星アキラは自由に生きたいっ   作:Magical forest

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朝野市子は映画を観る5

 

家の維持や小説がなかなか採用されなくて悩むエマと、街角での演奏が人々に受け入れられなくて悩むイーファの二人。

 

誰しもが抱える、青年期の悩み。 なりたい自分と現実とのギャップ、自分の能力を信じる心と、能力に限界を感じて不安になる心。

 

こういった部分の心情を上手く感じさせる芝居と、心の不安を映し出すようなカメラワーク、そしてその先に見えるかすかな未来への希望を示すような、かすかな光の筋。

 

みんな成長する際に抱える大小の悩みに対する心情や情景が、クリアにスクリーンに映し出される。

 

この心情を描き出す絵作りは雪のもので、それをアーティスティックに映し出すカメラワークは千世子ちゃんかな。

 

イカ娘でアキラ君と千世子ちゃんが組んだ時には、ライブ感が溢れるカメラワークと絵作りだったけど、この二人が組むと、こんなに繊細でアーティスティックな絵作りになるのね。

 

雪は、実生活はわりと豪快だけど、自分で作る映像はけっこう芸術家肌なのよね。

 

本当に繊細な芝居。 この裏で、焼き芋は濡れた新聞紙で包む派か、そのまま焼く派か、アルミホイルで包む派か、新聞紙アルミホイル両方派の間で壮絶なバトルが展開されて、みんなで夕食のおかずをかけて、焼き芋を焼いて検証していたとは思えないほどの、触ったら壊れてしまうような薄いガラス細工のような心情を映す芝居。

 

・・・同一人物よね? こいつら?

 

確かこの時は、みんな焼き芋でお腹いっぱいになって、結局夕食のおかずは不要になったんだっけ? それで、余った焼き芋を魔改造して作ったスイートポテトがエマのおやつとしてこのシーンの机の上に置かれている。

 

あれだけ焼き芋の焼き方で大騒ぎしていたのに、最終的には焼き芋に飽きて、

スイートポテト(゚д゚)ウマー になったのは本当に草生えたわ。 さらにその裏でこんなシリアスなシーンを撮影していたとか、ヤバすぎて大草原よ。

 

ふと隣の和葉を見ると映画の画面を食い入るように映画を見ている。 うーん。つまらなそうにしていたら、まだ精神的なショックは小さいと思うんだけど、これは完全に魅入られているわね。

 

映画は今の段階ではまだ序盤だから、「当たらなければどうと言う事は無い。」とか、「モビルスーツの性能が戦力の決定的な差ではない事を教えてやる。」ぐらいのセリフを吐ける状態かと予想していたけど、すでにそんな余裕は無いみたい。

 

王賀美陸本人なら、ア・バオア・クーでガンダムに胴体を破壊されて、ジオングの頭だけになった状態でも、自信満々に同じセリフを吐けると思うんだけど、和葉はそこまで突き抜ける事はできないみたいね。

 

そもそも、和葉の尊大な態度は、自分の高い感受性を守るための防衛本能でもあるのだ。

 

和葉は我が道を行くけど感受性が低いわけではない。 むしろ逆に感受性は非常に高い。 俺様で周りに合わせないのは、感受性の高い自分の心を守るためにバランスを取る意味で、発展した和葉の性格だしね。

 

だから、和葉は演じると、俺様の性格を脱ぎ捨てて素晴らしい演技をするので、周囲が放っておかないのだ。

 

和葉も超美人だから、結局、ああ言った性格になって変な摩擦を避ける必要があったのかもね。

 

でも、今の和葉は傲慢な性格を捨てて純粋に映画に魅入られている。 まだ阿良也君と景ちゃんが出てきていないんだけど、大丈夫かな?

 

と言っているそばから、阿良也君と景ちゃんが出てきた。

 

今回の阿良也君と景ちゃんの役柄は、兄妹で売れない大道芸人か。 こちらは二人とも日本人のままなのね。 って言うか、こいつらいい性格しているわね。 知的なボーボボとドンパッチとかやめてwww。 この二人、映画が壊れるか、壊れないかの絶妙なラインを狙って演技しているわね。

 

しかも、人類には早すぎる部分はちゃんと調整して、面白い部分だけハジケリストを演じているわね。 これは人類には無理www。 大爆笑不可避w。

 

エマやイーファと合流して、ストリートで大道芸とヴァイオリンのコラボで大量に儲けた喜びで、兄と妹で歓喜のダンスを踊って、イーファもそれに合わせてノリノリでカルメンを弾いている。 そして、それを見ているエマの目のハイライトが消えている構図が面白すぎる。

 

事情を知らない観客が、その謎の喜びダンスを見世物だと思って、お金を入れているし、とんでもないカオスね。

 

それに、この観客って、エキストラじゃなくて、明らかに本物の通りがかった通行人よね?

 

こいつら、こんな訳の分からない演技をNG無しの一発撮りで撮っているの!? 怖っ。 本当に演技で観客を騙しつつ、裏で本番の映画撮影とか高度すぎる。 私はこんな撮影は、絶対にやりたくないわ。

 

そして、阿良也君と景ちゃんは、主演の二人なんて全く気にせずに、演技力と面白さを前面に押し出して、全力でエマとイーファを喰おうとしているわね。

 

二人が演じる坂木兄妹の加入によって、映画が一気に華やかになっていく。

 

特に内面まで役柄の人物に変わる、メソッド演技主体の阿良也君と景ちゃんは、国籍を変えるみたいな演技は難しいけれども、その反面、内面や心情を映し出す演技は他の追随を許さない。

 

雪は、こういった内面の難しい役を演じさせるのではなくて、わざと底抜けに明るい兄妹を演じさせることで、千世子ちゃんとキアラちゃんが喰われないように、ハンディキャップを与えてバランスを取ろうとしているのかもしれないけど、この二人はそれをものともせずに、ハジケまくっている。

 

阿良也君も景ちゃんも、今まで内面を描き出すシリアスな役回りが多くて、こんな底抜けに明るい役なんてやった事が無いと思うんだけど、流石中身まで入れ替わる天才役者達。 マジで面白人間がインストールされている。 さらにそれが兄妹で息がぴったりだ。

 

あの演技のカリスマと言われる明神阿良也と、メソッド演技の天才女優である夜凪景に、こんなバカな役をオファーするのは雪が最初で最後じゃないだろうか。 ・・・いや、前の席の監督達、今まで見た事が無い明神阿良也と夜凪景の芝居に呆気に取られて、マジマジと画面を見つめている。

 

もしかして、監督さん達も明神阿良也と夜凪景の役の幅の広さが想像以上で驚いているの!?

 

これは、役の広さに驚いて、今後予想外の役でオファーをしてくる監督さん達も出て来そう。 確かに、元来のキャラクターと全く違う芝居を、スベらずに大爆笑でこなしているんだもの。 もしかして日本中の映画監督が、いやハリウッドの監督達ですら、二人の演技に注目するかもね。

 

でもちょっと待って! 二人の芝居はコミカルで、ものすごく面白くて、観客席から笑いが絶えないけど、対照的に常識人である、エマとイーファの存在感が急激に薄くなっていない?

 

これって大丈夫なの!? 天才バカボンとか、ガンダムSEED運命みたいに、途中で主演が入れ替わらないわよね!?

 





和葉「こんな映画館に居られるか! 私は自分の部屋で休ませてもらう!!」

市子「和葉、殺人犯がうろついているのだから、部屋で一人になると危ないわ!」

和葉「殺人犯かもしれない人と一緒に居る方が危ないわ! 私は部屋に戻ります!」

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翌日。

市子「和葉、こんな変わり果てた姿で・・・。 あれ?これはダイイング・メッセージ? なになに? カメレオン珍獣ゲロ天使? 何よこれ? 犯人の名前をそのまま書けばいいのに。」

アキラ「本当だよね。 これじゃ誰が犯人だかわからないよ。」

千世子「そうね。 昨日、この四人はみんな一緒に居たから犯人じゃないのはわかるけど・・・。」

景「そうですっ。私もみんなと一緒に居たから犯人は私達以外だと思います。」

阿良也「俺達以外だと、後は別の部屋に居たオフィスベリーのメンバーか。」

市子「こんなダイイングメッセージじゃ、天才探偵いちごちゃんでも意味不明よ。 暗号か何かかしら?」

アキラ「そうだよね。 ところで僕、コンデンスミルクを持っているんだけど。」

千世子「奇遇ね。 私も先割れスプーンがあるの。」

景「私も牛乳があります!」

阿良也「俺はショートケーキが食べたいな。」

市子「あれ? 何か悪寒が・・・。」
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