星アキラは自由に生きたいっ   作:Magical forest

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和葉の物語4

 

-------------- 星アキラ視点 --------------

 

「なるほど、なるほど。 状況はわかったよ。 君達は一旦スタジオに戻って状況確認とフォローをお願いできるかな。 TV局側の撮影スタッフに状況を聞かれたら素直に答えちゃっていいから。」

 

「いいんですか? ただでさえ大事になりかけているのですが。」

 

「いいんだよ。 すでに大事になっているから。 周りにTV局のスタッフも居たんだろう? なら下手に隠し事をするよりも、客観的に事実と状況を伝えた方が良いよ。 たぶんこの件は一旦燃やした方が上手く纏まるから。」

 

「わかりました。 それでは私達は現場に戻ります。」

 

「百合にフォローが必要だから、百合と代わってもらえるかな?」

 

「わかりました。」

 

そう言って、マネージャは九条百合に電話を替わって部屋を出て行った。

 

「百合、マネージャは出て行ったかい?」

 

「はい。 控室には誰も居ません。」

 

「それでどうだった? キレる演技は? 普段溜まっている物が全部解放されて、すごく気持ち良かったんじゃないのかな?」

 

「流石、アキラさん。 完全に見抜いているのですね。 感情を前面に出してキレる演技をしたら、暴力的な自分が解放されてすごく気持ち良かったです。」

 

「それも百合が持つ感情の一つだから、今回の経験を元に大切に育てて、必要な時に取り出せるようにしないとダメだよ。」

 

「分かっています。 でも和葉の言葉が怒りが湧いてきたり、悔しかった事は本当ですよ?」

 

「もちろんだよ。欠片も悔しくないのに、キレた演技なんてベテラン俳優でもできないよ。」

 

「・・・アキラさんや千世子さんなら普通にやりそうですが。」

 

「ノーコメントで。でもうちのマネージャやTV局のスタッフ達、日尾和葉ちゃんまで騙せたみたいだし、誰一人演技だって疑っていないみたいだから、満点じゃないかな。」

 

「アキラさんには状況を伝えられただけで、話してもいないのに、簡単に見抜かれましたけどね。」

 

「百合の行動を見ていると、ある程度予想が付くよ。 でも確信したのは最初の電話の受けごたえかな?」

 

「あれ? 私、そんなボロなんて出していましたか?」

 

「悪いのは和葉ちゃんだったとしても、キレて現場を無茶苦茶にしたんだ。 罪悪感と、それを誤魔化すための自己正当化で、今頃脳内がグルグルになっているはずだよ。 演技だったから引きずらずに冷静になるのが速かったね。 キレた後は自分の行動が正しかったのか、もっと不安になって、それが行動に現れるべきだよ。 今は、百合がある程度の顛末を計算しているから、そんな不安が少なくて冷静すぎるよね。」

 

「なるほど。勉強になります。 でも、キレた人を観察する機会が中々なくて・・・。」

 

「まぁ、北斗の拳の世界じゃないから、そこまでキレた人がゴロゴロいる世界じゃないし、別にキレる表現だけ育てればいいわけじゃなくて、感情的部分の表現力をもっとバランスよく練習していく必要があるね。 百合は今の年齢でキレ芸職人とか呼ばれたくないでしょ?」

 

「なるほど。」

 

「そんな百合に朗報があるよ。 劇団天球で雪わたりの舞台が企画されているんだけど、君もキャストにどうだい? 今回は、巌裕次郎は別件で演出から完全に外れて、新生劇団天球として、阿良也の演出になるんだけど、その新しい船出の舞台に君も出演してみないかい? 百戦錬磨の舞台俳優達と一緒に舞台をやって経験を貯められるいい機会だと思うのだけど。」

 

「嬉しいです! 是非お願いします!」

 

「承ったよ。」

 

「それで、私がブチギレちゃったけど、大丈夫でしょうか?」

 

「もちろん大丈夫だよ。 百合がキレてくれたお蔭で、オフィスベリー側に過失があって、スターズ側が不快に感じた事が周囲に伝わったから、問題点が明確になって事態の収拾がやりやすいよ。 中途半端に怒っているのが伝わったり、その場で許してしまうと、問題が見えない形で僕に忖度されて、和葉ちゃんが女優を辞めるだけだったから、一番面倒な事態だったけど、これなら僕も大手を振って動けるから、事態を収拾して和葉ちゃんを救う事も出来るよ。 百合、よくやってくれたね。」

 

「ありがとうございます。 でも、和葉に怒りを覚えたのは本当ですよ?」

 

「もちろん分かっているよ。 和葉ちゃんは、才能はあるだろうけど、モデルの経験だけで、社会でまともに働いた事が無い17歳の女の子なんだ。むしろ立ち話であっても、17歳の子供の発言に責任を持つ必要がある芸能界が異常なのさ。 とは言っても、そのリスクと引き換えに、17歳の子供でも大人が考えられないぐらいの大きな収入を得られるのだから、その対価とも言えるかもね。 それができない人間は消えて行くだけだし。 どちらにしても、百合は共演してみて、和葉ちゃんをここで終わらせるのも惜しいって思ったんだよね。」

 

「そうですけど、これで和葉を救えるのでしょうか?」

 

「大丈夫だと思うよ。 百合も楽しめる解決策を用意しておくから、楽しみにしていてね。」

 

「本当ですか? 約束ですよ?」

 

「もちろんだよ。 それじゃ後の対応をするから電話を切るね。 いい働きだったよ。 ドラマも楽しみにしているから。 この後たぶん仕込みが終わったらもうひと働きしてもらうだろうけど、とりあえず今日はお疲れ様。 良いホテルを取っておいたから夜まで休むといいよ。」

 

「フォローありがとうございます。 お疲れ様でした。」

 

こうして、九条百合との電話を切った。

 

「いやはや、役者って怖いよねぇ。 和葉ちゃんは本職の役者とやり合うにはまだ人生経験が足りなかったかな。」

 

電話を切った後に、僕は独り言を言った。

 





アキラ「いやはや、役者って怖いよねぇ」

雪「おまいう」

千世子「裏で冷静にこんな計算をしていたなんて恐ろしいわね」

雪「おまいう」

景「怒りで我を忘れる感じがリアルで凄いですっ」

雪「おまいう」

阿良也「迫真の演技だな。あそこまで変われないよ」

雪「おまいう」

パルファン「変人おまいう祭りが開催中と聞いて常識人枠の私が飛んできまスタ。(カンガルーの着ぐるみを着ながら)」

雪「おまいう」

雪「わ――――――ん。 どうして私の周りにはこんなおまいうな変人しか居ないのよ!!」

一同「「「「「おまいう」」」」」

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