない、その辺の魚なんかよりもずっと美味しくて安全な食べ物よ。」
「あんなその辺でミンミンしているのが美味しいとか、すごくヤダ。」
「エビやカニは食べれるくせに、陸上の甲殻類はダメとか意味がわからないわね。 第一、あの家で虫を食べられないのはアリサさんと阿良也君ぐらいよ。 いい加減、虫ぐらい馴染んだら?」
「俺はあいつらとは違う!」
「まるで極悪一家に生まれた正義感の強い息子キャラみたいなセリフね。 阿良也君もあの中では相当な非常識人に分類されるんだけど。」
「雪? お前、実は自分は常識人とか思っていないか?」
「当たり前でしょ? 私は一般人よ?」
「一般人が虫なんて食べるか! おまえも相当毒されているぞ。」
「アキラ君達にちょっと毒されているだけで私は普通の常識人よ!」
「その発想がすでにヤバい。」
「まぁ、いいわ。 私があの中で常識人なのは疑いの無い事実ですもの。」
「この女、マジでやべぇ。 自覚が無いのが一番やべぇ。 それで、どうしてこんな変な食材ばっかり使っているんだ? これだったらホームレスの方がまだまともな食事をしているぞ。 食べるものに困っても虫なんて食べていないし。」
「私もアルバイトもできて普通のスーパーの食材に切り替えようとしたら、ドキュメンタリーのディレクターが来て、是非このままの食生活を続けてくれって懇願されて、続けているだけよ。 流石に油や調味料、小麦粉とかパスタとかは普通にスーパーで買っているわ。 それ以外はその辺に生えている食材とか、ミシガン湖で知り合った釣り人のおじさんとかにもらっているけれども。」
「まっ、まぁ、確かに取れ高は凄そうだからな。 ディレクターには、雪が一般人の皮を被ったヤバイやつだって事は完全にバレているんだな・・・。」
「阿良也君が動揺するとか、珍しいわね。 それで、どうしてあんな所でホームレスなんてやっていたの?」
「雪がシカゴを舞台にするって言うから、俺の役は両親が死んで行き場の無くなった兄の役だったし、とりあえずホームレス生活でシカゴに慣れる事にした。 大体2月前からホームレスを続けていたけど、だいぶ街に馴染んだな。」
「ホームレスでどうやって稼いでいたの? まさかボランティアの配給とかを使っていないわよね?」
「流石にボランティアの配給を使うのは気が引けたから、パントマイムや大道芸をしてお金を稼いでいたぞ。」
「良かったわ。 役作りでボランティアで出される食事とかを食べていたら後で問題になりそうですもの。なら阿良也君は役作りOKなんだ。」
「そうだな。それにアキラや千世子、景なんかも場所は知らないけれどもすでにシカゴ入りをして役作りしているらしいぞ。」
「そうなのね。私が映画の舞台にシカゴを選ぶとは限らなかったのに、みんな準備してくれていたんだ・・・。」
私はアキラ君達出演者の献身に感謝した。
「そういう訳だから、そろそろみんなの準備も整うと思うぞ。 あと、飯は美味しかった。セミ以外はな。」
「ありがとう阿良也君。でもセミが一番美味しいからそこは認めなさい。」
「やだ。」
そう言って、阿良也君は家から去って行った。
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翌日、私は大学行こうと準備をしていると、家の前にリムジンが止まって中から人が降りてきた。
「フッフッフッ・・。猿君。大分シカゴでの生活を満喫しているようだね。」
「ミスターX、またあなたなの? あと、私の名前は柊雪なんだけど、ハットリ君といい、なんでみんな私の名前を間違えるのよ。」
「雪君、私が見込んだ通り、やはり君は貧乏生活に耐性がある人間のようだ。しかし、最近はそんな貧乏生活も軌道に乗っていて面白くないのではないかね?」
「いえ、十分面白くて充実しているので大丈夫です。」
「そんな毎日を退屈している雪君を、私の闇のゴルフ組織で援助してエキセントリックな毎日を過ごせるようにしてあげようと言うのだ。」
「結構です!」
「フッフッフッ。この私の援助を何度も袖にするとは。しかし、これを見て何とも思わないのかね?」
そう言って、ミスターXはスマフォを柊雪に渡す。そこには、どこかの工場に捕らえられて、ドラム缶のようなロボットに詰め込まれようとする阿良也が映っている。
「雪、ミスターXに捕まってしまって、ゴルフサイボーグに改造されそうなんだ!! このままじゃ機械人間にされてしまう! 助けてくれ!!」(世界有数の舞台俳優による迫真の演技)
ドラム缶の本体に、明らかに洗濯機かなんかのホースをメタリックに塗装したチューブ状の手とただの棒状の足。昭和の映画でもこんなにひどい造形のロボットは観た事が無い。
「フッフッフッ・・・。 明神阿良也を私のゴルフロボに組み込めば強力な闇のロボゴルファーになる事は明白。 いずれは人間も機械に支配されてしまうかもな。」
「それはひょっとしてギャグで言っているの?」
「フッフッフッ。このまま明神阿良也がゴルフサイボーグに改造されるのをみすみす見逃すような雪君ではあるまい。」
「逆に、このまま放っといてどうなるのか見てみたいけれども、わかったわ。 ミスターXに着いて行くわ。」
「やはり君は友達思いな人間らしい。義理堅い人間は好きだぞ雪君。フッフッフッ。」
「いつもながらツッコミ所が多すぎて疲れたわ。」
「またも現れたミスターXは、Yukiをどこに連れて行くのでしょうか?」