星アキラは自由に生きたいっ 作:Magical forest
イーファが街頭でデジモンの「Butter-Fly」や血界戦線の「シュガーソングとビターステップ」を弾きながら、坂木兄妹が大道芸を披露している。
心地よい。 私もデジモンを見ていたから、この曲はノリノリだ。 映画を観ている観客も、映像に映る現地の観客と合わせて、ノリノリで体を揺らしている。
状況が状況なら手拍子とかあるかもしれない。 もしかしたら、そのうち映画館では、イーファの弾く曲に合わせて手拍子とかするミームが流行るかもしれない。
しかし、阿良也君も景ちゃんも大道芸上手いわよね。 阿良也君は元々、大道芸をするイメージがあるけれども、景ちゃんもかなりイケている。 景ちゃんも運動神経が抜群だし、こう言った大道芸みたいなのと相性がいいのかもしれない。
特に阿良也君のパントマイムがすごい。 これは普段の演技の延長だろうけれども、特徴をよく捉えて観客から爆笑を誘っている。
ストリートの演奏と大道芸が、うまく行き始めて、みんなの表情が明るくなっている。
対照的に上手く行かないのは、エマだ。 いくつかの小説を書いて出版社に持ち込むけれども、いずれもダメ出しをもらって、採用してもらえる事は無かった。
周囲の人間がみんな成功している中で、自分だけが上手く行かない。
表情は明るく、気丈に振る舞うけれども、だんだんと落ち込んでいくエマ。
みんなが夢に進む中で、自分だけが取り残される不安と焦り。 こういう若い頃に抱く不安を千世子ちゃんは見事に演じている。
特に明るく振る舞っていながらも、要所要所で瞬間的に顔をのぞかせる、不安感やストレスを感じさせる芝居が上手い。 普段の天使な芝居とは全く逆の、不安な心を鏡のように映す芝居。
今までの千世子ちゃんは、どちらかと言うと、天使でスーパーガールと言う感じだったけど、この映画で千世子ちゃんの印象がまた一つ変わった。
そして、エマが限界にきて、エマとイーファは口喧嘩をしてしまう。
何もかもうまく行かなくて、自己嫌悪で自分の部屋の隅でうずくまるエマに対して、イーファが入ってくる。
「エマ、私がエマを助ける最高の魔法を見せてあげるわ。 だから必ず観に来て。」
そう言ってイーファはイギリス行きのチケットを渡して、レイラ・オリヴィエ国際コンクールを観に来るように言って、エマの家から去って行った。
かっけえ。 イーファ、マジでかっけえ。 マジ男らしい。
イーファは女性としての芝居をしながら、男らしさを全開にしてきた。 イーファが女らしさと男らしさが両方合わさって、独特のカッコ良さと、中性的な魅力が出ている。
この役は、未来永劫、星アキラ以外には絶対に演じることが出来ないという、そんな印象を抱かせるシーン。
私もイーファに惚れそう。 普段の星アキラとか言うクソガキ珍獣はいらないから、ずっとイーファで居てくれないかしら。
その後、イーファがエマの家を出て行き、その間もエマの葛藤が続いて行く。 そして迎えたコンクールの日。
空港への到着やコンクールの会場への入りなど、エマ視点で映画に映し出される。 大切な日に親友を応援できなかった葛藤と、激しい後悔がエマに見える。
そして、エマや坂木兄妹、イーファのおじいさん達もコンサート会場に入って、みんなが見守る中で、イーファが舞台に立つ。
私は舞台に立った、赤いドレスを着たイーファに見惚れた。
坂木兄妹が話していたけど、イーファの恰好は、紅の豚のポルコの飛行機である、サボイアS.21をイメージしたAラインドレス。 流線形でシュッとして、ワンポイントで白、緑、黄色があしらわれている所が素敵ね。 ドレスにしてはカラフルだけど、それが嫌味にならないようなアクセントだし、なによりも中性的な魅力を持つイーファに、このドレスが最高に似合っている。
デッキチェアに寝そべって、紅の豚の曲を弾くシーンも良かったけど、このドレスで舞台に立つシーンもすごく素敵だ。
イーファの人物像と生い立ちを知る序盤、オーバーリアクションとボケと笑いの中盤に対して、映画の後半になるにしたがって、イーファのヒーロー像というのが際立ってくる。
明らかに、女性であり、女らしさがある中で、紅の豚のポルコロッソや、カウボーイビバップのスパイク・スピーゲルのような、ハードボイルドに通じる格好良さがある。
いや、それよりも、彼女が最初に見たアニメである、ベルサイユの薔薇のオスカル・フランソワ・ド・ジャルジェが一番近いかもしれない。ヘブライ語で『神と剣』と言う名の男装の麗人。 今、舞台の上に立つ彼女は、透き通った刃のような美しさと強さを見せている。
そもそも、彼女は、男装すらしておらず、暴力や刃傷沙汰なんて全く無い、すごく平和な映画のはずなのに、ハードボイルドの主人公のような、強烈な生き方や意思を印象付ける芝居。
これは、男性も憧れるけれども、それ以上に世界中の女性がイーファに憧れそうだ。
後から思い返せば、私はイーファが舞台に立つこのシーンで、イーファが曲を演奏する前から彼女に囚われていた。
そして、ゆっくりと、イーファがヴァイオリンを構えて演奏を始める。
その瞬間に、私はこの映画が名作映画として、映画史に名を刻む瞬間を実際に目撃する事になるのであった。