星アキラは自由に生きたいっ 作:Magical forest
-------------柊雪視点-------------
ミスターXの騒動から数時間後、私はプライベートジェットでアラスカ上空に居た。
「アキラ君、このプライベートジェット、すごく高そうなんだけど、大丈夫なの?」
プライベートジェットの中で、星アキラ・モフモフパジャマを着て珍獣状態でリラックスしているアキラ君に聞いた。 ちなみに、ミスターXから解放された景ちゃんと千世子ちゃんが、ふざけてコンビニで買ったプチシュークリームを与えて餌付けしている。 マジで珍獣にしか見えん。
阿良也君はビールと焼き鳥を楽しんだ後にぐがーと寝ている。 こっちはマジでカイジだ。 阿良也君を見ていると、高価なプライベートジェットではなくて、どっかの特急かローカル電車あたりの光景にしか見えない。
「大丈夫ってどう言う事? ちゃんと米国と日本の型式証明を取っているし、別に整備費もケチっていないどころか一番高い整備費と、パイロットは女性だけど、身元が確かで腕が良い操縦士が法令を守って運用しているから、限りなく安全だと思うよ。 ・・・まぁ、メインパイロットは、元海軍でF/A-18のアグレッサー教官*1だった人だけど、決してエンジン爆発のフラグを立てたメーデー案件じゃないよ。 ホントダヨ。 でも、羽田でリットルとポンドを間違えて給油して燃料が少ないかも・・・。 上空で燃料切れになってグライダー状態で着陸したらごめんね。 この飛行機にアキラグライダーって名前が付くかも。 もう助からないゾ♡」
「そうじゃなくて、私がこんなに高そうな飛行機に乗って大丈夫なのって事。 普通の飛行機でも外国に行くのにファーストクラスで数百万はするのに、これ一人数千万はくだらないわよね?」
「いや、これ僕のプライベートジェットだから、もちろんパイロットの人件費と整備費や空港利用料は別途あるけど、燃料代だけを考えると11,000ガロン × $5/ガロン = $55,000で、これだけの人数を運んでも1ドル120円で660万円ぐらいだよ? むしろ全員分のファーストクラスを取るよりもはるかに安いよ?」
「なっ、何でアキラ君がプライベートジェットを持っているのよ!?」
「正確には、僕じゃなくてスターズ・アセット・マネジメントの名義だけど、使い道が無いお金がブクブクとあって思わず・・・。 そもそも、国外へ移動するのにプライベートジェットほど便利な装備は無いよ? 朝食が3ドルのマクドナルドですませているウォーキン・パフェットのじいちゃんが便利だって言うんだからガチだよ!」
「アキラ君って、そんなナリでセレブなのよね・・・。」
「もちろんだよ! 僕はハリウッドセレブだよ! 略してハリセレ。 けっして、コンビニの新作スイーツを毎日楽しみに待つただの珍獣ではなくて、高いセレブリティ―を持つ高級庶民である事を強く主張させてもらうよ!!」
「自分を上流階級とは言わないのね。」
「雪ねぇちゃん、何を言っているの? 法の下の平等は日本国憲法14条1項と、アメリカでは合衆国憲法修正第14 条によって保障されているよ? 上流階級とか言う訳の分からない階級は、基本的人権が保障された法治国家には存在しないよ?」
「ここで斜め上のマジレスかよ! 星アキラ・モフモフパジャマを着ながら、コンビニスイーツをもぎゅもぎゅ食べている珍獣イメージしか無かったから、セレブだったのをすっかり忘れていたわ。 ちなみに、このプライベートジェット機っていくらなの?」
「ガルフストリーム G650ERだから、6500万ドルぐらい? でも実は社長が僕のファンで、友達価格でちょっと安く売ってもらったんだ。 しかも、使わない時にはレンタルもしているし、スターズのタレントがまとまって海外ロケに行く時の送迎にも使ったりしているから、思ったよりもお金を使わないね。」
「80億円近いじゃない・・・。」
「それなりに高い機種だけど、東京から無給油でアメリカの各都市に行けるのですごく便利だよ。 各空港でもプライベートジェット用の専用ゲートで通過できるし。 世界中のウルトラドケチな富豪達が普通に買うのが良く分かるよ。」
「ちなみに、何時ごろにシカゴに着くの?」
「東京からシカゴまで11時間。 それで東京とシカゴの時差は14時間だから、12時に東京を飛び立ったのに、シカゴには午前9時頃に到着だね。 なんとマイナス3時間だよ! タイムマシンもびっくりだよ!!」
「うううっ。 日本でこじんまりとした公開記念をやって、後はひっそりと引きこもって、ほとぼりが冷めるのを待つつもりだったのに・・・。」
「ダメなプランですねっ。」
「無駄な努力ね。」
景ちゃんと千世子ちゃんが同時に言った。
「なんか、シカゴでの撮影を終えて、ハリウッドのスタジオに籠って編集をし終えて、久しぶりに日本に来たら、ネッコフリックスでドキュメンタリーが放映されていて、私の映画がまるで映画ランキングに載るような注目の映画って扱いをされているし、こじんまりとした映画を撮影したつもりが、何でこんな事になっているの!?」
「映画ランキングも何も、おそらく日本の映画ランキングでは間違い無く今週は一位よ。 ドキュメンタリーも大人気だから全米一位も狙えるかもね。」
「雪ねぇちゃんの映画は、全米ナンバーワン(何がナンバーワンかは言っていない)、世界が泣いた(なお泣いた人数は不明)、アカデミー賞最有力候補(実際にアカデミー賞の候補になるかは別問題)、先の読めない展開(脚本家が投げて監督すら先が読めなくなった)、全米が震えた(何に震えたのかは秘密)、今年一番の感動作(になるといいなぁと言う願望)なんかのキャッチコピー総なめのすごい映画だよ!!」
「そのキャッチコピーは全部配給元が困った時に付ける怪しいキャッチコピーじゃないの! だいたい、私のユーモレスクに『全俺が泣いた』って言うネタキャッチコピーを付けたのはアキラ君よね?」
「いいキャッチコピーよね。 綺麗にミスリードを誘っているわ。」
「映画を観る前の状況と合わせて、観た後に意味がわかって、すごく良いキャッチコピーに見えますっ。」
「どうして、こんな事に・・・。 私は自費でひっそりとした映画を撮って、少しづつ評判を得て、一歩一歩堅実に監督へのキャリアを歩むはずだったのに・・・。」
「ダメなプランですねっ。」
「無駄な努力ね。」
景ちゃんと千世子ちゃんがまたも同時に言った。
「だいたい、こじんまりとした自主製作映画で、いちごお姉ちゃんを主役にする時点で頭がとち狂っているよ。 雪ねぇちゃんは友達感覚だろうけど、あんなギャグ属性で、騙されやすくても、若手でブルーリボン賞の主演女優賞や日本アカデミー賞の新人俳優賞、キネマ旬報なんかでも賞を取る若手屈指の超実力派女優だよ? 阿笠みみが今年、ブルーリボン賞の助演女優賞を取ったって話題になっているけれども、彼女よりもはるかにすごいキャリアだからね。 気軽に友達の自主製作映画に出演するような女優じゃないよ。」
「だって、私が払えるぐらいの安価で主役をやってくれるような俳優が市子ぐらいしか居なかったんだから仕方が無いじゃないの。 っていうか、何で私が市子主演の自主製作の映画を作ろうとしていた事を知っているのよ?」
「そりゃ、雪ねぇちゃんがある程度まとまったお金を手にしたら、やる事なんて決まっているじゃないか。 自主製作映画でも、映画を作るなら各方面で協力が必要なんだし。 そもそも自主製作映画っていうのがあれすぎて、オフィスベリーの社長が判断に困って、アリサママと僕の所に相談に来たんだよ。 墨字さんじゃ何の問題解決にもならないから、アリサママと僕の所に来るのは、流石は敏腕の芸能事務所の社長だよね。 そこで僕が大赤字を出すってアリサママに猛烈アピールをして、雪ねぇちゃんを監督にして大赤字を狙った訳さ。」
「そもそもの雪ねぇちゃんのプランで行った場合には、こじんまりとした自主制作映画を作ったつもりが、中途半端にヒットして、配給体勢や権利関係、マネージメントの体勢が整えられないまま、雪ねぇちゃんが超めんどくさい立場に置かれる事は容易に想像が付くよ。 自主製作映画がヒットするのはいいけど、訴訟とか盗作騒動とかに発展するのは嫌でしょ? 映画配給会社が付いていないから誰も守ってくれないし。 雪ねぇちゃんは僕達に負担をかけないようにそう言うプランを考えたかもしれないけど、結果的にそっちの方がはるかに負担になるから。」
「自分の性格の地味さや堅実さと、作る作品の評価が比例しない事を雪ちゃんはちゃんと認識をした方がいいわ。」
「そうですっ。 雪さんは常識人のつもりでしょうが、私から見ても雪さんは、ぱねぇ監督ですっ。」
「どうしてこんな事に。」
私はアラスカ上空を飛ぶプライベートジェットの中で頭を抱えた。
なお、同じ頃日本では、大赤字になるはずの映画が、アニメ映画以外の邦画で、初日興行収入と入場数1位が達成確実と見られていて、アリサさんが頭を抱えていたのであった。