星アキラは自由に生きたいっ 作:Magical forest
-------------柊雪視点-------------
シカゴ・オヘア空港に到着した私は、プライベートジェット専用のゲートから通されて、素早く入国審査を終えると、待機していたヘリコプターに乗せられて、ノース・ウェストン大学までヘリコプターで移動する事になった。
ヘリコプターなんて初めて乗るのですごく緊張したけれども、電車を乗り継いでエバンストンまで到着するのに、1時間半ぐらいかかっていたのが、わずか10分で到着した。
日本でお昼前まで初上映の挨拶をしていたはずなのに、同じ日のシカゴで九時半にはノース・ウェストン大学に到着していた。 映画の初公開と公開の挨拶は10時半から始めるので、なんと、一時間も余裕がある。 いくらアキラ君でも分単位のスケジュール管理はしなかったみたいだ。 と言うか、お金持ちは時間を買うとか言われるけど、本当に自分が時間を買う旅を体験をするとは。
バブルの頃の芸能人はヘリで移動するとか聞いた事があったけれども、そのバブルの時のような体験を自分がする事になるとは思っていなかった。
ヘリコプターでノース・ウェストン大学にあるピック・スタイガー コンサートホールの前に降り立つと、馴染みのメディス・ジャーナリズム学院の教授や遠目で見た事しかない学長や理事たちが私達を出迎えてくれた。
そして、コンサートホールまでの道には、なんとレッドカーペットが敷き詰められていて、すでに多数の報道陣や多数の野次馬がレッドカーペットの上を歩く私達を撮影するために詰めかけていた。
「Yuki!! 久しぶりだね。 Yukiがしばらくハリウッドに行っていたから、学生達も私もみんな寂しかったよ。 今日はそんなYukiの映画がノース・ウェスタン大学で初公開するって事で、学長や教授陣を始め、ハリウッドスターや、シカゴ市の市長や議員、シカゴ・オーケストラのメンバーまで勢ぞろいだよ!! 私もすごく楽しみなんだ!! 私の妻と子供も見に来ているんだよ!」
「うわぁぁぁぁぁぁぁっ! すでにゲロ吐きそう。 教授、私の映画の初公開はピック・スタイガー コンサートホールでやるんですか?」
「うん。 メイン会場はそちらだね。 でも君の映画を一番に見たいという学生が殺到して、コンサートホール内の席取りで大混乱が起きたから、ディアリング・メドウのアウトドアスペースを開放して、そこに移動式の映写機を入れて学生や地元の人と一緒にYukiの映画を観るんだよ。 数千人が見に来てあっちはお祭り騒ぎさ。 こっちの公開が終わったら、顔を出してあげるとすごく喜ぶと思うよ!」
「があぁぁぁぁぁん。 教授!! なんでこんな騒ぎに!」
「それは、あのネッコフリックスのドキュメンタリーが原因だよ。 あのドキュメンタリーは大半がシカゴが舞台で、フレンドリーでオープンで、コミュニティ志向が強くて、多文化受容性が強いシカゴっ子にバカ受けでね。 あのドキュメンタリーだけでも熱が上がっていた所に、Yukiが映画を完成させて、舞台挨拶はハリウッドでは無くて、我々の母校で錦を飾るともなれば、それはもうシカゴ市民は熱狂的だよ。 ヘリでシカゴの駅前とか見たかい? Yukiの映画で盛り上がるために今日はシカゴ中お祭り騒ぎさ。」
「あの駅前のお祭り騒ぎって私の映画で盛り上がっていたの!? Nooooooooooooo! 私のノミの心臓が死んでしまうっっっっ。」
「これが本当のNooooMeの心臓ですわね。」
「キアラちゃん、止めてっ。本当に余裕がないんだから!」
ちなみに、私を含めて、プライベートジェット内で舞台に立つ準備は終えていた。 伊達にプライベートジェット内にスタイリストさんを乗せていた訳では無かった。 今の私の格好は白いドレスでバッチリと決まっていた。 マジで馬子にも衣装である。
ノースウェストン大学の学長が私をエスコートしてコンサートホールの中まで案内してくれた。
しかし、こうやってドレスでレッドカーペットの上を歩くと、他のメンバーとの違いを感じる。 やっぱり芸能人は絵になるわ。
報道陣はパシャパシャと私達を撮影していく。 リポーターが生中継をしたりもしているようだ。
「キアラちゃん!! どうして私達がこんなに注目されているの? 教授はああ言っていたけど、シカゴで人気ぐらいじゃこんなに報道陣は来ないわよね?」
「それは、雪お姉さまがハリウッドのスタジオに籠っている間に、ネッコフリックスであのドキュメンタリーが放映されて、一大ムーブメントを引き起こしたからですわ。 もっとも、そんな事を知られると正気じゃいられないと思っていましたので、ハリウッドのスタジオ内に3か月ほど雪お姉様を缶詰めにした訳ですが・・・。」
「どうりで、スタジオ内のスタッフが、私に意味深な微笑をしてくる訳だよ!! 食事はデリバリーやケータリングばっかりで、相変わらずネットも使えなかったし、感性を研ぎ澄ますために、外部との接触も最小限にしていたから、全然気づかなかったわ!」
「ギリギリまで編集していた雪お姉様もいけないんですよ? デジタルフィルムだからって、ほぼ前日まで編集する人が居ますか?」
「だって、最後のイーファのコンクールでの演奏とか、こだわればこだわるほど良くなって行くんだもん。 それでこだわりまくっていたら時間が溶けてどうしょうも無かったんだから。 それにアキラ君が伝説的な映像ディレクターやサウンドディレクターを中心にすごい人材を補助に付けてくれたから、その人達に教えを請うたり、技術を盗むのも大変だったし。」
「結果的に無事に映画が出来て良かったですわ。 あのお二人のディレクターも雪お姉様は、とても教え甲斐のある生徒だって喜んでいましたわ。」
そんな話をしていると、中からパルファン嬢が出てきた。
「キアラ! とっとと音合わせするわよ! 当日にぶっつけ本番とか、相変わらずあなたの頭はどうなっているの?」
「大丈夫よ。 適当に流せばそれっぽくなりますわ。 ぐわっ。」
キアラの返事にキレたパルファン嬢が、キアラに頭突きを喰らわせる。
「さあ、とっとと行くわよ!」
そう言って、頭に星が回っているキアラちゃんをズルズルと引っ張って行ってしまった。
私は、袖から舞台を見る。
舞台の上では、イーファのおじいさん役をやってくれたシカゴオーケストラの音楽監督のおじいさんと、オーケストラの楽団員がいそがしく準備をしていた。
私はその大がかりな舞台を見てさらに緊張度が増した。
「やっぱり、舞台の上でゲロを吐くかも。」
「そうすると、ゲロ監督の誕生ですねっ。 私もゲロ女優と言われているのでお揃いで嬉しいですっ。」
「いや、やっぱりゲロ吐くのは遠慮するわ。 このままじゃスタジオ大黒天じゃなくて、スタジオゲロ酷天になっちゃうじゃないの。」
なぜか、やたらと嬉しそうな景ちゃんを見て、私は絶対にゲロは吐かないと心に誓うのであった。