星アキラは自由に生きたいっ   作:Magical forest

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パルファン嬢は今日も大忙し2

 

----------- パルファン視点 -----------

 

気合を入れてシカゴに乗り込んだ私だったけど、今は後悔していた。

 

指定された場所に行くと、とんでもないボロ屋があって、まず間違いじゃないのかと何度も確認した。 そして恐る恐る呼び鈴を押すと、中から柊監督が出てきた。

 

「ごめん。映画を撮る予算が無くてこんなボロ屋なんだ。」って柊監督は言っていたけど、ボロ屋にも限度があると思う。歩くと床がギシギシと言っている。

 

そしてアキラさんが居るリビングに通されると、目の前のボロいソファーにピカピカ光る巨大カモノハシがぐうぐう寝ている。目が赤く点滅していて怖い。

 

周囲には、一生懸命映画のタイムラインを纏める柊監督、台本を見る百城千世子、お菓子を作る夜凪景、庭でアリを観察しながらビールを飲む明神阿良也などが居た。 何だ? このカオスな空間は?

 

しばらくすると、ソファーに居た巨大カモノハシが目を覚ました。

 

「あっ、パルファンちゃん来たんだ。 いらっしゃい。」

 

カモノハシのクチバシがパカッと開いて、口の中からアキラさんの顔が出てきた。

 

「もしかしなくても、アキラさんですよね?」

 

「アキラさんなんて他人行儀じゃなくて、アキラでいいよ。 僕もパルファンって呼んでいいよね?」

 

「了解です。 それでアキラは、なんでそんな恰好をして寝ているの?」

 

「見てよ。これが星アキラモフモフシリーズの新作、巨大カモノハシゲーミング着る毛布だよ。ただでさえ人気の星アキラモフモフシリーズに、ゲーミング要素まで追加。カモノハシの毛布を着たままトイレや買い出しにも行けて、どこでも寝れるんだ。まさに僕のような並外れた珍獣にふさわしい装備だね。」

 

カモノハシの目がピカッと光りながらアキラは言った。

 

「ピカピカしていて、まぶしくて寝れないと思うわ。 あと、アメリカでそんな恰好で買い出しに行ったら射殺されるんじゃないの?」

 

私は、誰でもわかる問題点を指摘した。

 

「えっ? そんな問題点、企画会議で誰も指摘しなかったよ?」

 

「それは、公式が病気で定評のある星アキラモフモフシリーズだからよ。」

 

「あの企画は、どこまで突っ走れるかチキンレースをしているって高校でも話題でしたっ。」

 

「大体、そんな恰好をしてアキラは恥ずかしくないの? 確かに着ぐるみはかわいいけど。」

 

「別に? 普通じゃないの? こんな格好をしている人は日本じゃ結構居るよ。」

 

「私も、船橋駅で黄色くて水色の服を着た人に梨汁をかけられた事ありますっ。」

 

「そうね。 テレビ局とかに行くともっと奇抜な人が一杯いるし、こんなものじゃないの? それよりも、この前売り出した星アキラのゲーミング割り箸とゲーミング糸は、ぼったくりでひどすぎじゃないの?」

 

「千世子ちゃんも景ちゃんも芸能界に染まりすぎだと思うわ。でも室内着ならいいんじゃない? 普通に着ぐるみパジャマとかあるし。 でも、割り箸と糸は何なの?」

 

「みんな勘違いしているよ。 あのゲーミング割り箸とゲーミング糸はゲーミングPC界隈で話題なんだよ。 PCのスロットを破壊する激重グラフィックボードをこれで支えるんだよ。 この前、ヌービディアのCEOの親戚の集まりがあるからって、ごはんをタカリに行った時に、ちょうどアムドのCEOも居たから、二人に、最近のグラボ重すぎじゃね?って苦情を言ったら、規格で決められていて変えられないから、箸で支えてくれて言うので作ったんだ、だからあの割り箸はごはんを食べるための物じゃないよ?」

 

「怖っ。 アキラ君の馬鹿な思い付きかと思っていたら、あの商品ができた経緯が怖すぎるわ。 あと、さらっとご飯をタカリに行った先も怖っ。」

 

「ちなみに、この巨大カモノハシゲーミング着る毛布で行ったら、ピカピカ光って縁起が良いと親戚や子供たちに大人気で、また来てほしいって言われたよ。 もちろん、CEO達にも大人気で、今度この格好で製品発表会のゲストまでお願いされちゃったよ。」

 

「「「「その格好で行ったんかい!!!!」」」」

 

「帰りに革ジャンと、アムドのCEO自らが丹念に握りつぶしたグラフィックボードをもらえて、僕もご満悦だったよ。」

 

「でも、それなら、割り箸にピカピカ光りながらご飯を食べれる機能は逆にいらないと思うの。」

 

「千世子ちゃんはわかっていないね。 グラフィックボードを支えられるのに、ご飯も食べられるロマンがあるんだよ。マロンと言い換えてもいいよ。」

 

「木の実じゃない!! アキラと話していると頭がおかしくなるわ。」

 

「じーーーん。」

 

「柊監督どうしたの?」

 

「いや、ツッコミ要員が増えたことに感激して。 やっぱりこの中に必要なのは常識人よね。 でもマロンは栗じゃないの? 確かにこっちではみんなチェスナットって呼んでいるけど。」

 

「マロンはフランス語で栗よりも大きいトチノミ(栃の実)の事だね。 なぜか日本ではこれが栗の実の英語だって思われているんだよね。 だから、マロンはフランス語の和製英語という謎のジャンルだよ。 ちなみに、フランス語で栗は、châtaigne(シャテーニュ)だよ。 ほんと、和製英語は魔界だよね。」

 

「ほぇ~。光る巨大カモノハシの雑学すごいわね。 これで何か番組を1本作れそうね。」

 

「さすが、雪ちゃんは制作サイドの人間ね。 確かに面白い絵面だわ。」

 

「そんな事より、ヴァイオリンの練習はしないの? 私はここに、星アキラが居るって緊張しながらやって来たら、こんな大惨事になっているんだよ? 私の緊張を返してよ。」

 

「ああ、そうだね。 さっそく始めようか。」

 

アキラはそう言って立ち上がると、カモノハシの手の部分のチャックを開けて、アキラ本人の手が外に出てきた。

 

「それ、着ぐるみの状態から自分の手が取り出せるのね。」

 

「そうだよ。 これで毛布を着たままゲームができるんだ。 まさしく、ゲーミングカモノハシ毛布として、今年最大のヒット商品になる予定だよ!」

 

アキラは、カモノハシのクチバシ部分から顔をのぞかせて、ドヤ顔をしている。同時に巨大カモノハシの目の部分もピカッってフラッシュすると、その後七色に発光した。 これのどこにドヤ顔をできる要素があるのだろうか? 私は華麗にスルーして見ていると、アキラはヴァイオリンを取り出して、調弦しはじめた。

 

「ちょっ、ちょっと、あなた、まさかその格好でヴァイオリンを弾く気?」

 

「そうだよ。 この巨大カモノハシゲーミング着る毛布こそ、僕がヴァイオリンをここまで弾けるようになった秘密さ。」

 

アキラが突然、カモノハシの着ぐるみを着たままヴァイオリンの調弦を始めたので、私も焦って自分のヴァイオリンを取り出して音を合わせる。

 

巨大カモノハシにヴァイオリンという明らかにミスマッチな格好ながら、奏でられるヴァイオリンは相変わらずとても上手い。同年代、いや先輩でもこんなに上手い人は見た事が無い。 上手い上に応用力があり、何よりもアドリブがずば抜けている。 瞬間的なアドリブや、遊び心から出るリズム遊びがはっとする物がある。

 

楽しい。 アキラとヴァイオリンを弾くのがとても楽しい。 来る前は星アキラに私の演奏をボコボコにされて、私はただの引き立て役になるかと思っていたんだけど、実際に演奏してみると、アキラは私の演奏を尊重してお互いを高めあってくれる。

 

私達は、お互いのヴァイオリンの演奏にハマり、まるで恋にでも落ちるかのような感覚を味わった。 私は潤んだ目でアキラを見る。

 

その先には・・・・リズムに合わせてビカビカ光る巨大カモノハシが、リズムに乗ってアクロバティックに踊りながらヴァイオリンを弾いていた。 ついでに目は七色にピカピカ点滅している。

 

「ブッーーーーーーっ。」

 

私は吹き出した。 いや、やっぱり私、これに恋とか無理なの。

 

「うわっ、パルファン、せっかくいい感じで盛り上がっていたのに、吹き出さないでくれる?」

 

「アキラちゃん、むしろここまで綺麗に曲が弾けていたこと自体が奇跡よ。ものすごく面白い絵柄で、笑いっぱなしだったわ。」

 

「私も面白すぎて笑い転げてましたっ。」

 

「このシーンはバッチリ撮影したから、楽しみにしていてね。」

 

「ハハハッ。アキラがスターズの社長になったら、劇団天球が漫才劇場になりそうで怖いな。」

 

そうして、その場に居た一同で爆笑しまくった。

 

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「そう言えば、そのカモノハシの着ぐるみがアキラのヴァイオリンの演奏の秘密だって言ってたけど、どう言う事なの?」

 

しばらく二人で練習した後に、私はちょっと興味があったので聞いてみた。

 

「パルファン。 よくぞ聞いてくれたね。 実は、この着ぐるみを頭まですっぽりと着る事で、表面のモフモフに余計な音が吸われて、ヴァイオリンを綺麗に演奏しないと、音が綺麗に聞こえなくなるんだ。 だから、この着ぐるみを着ると、自然と綺麗な音になるのさ。」

 

「えっ? そうなの!?」

 

「それから、この格好は演奏しにくいけど、実はこうやって着ぐるみのハンデを負う事で、着ぐるみが無い時に体が軽くなって、さらに上手く演奏できるようになるんだ。 この辺は巨人の星の大リーグボール養成ギブスと同じ原理だね。 つまり、この着ぐるみを着る事で、ヴァイオリンの音が洗練されて、本番ですごい力を発揮できるようになるんだ。」

 

「なるほど。 確かに上手く弾かないと着ぐるみに吸音されてダメそうね。 アキラの言う効果があるのなら、私もやってみようかしら。 ねぇアキラ、そのカモノハシの着ぐるみって余っていないかしら?」

 

「さすがパルファンだね。 常識にとらわれない素晴らしい感性と音楽性。 間違いなく、これからクラシック界を背負って立つ逸材だよ。 もちろんパルファンに、巨大カモノハシゲーミング着る毛布をプレゼントするよ。」

 

「えへへへっ。 ありがとう。」

 

そう言うと、アキラは奥から新品未開封のカモノハシの着ぐるみを出してきてくれたので、私はそれに袖を通した。

 

「確かに、これだと包まれている感じがして、演奏に集中できるかも。」

 

カモノハシの着ぐるみは意外と私にフィットした。

 

「完全に騙されていますっ。 すごく面白いですっ。」

 

「自分は絶対に詐欺には引っかからないと思っている人間が、こういう感じで簡単に詐欺に引っかかるのね。 とても興味深いわ。」

 

「パルファンちゃん・・・・。 あなただけは常識人だと思っていたのに。うるうる。」

 

「すでにこのメンバーに染まり始めたな。 短い常識人枠だったな。」

 

「ええええっっっっ。」

 

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