星アキラは自由に生きたいっ 作:Magical forest
結局、私はアキラを信じることにした。 信じる理由は、アキラの音楽には嘘は無いと思った事と、結局のところアキラに私を騙すメリットがほぼ無い事だった。
ハリウッドで何千万ドルって稼ぐアキラが、私を騙してまでお金を手に入れるメリットはほとんど無いし、アキラのヴァイオリンの腕から考えて、私のヴァイオリンの技術に嫉妬しているとも思えない。
そもそも、アキラに私を助ける義務なんて無くて、私の方からアキラに助けを求めたのに、今更怪しいとか言うのも失礼だった。
・・・何か別次元で怪しい気はするんだけど・・・。
私はその場で「信じているので、よろしくお願いします。」とアキラに伝えた。
翌日から劇的な展開だった。 私は両親と、臨時でお願いした弁護士さんと一緒にアキラに指定されたホテルに行くと、私に付いてくれるエージェントと業務マネージャ、法務マネージャ、PA(パーソナルアシスタント)が居た。
エージェントの方は、ハリウッドやその他のエージェントライセンスを持っている方で、ヨーロッパを中心に活動していて、有名な指揮者や音楽家たちを何人も担当された方だった。 また、歌手やアイドルなども担当されたことがあり、メディアなどにも顔が広い人だった。
エージェントと言うのは、代理人として私の仕事を取って来てくれる人で、マネージャが私の仕事の管理やサポート、PA(パーソナルアシスタント)が秘書などとして、細かい身の回りのサポートをする担当になると説明してくれた。
エージェントさん曰く、私の担当になる経緯は、こういう話だったみたいだ。
「アキラから依頼の電話がかかってきた時には、1つのコンクールで優勝しただけの少女の担当になるなんて考えられなかったから、お断りするために、2倍の契約料を吹っ掛けたんだ。 そうしたら、翌日にはポンッと振り込まれていたよ。 それにパルファンが契約を受諾しなければ、契約料は全部持って行っていいとか言う、大盤振る舞いだった。 俺は心底怖くなったと同時に、ここまで俺の腕を買ってくれるなら受けてみることにしたのさ。」
「それっていつの話ですか?」
「2か月以上前かな。 ちょうど1人ほど前の担当との契約が終わった頃の話だ。何で星アキラほどの人がパルファンを気にするのかと思ったけど、映画を観て納得した。 確かに天才だな。 星アキラを除いて考えるなら、今のヴァイオリニストの中でも並ぶ人はほんの僅かだな。 規則や調和から、対称性とバランス、メロディーが知覚に訴える美しさがある。」
話しを聞く限り、映画のフィナーレで、シカゴ交響楽団との演奏を収録した後ぐらいから、アキラは人選を進めていた事になる。 アキラはこの展開になる事は全部読めていたという事だ。 私がアキラに相談する事までを含めて・・・。
「ありがとうございます。 アキラってやっぱり凄いのですか?」
「星アキラの音楽性についての凄さは、パルファンの方が良く分かっているだろうが、役者や経営者としてなら、パルファンの想像よりも何倍もすごいぞ。 ハリウッドやヨーロッパでも顔が利くし、様々な企業のCEOとも仲良しだ。 ハリウッドの四大エージェンシー全部に顔が利く俳優なんて、星アキラぐらいしか居ないぞ。」
「そうなんですね・・・。」
「何より恐ろしい事は、俳優として、自分の権威やプライドを全く気にしない事だ。 演技のためなら、いくらでもプライドや見栄を捨てられる。 この前もヌーヴィディアの新製品発表会にピカピカ光る巨大カモノハシで現れて、度肝を抜かれたぞ。」
「あっ、それ、素です。」
あの新製品発表会の話は本当だったのか・・・。 柊監督が、ドキュメンタリーの第二部でカモノハシの演奏シーンを放映するって言っていたけど、ドキュメンタリーの第二部が始まったばかりだから、まだそのシーンまで到達していないのよね。 それでも出演しちゃうとかアキラは相変わらずヤバイのね。
その後、エージェントとの契約内容を確認したけど、こちらが連れて来た弁護士さんが関心するほど、良くできた契約書だった。
「パルファンにちゃんと音楽の練習時間を取らせる事、旅先などでも集中して練習できる空間を提供する事。」
「音楽家としての将来を考えた仕事を取る事。」
「高校生としての生活を考慮した公私のバランスを取る事。」
「パルファンの音楽性を尊重した仕事を取る事。」
などなど、音楽家の事を理解して良くできた契約書だった。
「どちらにせよ、俺らの契約料は星アキラが出している。パルファンは、がんばって俺らの契約料を稼ぐ必要もないし、俺らもパルファンの将来につながる仕事を優先して取るから、パルファンは学業や音楽に集中するといい。 ただし、契約料以外で俺が取って来た仕事の10%は俺の取り分だ。 これも契約料をたんまりもらっているから、必要な分しかパルファンには仕事を入れないから、安心してもいいぞ。」
「取り分の部分は相場なので大丈夫です。 でも、アキラに契約料を出させるのは心苦しくて・・・。出せるなら、代わりに私が出しますので。」
「出せないと思うが。 〇〇〇万ドルなんだが、今のパルファンに出せるのか?」
そのあまりの金額に私は絶句した。
「これがパルファンと星アキラの違いだ。 ハリウッドでは、俳優よりも稼いでいるエージェントなんてゴロゴロ居る。 星アキラの一番恐ろしいところは金の使い方を知っているところだな。」
「友達が頼んだだけで、こんな金額をポンと出せるなんて・・・。」
「金をケチろうとする人間の元には、金の事しか考えていない人間しか寄って来ない。 多くの人間は、金では買えない物があると言っておきながら、逆に金で買える物の価値を知りもしない。 本当に必要な時に、必要な金を使える人間がどれだけ居る? パルファンは良い友達を持ったな。 金に使われずに、正しく金を使える人間なんて、それこそ絶対に金では買えない友達だ。」
「アキラ、ありがとう・・・。」
翌日から、私の環境は劇的に変わった。 あんなに私を悩ませていた仕事の依頼は、エージェントと業務マネージャが間に入ってくれたお蔭で綺麗にシャットアウトされて、明らかに受けた方が良い仕事だけがスケジュールに組み込まれるようになった。 私に練習時間や、プライベートの時間を取れるように配慮したスケジュール調整をしているのは助かっている。
税務関係や法務関係の良く分からない仕事は、法務マネージャさんがやってくれてる。
さらに、助かっているのは、
「パルファンさん、行きますよ。」
「はい。」
身の回りの世話や、移動方法の手配、現地での折衝などは、PA(パーソナルアシスタント)さんがやってくれるようになったので、仕事を安心してスムーズにこなせるようになった。
ちなみにPAさんは、キングさんと言うかっこいい男装の女性の方で、弟さんの足の治療費をアキラさんが一括で出してくれて、私のPAになってくれたそうだ。
アキラの言う通り、私は演奏家としての仕事に集中できるようになった。 アキラを信じてよかった。
・・・・と感謝していたのだけど、この後アキラに盛大に裏切られる事を、この時の私は気づいていなかった・・・。
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「アキラを信じていたのに~!!!」
「だから言ったじゃん。 『僕と契約して、魔法少女になってよ!』って。」
「あの時は、アキラがまた戯言を言ってると思って聞き流していたけど、こういう事だったの!? 完全に裏切られたの!」
「僕は魔法少女になってくれって、きちんとお願いしたはずだよ?」
「こんな展開なんて誰も予想できないでしょ!?」
「でも、パルファンなら運命を変えられる。」
「もう変えられないわよ。 すでにステージの上じゃないの!!」
いま私は、魔法少女のコスプレをして、魔法少女まどかマギカのアニバーサリーコンサートのステージ上に居た。
アキラはキュゥべえの着ぐるみを着て、私と一緒にステージに立っていた。 こいつを見直した私がバカだった。
アキラがリードして、オーケストラをバックに曲の演奏が始まる。 会場の盛り上がりも最高で、『コネクト』のデュオは本当に盛り上がって楽しかった。
・・・けど、やっぱり騙された~~~!!!
「ところで、アキラのキュゥべえの着ぐるみは、とても肌触りが良さそうね。」
「もちろんだよ。星アキラモフモフシリーズの新作で、まどマギとのコラボ商品だからね。 最高の着心地さ。」
「あのっ、あのっ。 それ、余っていたら私も欲しいかも・・・。」
「もちろんだよ! 流石はパルファン。 素晴らしいセンスだね。 僕の友達でも君ほどのセンスと感性を備えた芸術家はほとんど居ないよ。」
「えへへへっ。ありがとう。」
「完全に洗脳されていますっ。 すごく面白いですっ。」
「後戻りできない過ちを犯してしまって、それを認められずにズルズルと行ってしまうと、こうなってしまうのね。 とても興味深いわ。」
「パルファンちゃん・・・・。 常識人のあなたはどこに行ってしまったの!?(号泣)」
「このメンバーに完全に染まってしまったな。 もはや手遅れだな。」