星アキラは自由に生きたいっ   作:Magical forest

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和葉の物語10

 

---------------日尾和葉視点---------------

 

「悪役ですか? でもたとえ悪役をやっても同じように存在感を減らすように言われるのではないですか?」

 

「違うね。 悪役の場合には最初から主人公サイドと敵対しているんだから、存在感があればあるほど、目立てば目立つほど良いんだよ。」

 

「それでも、目立ちすぎて主人公を喰っちゃったら、同じようにダメなんじゃないですか?」

 

「助演の場合には、主役を差し置いて存在感を示されても困るし、視聴者も主役を立てろって言うけど、悪役に主人公が喰われた場合には、悪役に喰われる主人公の力量に幻滅するだけで、悪役が称賛される事があっても、否定的に捉えられる事はほとんど無いよ。 例えばアンパンマンで、食パンマンがアンパンマンを差し置いて、毎回、超個性的で目立ちまくると視聴者はええええっ。って思うけど、バイキンマンの方がアンパンマンよりもキャラが立っていても無問題だよね。 明らかにバイキンマンの方がアンパンマンよりもキャラが立っているのに。」

 

「確かに。」

 

「ガンダムSEED運命の場合には、主役が途中からシン・アスカから、助演だったはずのキラ・ヤマトに変わって明らかに賛否両論だけど、初代ガンダムのシャア・アズナブルはアムロと比べてもすごい存在感だけど、否定する人はほとんどいないよね?」

 

「それって役割が違うからだと・・・。」

 

「そうだよ。 役割が違うんだ。 悪役と言うのは主人公サイドの敵対者。 主人公が超えるべき壁は高ければ高いほどいいんだ。 素晴らしい悪役と演技がへぼい主人公。 この場合、批判されるのは演技の力量が足りない主人公の方だ。」

 

「でも、悪役と言うのはイメージが・・・。」

 

「確かにイメージは悪いね。 例えば、半沢直樹の大和田常務は、第一シーズンでのイメージは最悪だね。 でも、彼が居なくて半沢直樹がここまでヒットしたと思うかい? 悪役と言うのは物語の中で主人公以上に大切な存在だよ。 物語りの起点だし、悪役は目立つほど物語を輝かせるんだ。 物語の魅力は悪役から生み出されるって言っても過言では無いね。 王賀美兄さんは、そのスター性ゆえに、役が主役に限定されて、日本では、判を押したような主役しか演じる事ができなかったけど、和葉ちゃんは王賀美兄さんよりも、もっと柔軟な思考と自由な演技力があると思う。 主人公しか演じられないような不自由な役者生活じゃなくて、自由に悪役を演じてみないかい?」

 

「・・・・分かりました。 チャレンジしてみます。」

 

「そんな和葉ちゃんに良い役があるんだよ。」

 

「えっ?」

 

 

-------------------------------------------

 

 

「先生、さようなら。」

 

「はい。さようなら。 寄り道しないで帰るのよ。」

 

「は―――い。」

 

26歳になった私は、オフィスベリーのやっている俳優養成所の先生をやっていた。

 

あれから、私はアキラさんのアドバイスを聞いて悪役をやってみる事にした。 事務所とマネージャは私のイメージを考えて難色を示したけど、私の決意は固くて押し切った。

 

そして、アキラさんから、ウルトラ仮面の「シャドープリンセス」という役を紹介してもらって、一気にブレイク。 1シリーズで終わるはずが、あまりの人気に、まさかの3シリーズへの連続出演をして、3シリーズ目のウルトラ仮面ファントムナイトでは、「シャドークィーン」としてラスボスを務めるまでになり、ウルトラ仮面史上、歴代最高の悪役という評価をもらえるまでになった。

 

ドラマなども最初のうちは、ちょっとイキってザマァされて、水をかけられたり、踏まれたりする役しか無かったけど、嫌がらずに積極的に悪役を演じる私の姿勢が次第に評価されて行って、段々と悪の矜持や、悪の美学、複雑な理由から主人公陣営と敵対している悪役など、演じるのが難しくてやり甲斐のある役をどんどん任せられるようになり、それが評価されてハリウッドの映画に出演するまでになった。

 

実際、悪役を演じるのは自分にすごく合っていた。 法律や常識に縛られずに、自分自身を貫き通す。 たとえ世間から悪と思われても、悪としての矜持と自分のプライドを貫いた。

 

最終的には、星アキラを筆頭とする天才ばかりがそろった『ハリウッド世代』と呼ばれる、日本の芸能界史上でも稀に見る、とんでもない黄金世代の中で、私は『悪の女王』という異名でその一角に名を残す事になった。

 

女優の引退は22歳の時で、ウルトラ仮面の撮影で一緒に居る事が多くて、市子先輩と接点があった山田さんとお付き合いをして、22歳の時に週刊誌で報道されて、そのまま山田さんと結婚して女優を辞める事にした。

 

結婚式は、市子先輩に仲人を務めてもらって、アキラさんにピアノで『人生のメリーゴーランド』を演奏してもらったのは、一生の思い出だ。

 

周囲からは女優を辞める必要は無いってみんなに止められたのだけど、私にはあの最低の母親を見返すような幸せな家庭を作るという目標ができたので、女優はすっぱりと辞めて結婚生活という次のステージに進むことにした。

 

そして、すぐに女の子と次の年には男の子に恵まれて、二人の子供と共に幸せな家庭を築いている。

 

俳優養成所の講師の仕事は、オフィスベリーの社長さんからお願いされた仕事で、女優を引退しても、せめて後輩の指導はしてほしいという事で、子供を保育園に預けて週に3回ほどやらせてもらっている。 それなりに収入も高いし、自由も効いて自分の刺激にもなるので、かなり気に入っている仕事だ。

 

順風満帆な結婚生活だけど、ドラマや映画で活躍する知り合いの姿を見ると、あの中に自分も居た事を考えると、たまに寂しい気もする。

 

それにこの前、私を悩ませる出来事があった。

 

保育園で娘が私の事で、私が悪い奴だって言った男の子と、ケンカになったらしい。 もちろん、親御さんは演技だって知っているし、私とも知り合いだったから、その男の子はこっぴどく叱られたらしいけど、子供には演技だって分からないだろうし、まぁ、「お前の母ちゃん、悪の組織の大幹部!」とか言われるぐらいなら可愛い物だけど、そのうち過去に私が出演したドラマとかに影響されて、虐めとかに発展すると面倒なことになる。 こういう事態はある程度覚悟していたけど、自分じゃなくて子供が被害を受ける事になったら、親としてショックだ。

 

後は旦那の事かな。 最近、旦那は自分の映画を撮りたいと考えるようになったらしい。 元々、ジョージルーカスのファンでスターウォーズみたいな映画を撮りたいとか言っていたけど、大人になって現実も見えて来つつも、SFの映画を撮る夢が諦めきれないみたい。 旦那は市子先輩や、柊監督というとんでもないビッグネームと友達だから、ある程度映画を撮る費用は工面してくれるとは言っているらしいんだけど、旦那は私達家族のことも考えて、映画製作に踏ん切りが付かないようだ。

 

確かに、普通の映画と違ってSFを撮るとなれば、セット等を含めてとんでもない費用がかかる。

 

実際、私が女優をそのまま続けていれば、旦那の映画がコケても問題無く家庭を養えたはずなので、このあたりは色々悩ましい。 でも、芸能界を引退した私が今さら復帰なんてありえないし・・・。

 

そんな考え事をしながら、私は夕食の準備をしていた。 子供達はリビングで、旦那が監督を務めるウルトラ仮面を見ている。 親の職業もあって、子供達は完全にSFや特撮オタクだ。 

 

・・・このまま成長したらどうしよう。

 

その時、『ピンポーン』と玄関のチャイムが鳴る。 誰か来たみたいだ。

 

子供達二人がダッシュで玄関に走って行って、お客さんを迎える。 まったく。 お客さんに失礼を働かないといいけど。

 

「ママ~! 怪しいお客さんが来たよ!!」

 

「こらっ! お客さんに怪しいとか言っちゃダメでしょ!」

 

「でも、本当に怪しいし・・・。」

 

「そんな訳無いでしょ? 本当にすいません。 子供達が・・・・。」

 

そう言って、私は玄関に行くと、全身紫色の趣味の悪いスーツに、Xのバッジが付いた同じく紫の帽子。 さらに顔に覆面を付けていて、目にはサングラスと言う、これ以上無い怪しい人が玄関に立っていた。

 

「フッフッフッ。 猿君。 久しぶりだな。」

 

「みっミスターX!! ほっ本当に怪しい! だっ、ダメじゃないの!! こんな怪しい人を玄関に入れちゃダメよ!」

 

「ママー。 でも、ここまで怪しいと、怪しすぎて逆に怪しくないよ?」

 

「そうだよ! 怪しすぎて、きっといい人だよ。」

 

「逆張りしないでよ! あんなの子供向けの特撮番組の中だけの話しなんだから! この子達、パパと一緒に観ている映画の影響を受けすぎだわ!! これは家族会議をしないと!」

 

「フッフッフッフ。 猿君。 母親役が完全に板についているではないか。」

 

「私の名前は山田和葉です! 間違えないでください!!」

 

「フッフッフッフ。 和葉君。 君は最近お悩みでは無いのかね?」

 

「なっ悩みなんてありませんが・・・。」

 

「和葉君、君が悪役を専門にやっていたせいで、君の大切な子供達が周りの友達に色々言われているのでは無いかね?」

 

「う゛っ。 でも、それは私の問題ですし・・・。」

 

「そんな悪役のイメージが染みついた和葉君を、我々、闇のゴルフ組織が新たなイメージでロンダリングしてあげようと言うのだ。」

 

「マネーロンダリングみたいな、後ろめたいような言い方をしないでください!」

 

「フッフッフッフ。 和葉君。 私が主催する闇のゴルフ組織について来れば、君の悩みは解決する事を約束しようではないか。」

 

「結構です!」

 

「和葉君。 しかし、これを見ても同じセリフが言えるかな?」

 

そう言って、ミスターXからスマフォを渡された。 

 

そのスマフォには、保母さんとして子供達の面倒を見る市子先輩が映っていた。

 

「和葉っ! 助けてっ!! 闇のゴルフ組織に捕まってしまって、闇のゴルフ保育園で子供達の面倒を見させられているの。 このままじゃ、闇のプロゴルファーの子供を育てる保母さんになっちゃう!」(日本を代表する女優による迫真の演技)

 

「市子先輩、やたら保母さんとして馴染んでいませんか?」

 

「フッフッフッフ。 和葉君。 このままでは、市子君が闇のゴルファーの保育をする保母さんになってしまうぞ? お遊戯会で、魔の曲打ちゴルフ殺法を披露してしまうかもな。」

 

「くっ卑怯よ。」

 

「ママ、ノリノリだね。」

 

「のりのり~。」

 

「いや、昔の癖で、こんな雰囲気になったらつい・・・。」

 

「フッフッフッフ。 細かい事は良いではないか。 このまま、恩人である先輩を見殺しにするのかね? 私について来れば、市子君は開放すると約束しよう。」

 

「わかりました。 ついて行くので、市子先輩を開放してください!!」

 

「それでは、一緒に行こうか。 それから、闇のゴルフ組織には、保育園も完備だから子供達も連れてくるといいぞ。 幸い、ちょうど保母さんも居るしな。 フッフッフッフ。」

 

「それって、市子先輩は解放されていないのでは・・・。」

 

こうして、私は子供達と一緒にミスターXに連れられて行くのでした。

 

―――― 和葉の物語 2nd Seasonに続く? ――――

 





真の勝者は、まさかの山田(スターウォーズ君)だったという驚愕の事実!!

結婚した山田和葉が子供達と一緒に、ミスターXに連れ去られた先はどうなるのでしょうか?

和葉を連れて行くミスターXの野望とはいかに!!

続きは、羅刹女編が終わった後を考えていますので、お楽しみに!

それから、次回から新しい話になりますので、ちょっと遅めの夏休みをいただいて、次回の投稿は8月31日(土)の予定になりますので、よろしくお願いいたします。

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