星アキラは自由に生きたいっ 作:Magical forest
-------------日尾和葉視点-------------
「素晴らしいスタイルといい雰囲気だね。モデルをやってみないかい?」
「それってお金になるの?」
私がこう声をかけられたのは、台風が過ぎて、家庭が完全に崩壊した後だった。 この時の私は、アルバイトを探すべく街を彷徨っていたのだ。
私がアルバイトを探していたのには訳がある。 簡単に話すと、両親が離婚して母親が蒸発。 最低限の生活はできているものの、なんとか自立して生きるためにお金が必要だった。
私がこんな事態に陥ったのは、母親の浮気というわりとありふれた内容だった。 実際の所、家庭崩壊の王道パターンだろう。 父親はとてもやさしい人だった。 あの母親を愛していた。 ・・・ずっと浮気をしている事に気づいていたとしても。
でも、母親が自分たちの老後資金や、私たち姉妹の将来のためのお金にまで手を付けていたことが発覚して、流石に堪忍袋の緒が切れたらしい。 父親は興信所を使って証拠を集めて、母親に慰謝料と離婚を要求して、離婚調停になった。
父親の要求は、慰謝料と私たちの親権。 お父さんは私達姉妹の身を案じてくれたのだ。
母親は母親側の弁護士に対して良い事だけを言っていたようで、具体的な証拠が父親側から提示されると、母親側の弁護士はすぐに匙を投げた。
結局、破れかぶれになった母親が裁判中に、私達姉妹に血の繋がりが無い事をカミングアウトし、結局親権だけは母親側に渡り、母親はその後の慰謝料の支払いを苦に蒸発。
家賃も払えなくなり、ボロアパートを追い出されて、母親の親戚を頼ろうにも、みんな腫物扱いでどこにも行けなかった。
結局私達が頼ったのは、血の繋がらない元父親であった。
お父さんと、私達姉妹は実は密かに連絡を取ってくれており、私達の境遇を見かねて住処と、生活費の援助をしてくれた。このおかげで、私達姉妹はなんとか最悪期を脱した。
ここでお父さんが助けてくれなければ、私達姉妹はどうなっていたか分からない。
私達姉妹を助ける義理が無いのに、助けてくれたお父さんの事はすごく感謝している。
そして、こんなに優しいお父さんの事を裏切った母親の事が今でも信じられない。こんなに優しくて素敵な旦那さんが居るのに、どうして浮気をしていたのだろうか? 確かに顔は普通だと思うよ? 対して浮気相手は確かに顔は良いとは思うけど、でも大切な所はそこじゃないでしょ。
私は鏡で自分の姿を見る。 あの顔だけが良い母親と、スタイルの良い浮気相手の血を見事に引き継いだ、整った顔と抜群のルックスだ。 全く反吐が出る。
私の半分はあの母親の血で、もう半分は浮気相手の血が流れていると思うといつも暗い気持ちになる。あんな最低な人達ではなくて、お父さんの血が流れていて欲しかった。 その事が私に強いストレスを与えて、自棄になりかけていた。 妹が居なくて、お父さんも助けてくれなかったら、私は確実に非行に走っていただろう。
お父さんからのお金も、完全に同情から援助してもらっているお金であるし、全ての生活費を強請る訳には行かない。 それではあの母親と同じだ。 妹も高校に通わせてあげるためにも、バイトをして生活費を稼ぎたかった。
同時に一連の騒動で、人間の醜さや本質が良く見えるようになった。 母親や親戚達を見ていると、血の繋がりなんて、自分達の都合の良い道具程度で、邪魔になれば役に立たないし、良い寄って来た人間も、私の顔しか見ない人間の薄っぺらさも強く感じるようになった。
その反面、お父さんのような本当に心の優しい人が存在する事も強く理解した。
それから、内面を見ずに私の顔にしか興味がない人間は自然と軽蔑するようになった。 そういう人間は、あの母親を思い出させる。そして、それを見極めるために、私は人の内面を良く観察するようになった。
私の顔にしか興味や、価値を見出さない人間を見るとイライラする。 でも、この容姿がお金になるのであれば、私達姉妹は自立して生活する事ができるようになるだろう。 私は我慢して、容姿こそがが価値の中心となるモデルのバイトをやる事にした。
だから、モデルのバイトを始めたときに、バイト先で先輩に星アキラと百城千世子がCGで顔を作っているって冗談を聞いた時に、私はそれを本気で信じてしまった。 この頃の私は全く余裕がなくて、冗談を冗談として受け取る事ができなかったのだ。
そこまでして容姿に拘る意味がわからない。 ましてやテレビ局や雑誌に圧力をかけてCGとして虚像を映すなんて最低だ。 自然と、星アキラと百城千世子は軽蔑の対象に入って、それ以降は、この二人の情報や出演作などを見るのも避けるようになった。
アキラ「寒っ。なんか急に気温が変わったよ。温度差で風邪をひきそうだよ!」
千世子「そうね。急にシリアスになった気がするわ。」
アキラ「なんか鹿の子の中に推しの子の居るような違和感が・・・。」
パルファン「アキラ寒いの? 私のプロデュースしたクオッカワラビーの着ぐるみを着る?」
雪「パルファンちゃんががいつの間にか一番ヤバくなっているじゃない!!(悲鳴)」
景「私の場合の逆パターンで、母親がダメなパターンですね・・・。どうして、こんなダメな親がこの世に存在するのでしょうか・・・。」
アキラ「けっ、景ちゃんの目のハイライトが消えてる! まずい! なんか雰囲気が不味い。」
千世子「人間らしくていいわ。景ちゃん、演技の幅が広がったわね。すごく興味深いわ。」
阿良也「別に普通じゃないの? こんな話?」←明らかにまともな家庭環境に育っていない人
アキラ「こっこんなの普通じゃないよ!明らかにヤバイ部類だよ!」←片親で父親不明、母親がネグレクト気味で本人自殺未遂
雪「そっそうよ! こんな家庭ばかりじゃないわ!!」←母親のみの片親で、その母親が家に男を連れ込んでいた
千世子「客観的に見て、みんな洒落になれないぐらいヤバい家庭ばかりね。」
パルファン「そうね。着ぐるみの良さに目覚めて、家族みんなで着ぐるみを着ている私の家族とは大違いね。」
雪「パルファンちゃんの家庭がある意味ぶっちぎりでヤバイわ・・・。」