星アキラは自由に生きたいっ 作:Magical forest
--------------- 王賀美陸視点 ---------------
前のエントリーから5年、ついに俺はアカデミー賞の会場に戻ってきた。
前よりも男を上げた俺は、今度こそアカデミー主演男優賞を取ってやると意気込んで会場の入り口に飾られている巨大なオスカー像を見上げる。
今回の最大懸念事項はアキラだった。 もし今回アキラが主演男優賞にノミネートされた場合、獲得は確実とされていただけに、主演女優賞へのノミネートになって、主演男優賞の候補者は全員胸を撫でおろしている。
今年こそは! その意気込みを観客に見せて、俺のカリスマで観客を盛り上げていると複数台のリムジンが会場であるドルピーシアターの中に入ってきた。
俺は嫌な予感がしたので、すぐに奥に移動しようとしたが車から降りた女?に声をかけられてしまった。
「やあ、王賀美兄さんも来ていたんだね。」
その女は緑のドレスを着て茶色の髪、そして一房の白い前髪が絶妙なアクセントになっている。 ものすごい整った造形だ。 それ以上にその女からは耳とふさふさのしっぽが生えていて、それがピョコピョコ動いて人目を惹く。
「誰だ、お前は!」
「会長こと、シンボリルドルフだよ。 ションボリルドルフじゃないよ。 くっくっくくくくくっ・・・・。」
↓↓↓↓↓↓エアグルーヴのやる気が下がった↓↓↓↓↓↓
何が何だか全く分からなかったが、ただ一つ分かる事は、横に居る同じように耳を生やした女のやる気が死ぬほど下がった事だ。
「お前なんて知らないのだが。」
「酷いなぁ。 昔みたいにルナと呼んでほしい。 子供の頃はホテルの部屋で一緒に寝た仲なのに、私を忘れてしまったのかい?」
「お前やっぱり星アキラだろ!!」
「やっと気が付いたようですわね。 勝利よりもたった3度の敗北を語りたくなるウマ娘。 勝ち方を極めた、シンボリルドルフこと星キアラですわ。 またご一緒にアカデミー賞にノミネートされて嬉しいですわ。」
「もう、どこをどう突っ込んだらいいんだ!!」
「そうそう、王賀美お兄様に私達の仲間のウマ娘を紹介しますわ。 このやる気の下がっているエアグルーヴが明神ラーヤ。またの名を明神阿良也ですわ。」
「お前男だろ! 見た目がアキラより美人とかどうなっているんだよ!! それに男なのにそんな衣装は恥ずかしくないのか?」
「私が選び、仕立ててもらった衣装だ。これが誇りの証となるよう日々、修練を積んでいこう。」
「完全に役に入っているので無駄ですわ。」
「やべぇ。こいつの周りの人間はどうなっているんだ? そもそも、今こいつらって人間の役をやっているのか?」
「この紫色のドレスを着ているのがライスシャワーこと百城千世子ちゃんですわ。気弱で健気なのにダークな所が最高ですわ!」
「ユーモレスクのもう一人の主人公じゃねぇか!! お前、主演女優賞で男に負けてノミネートされなかったとか、悔しくないのか?」
「努力するのは当然です。そして、勝つことも、当然です。 ただ、負けたことで得られたものもありました。次は勝ちます。」
「もう本人が言っているのか、役が言わせているのか、ワケワカンナイヨー!」
「いい感じで、王賀美兄さんのキャラが破壊された所で、こちらの青いドレスの子が、トウカイテイオーこと夜凪景ちゃんですわ。」
「お前、助演女優賞にノミネートされているよな? そんな格好で登場して注目を集めて恥ずかしくないのか?」
「僕ね、会長みたいになりたいんだ。 皇帝って呼ばれてる会長みたいに、それが僕の夢、目標なんだ!」
「星アキラを目指すのは絶対にやめておけ!! トラブルメーカーが増殖してどうするんだ!?」
「ちなみに、この子は将来的にたぶん、わたくし以上にトラブルメーカーになりますわ。 」
「やめてくれ! これ以上ヤバイ人間を増殖させないでくれ。頼む!!」
「それで、こちらの赤いドレスを着ている方が景ちゃんのお母さんである夜凪ママですわ。 助演女優賞にノミネートされた景ちゃんの応援に来ましたの。 今回はマルゼンスキーで来てくれましたわ。」
「どう? ナウなヤングにバカウケなドレスよ。 モチのロンで間違いナッシングよ!」
「すごい美人だな。 若いのには絶対に出せない色気がある。 本当にこの美人が夜凪の母かよ。 しかも娘よりもキャラが濃いじゃねぇか! この娘にしてこの母ありだな。 本当に素人かよ!」
「問題ナッシ~ング☆ ウマ娘のコスプレで王賀美君のハートをゲッチュ~よ☆」(ウィンクする夜凪ママ)
「・・・・私もドン引きするぐらいに役に入っていますわね。 マジで景ちゃんの才能は母親譲りですわ。 こんな所で親子の才能を確認するとは。」
「お前がドン引きしてどうするんだよ!」
「ちなみに夜凪ママの後ろに居るのが、景ちゃんの弟のルイ君と妹のレイちゃんですわ。 今回はルイ君がサトノダイヤモンドで、レイちゃんがキタサンブラックの格好で参加してくれていますわ。」
「お姉ちゃん頑張ってね!!」
「女の子の格好なんて恥ずかしいよ~(〃ノдノ)」
やべぇ、どちらも可愛い。 しかもルイって男だろ? 男なのに女装で頬を赤らめて恥ずかしがっているのがすごくポイントが高い。 いけない扉を開きそうだ。
「可愛くても手を出したら犯罪ですわよ。」
「おっ、お前!! 主演男優賞にノミネートされている俺に何ていう濡れ衣を着せているんだ!」
「おそらく、王賀美お兄様はワイルドな性格を演じる反動で、絶対に可愛い物好きですわ。 お二人を誘拐するのはやめてくださいまし。」
「俺を勝手に妄想で犯罪者にするな!!」
「でも可愛いでしょ?」
「・・・確かにかわいいが・・・。」
「はい。 逮捕ですわ。」
「ちょっ、おまっ。」
「からかうのはこのぐらいにして、こちらの白いドレスのウマ娘が、柊雪が扮するナイスネイチャですわ。」
「ども。 柊雪です。 今回こそはみんなの注目を集めないで地味に行きます。 おなじみ3着!なんちゃって。」
「お前、今回のアカデミー賞は、最多エントリーで最大の注目を浴びている監督じゃねぇか! 地味とか絶対に無理だろ。 目立つ気が無いなら、何でこんなコスプレで来たんだ!? しかも働く系の健康美人で絶妙に似合っているし。」
「いや、この濃いメンツの中なら、逆に存在感を消せるかなと・・・。 木を隠すなら森、森を隠すならアキラ君の家みたいな。 てへっ。」
「アキラの家でけえな。 しかも、アキラの家って都心では確かに広い方だが、そこまででかくはないよな?」
「う~ん。 存在感が大きい感じ?」
「・・・お前も間違いなく、この破天荒なメンバーの一員だよ。」
「そんな事は無いです。 私は一番の常識人ですっ。」
「もう、そんなコスプレをしている時点で、常識人とか聞いてあきれるぞ。 もしかして、この中で実はこいつが一番ヤバイのでは?」
「そこに気づくとは、流石は王賀美兄さんですわね。」
「そのセリフは全く嬉しくない。」
「続いては、映画で一緒に共演してくれてからの仲良しである、パルファン・クールパレ嬢ですわ。 もちろん彼女もゴールドシチーでの参戦ですわ。」
「お前、クラシック界の期待の新星だろ? こんな所でコスプレしていいのかよ!?」
「クラシックとコスプレ、どっちもやるよ。 今はね。 マネジは呆れてるかも。 だけど、諦めたくないし。」
「うわっ、こいつもやべぇ。 コスプレだけじゃなくて、こいつも役に入っていやがる。 しかも役者じゃねえのに!」
「着ぐるみの適性がある以上、やはりコスプレ適性もSランクですわ。 見事に洗脳がはまりましたわね。」
「お前、今、洗脳って言っただろ!? 彼女に何をしたんだ!?」
「なっ、なんの事ですか!? わたくしには身に覚えがないセリフですわ!」
「ねぇ、次はなに(のコスプレ)する? アタシはなんでもいいけど・・・。」
「やっぱりコスプレは最高ですわね!」
「こいつも、アキラに関わったばっかりに・・・。」
「なお、彼女のコスプレ演奏は、Youtubeで世界的にとんでもない再生数を叩き出していますわ。 普通のドレスでの演奏動画との再生数に明らかな違いが出るのが、みんな業が深い所ですわ。」
「それは何となくわかる。 確かにこんな美人がコスプレして神業のヴァイオリン演奏するとかバカウケだろ。」
「それから、長編アニメーション部門でエントリーされた、『走れケイティ』の製作者達である、監督の宮森あおいさん、原画の安原絵麻さん、声優の坂木しずかさん、CGの藤堂美沙さん、脚本家の今井みどりさんですわ。 今回は、宮森あおいさんがウイニングチケット、安原絵麻さんがビワハヤヒデ、坂木しずかさんがナリタタイシン、藤堂美沙さんがフジキセキ、今井みどりさんがマヤノトップガンでの参戦ですわ。」
「「「「「よろしくお願いします。」」」」」
「お前達、それでいいのかよ!!」
「もう、ここまで流されちゃったら、女は度胸と言いますか、着てみると意外にかわいかったですし、何よりも日本のアニメーションを伝える製作者としてこれ以上の恰好は無いと、アキラさんも言っていましたし・・・。」
「それ、絶対にアキラに騙されているぞ!!」
「やっぱり? でももうここまで来たら引き返せませんし・・・。」
「アニメーターとして、日本文化のすばらしさを伝えるのは義務ですわ。 そこに疑問を挟む余地などありませんわ。」
「やはり元凶はこいつか・・・。」
「そうだ。 アキラにお灸を据えていいぞ。」
そう言って、少し気配のきつい黒いドレスの女が車から降りてきた。 当然、ウマのような耳としっぽが付いている。
「三坂七生さんですわ。 日本を代表するコスプレのプロフェッショナルで、もちろんご本人もナリタブライアンでの登場ですわ。」
「こんな大惨事を引き起こしていながら、これからアカデミー賞が始まるから、怒りに任せてアキラをぶん殴れない。」
「おおっ。 今までで一番の常識人が出てきた。 全員、アキラに毒されてかなりの非常識人の中で、一番の毒されていない常識人だ。」
「ちなみに、今回のドレスや化粧をプロデュースしてくれたのは彼女ですわ。」
「ダメじゃねえか! 常識人だっていう、第一印象を返せ!!」
「仕方が無いじゃない! これだけ顔面偏差値が高い連中を揃ってコスプレコーディネートして、しかもアカデミー賞の会場に殴り込みするなんて、そんな欲望を抑えられる人間なんて居る? いや、絶対に居る訳が無いじゃないの。 手伝ってくれた、衣装作家さんやコスプレ店の店長さんも超ノリノリだったし。」
「結局、自分の欲望に負けているじゃねえか!」
「欲望に忠実で何が悪いのよ!」
「少しは、常識と欲望を戦わせろよ!!」
「でも、会場はすごく盛り上がっているみたいよ?」
そうして、我に返って会場を見ると、ドルピーシアターの入り口に集まっている観客や記者などが、このメンバーの登場で熱気に包まれているのを感じる。 ドレスで正装しているとは言え、前代未聞のコスプレで入場して来たメンバーにドン引きする様子すらなくて、熱狂的に歓迎しているの声が肌に響く。 期待通り、いやそれ以上に最高という観客の反応だ。
カメラマンやディレクター達も、アキラ達御一行をカメラに収めるので大忙しだ。 おそらく、コスプレでアカデミー賞の会場に来たアキラ達を咎める人間は誰一人居ない事だろう。
・・・こいつ、もしかして周囲の人間では飽き足らずに、ハリウッドすら毒しやがったのか?
会場の前に集まった観客が興奮して今にも爆発しそうだ。 まるで10万人のコンサート会場で、アンコールを歌う歌手に熱狂する観客のような盛り上がりだ。
俺は、ノリノリでカメラマンにポーズを決めているアキラを見て、そのヤバさに戦慄した。
そして、巻き込まれた俺は、入口で感慨に浸らずに、どうしてとっとと会場に逃げなかったのかと、すごく後悔した。
いつも読んでいただいている方、感想を書いていただいている方、皆様本当にありがとうございます。
皆様の応援もあって、ついに300話に到達いたしました。
今回で300話という事で、100話に引き続き、アカデミー賞の会場への殴り込みとなりました。
主演〇〇賞(ネタバレ済み)の栄冠はアキラ君に輝くのでしょうか?
次回は掲示板回の予定です。
引き続き、アキラ君の活躍?にご期待ください。