星アキラは自由に生きたいっ 作:Magical forest
景ちゃんの感動のスピーチの後、しばらくの混乱を見せたけどアカデミー賞は平常に戻ってヘアスタイリング賞や衣装デザイン賞などの授賞式が行われた後に、ついに音響賞の発表となった。
「お願いっ。 私が選ばれませんように! 選ばれないで! 選ばれないで! お願いだから~! 神様っお願いします~!!」
僕の後ろで雪ねぇちゃんが何やらお祈りしていた。 今まで彼女は、これほどまでに真摯にお祈りをした事は無いと思うぐらい、真摯な神頼みをしていた。 見方によっては、受賞しますようにと清楚にお祈りをする女性に見えなくもない。
「今年の音響賞は、Yuki Hiiragi! ユーモレスクが受賞しました!!」
「あああ~っ! そんなっ! あの景ちゃんのスピーチの後になんて・・・。 うっぷっ。」
雪ねぇちゃんは絶望したような表情を見せる。 あたり前だけど、普段から神様を真摯に信じていない人間がこんな時だけ神頼みをしたところで、神様が答えてくれるはずも無かった。 そして早くも胃が悲鳴を上げ始めたようだ。 がんばれ雪ねぇちゃん!(他人事)
僕は、シカゴ交響楽団のじっちゃんと、協力してくれたレコーディングディレクターさん、パルファン、そして早くもグロッキーになって変顔になっている雪ねぇちゃんをずるずると引きずって僕は舞台に上がった。
「Yuki! おめでとうございます!! イーファの歴史的な演奏を余す事無く観客に伝えた最高のコンサートシーン。 パルファン嬢とシカゴ交響楽団のコンサート、そして音楽をテーマにした映画全般と、クラシックのシンプルで素晴らしい音響などが余す事無く評価されました!」
「ああっ。 はいっ。 ありがとうございます。」
「また緊張されているのですか?」
「はい。 死にそうです。」
「まだまだ授賞式は続きますよ。」
「がんばります・・・。」
こうして、雪ねぇちゃんはスピーチの檀上にレコーディングディレクターを呼んで、彼に本当に助けられた事、彼のテクニックが素晴らしくて、深く学べたこと、出演者への感謝などを述べて、最後にレコーディングディレクターさんの賛辞と感激の言葉でスピーチを閉じた。
「うむ。 非常に無難だ。 これは適度に刺激がありつつ、非常に無難なスピーチ。 ある意味アカデミー賞の普通スピーチとして題材になるほどに無難なスピーチだね。」
「うううっ。 アキラ君は、一体私に何を期待しているのよ!」
「雪ねぇちゃん、持ちネタのゲロはまだ早いよ?」
「持ちネタじゃないんだから! まぁ、ひとつ経過してなんとか峠は越えたわ。 これなら次からは大丈夫かも。」
「なんかフラグが立った気がする。」
「雪さんなら大丈夫ですっ。」
「その景ちゃんの、布団の中から飛び出て浮遊する羽毛ぐらいの軽い根拠しか無い言葉もフラグすぎる。」
「もうっ。 アキラさんは酷いですねっ。フラグなんて立っていませんっ。」
「そう願いたいわ・・・。」
その後の脚本賞や編集賞。もちろんあまりにも斬新な撮影手法や編集手法が評価されて雪ねぇちゃんは難なく受賞。その度に絶望的な表情を浮かべる雪ねぇちゃん。
脚本賞では、雪ねぇちゃんと絵麻ママ、千世子ちゃんがアメリカのご両親とステージに上がって、みんなで喜びのスピーチ。
千世子ちゃんもアメリカのご両親と喜びを分かち合う。
そして、編集賞ではハリウッドの編集ディレクターと一緒にステージに上がって、ハリウッドの編集ディレクターに教えを乞いて、素晴らしい技術を惜しげも無く教えてくれた編集ディレクターさんへの感謝のスピーチ。
感動的な光景だ。 でも、景ちゃんのスピーチと比べるとかなり無難だ。 景ちゃんのスピーチを受けて緊張MAXの後に、空元気でなんとか持たせている雪ねぇちゃんの胃の耐久力は確実に低下している。 周りは騙せても僕は騙せないよ。
ナイスネイチャだけあって、目立たなくて非常に無難なスピーチ。 まぁ、ナイスネイチャがスピーチしているだけですでにものすごく面白いんだけど、やっぱり雪ねぇちゃんは美人だけど、基本的に地味なので、もうひと味パンチが欲しい。
地味でも雪ねぇちゃんなら・・・雪ねぇちゃんならきっと何とかしてくれる・・・!!
そういう目をしている・・・。
僕は、段々と積み重なるプレッシャーによって、段々と死んだ魚のような目になっていく雪ねぇちゃんを見て、今後の展開に期待した。
そんな感じで雪ねぇちゃんが、着々と死亡フラグを積み上げているのを横目に、沢山の受賞を前にウマ娘御一行の表情は明るい。 和気あいあいって感じだ。
でも、そんな中で、非常に緊張している5人のウマ娘達。 そう。 武蔵野アニメーション御一行。
次が長編アニメーション賞の番なのだ。