星アキラは自由に生きたいっ   作:Magical forest

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アカデミー賞長編アニメーション部門

 

-------------安原絵麻視点-------------

 

次々に受賞者が決まって行くアカデミー賞の会場で私達5人は息を呑んで見守っていた。

 

次が長編アニメーション部門の受賞者の発表。ノミネートされた長編アニメが次々と紹介されて行き、ついに私達の「走れケイティ」の番になった。

 

「さあ、長編アニメーション部門の最後のご紹介は世界中で大ヒット。今世界で最も視聴されているアニメ、『走れケイティ』の劇場版です。」

 

「神の啓示を受けて見習い悪魔として様々な世界を旅するケイティ。 ドジな見習い悪魔のケイティを取り巻く人々は、人情と笑いを交えながらも、主人公のケイティが悪魔とは何か? 悪とは何か? 対照的に正しいとは何かを求めて旅をする模様は、世界中の多様な価値観を人々に深く考えさせるアニメにもなっています。」

 

「劇場版も子供から大人まで、世界中の国々で大人気で、今回の劇場版はアメリカでもユーモレスクに続いてのロングラン上映です。」

 

「また、その多様性と寛容の精神から、発展途上国やBRICSを中心に非常に大きな支持を得ており、ケイティはピースメッセンジャーとして、アニメのキャラクターとして初めて国連の親善大使として任命されて、各国の国連支援の物資や説明書などに、ケイティのキャラクターが使用されております。」

 

「最後のノミネートは、このような数多くの偉業を成し遂げている、走れケイティです!!」

 

「さあ、この中から長編アニメーション部門のアカデミー賞を受賞する作品は、どの作品になるでしょうか!!」

 

ドラムロールが鳴り、会場が暗くなって、スポットライトが回る。

 

「お願いっ! 受賞しますように!!」

 

隣に居た、おいちゃん(宮森あおい)の声が聞こえた。 その声を聞いて私もこれまで無かったぐらいに緊張が高まった。

 

そして・・・。

 

「今年の長編アニメ―ジョン部門に選ばれたのは、劇場版走れケイティ!! おめでとうございます!!」

 

私達の走れケイティがアカデミー賞を受賞した・・・。

 

「やった――――すっ!」

 

りーちゃんが喜びの声を上げた。

 

私は、起こった事が頭では理解できるけれども、あまりの事に体が全くついて行かなかった。 私達は5人揃って居た訳だけど、半分は喜んで、半分は呆然として動けないでいる。

りーちゃんも喜んでいるけど、現実とは思えなくて何をしたら良いのか良く分からないようだ。

 

「さあ、行きますよ。」

 

誰かから声をかけられて私達は、はっと我に返った。

 

私達に声をかけたのは何とケイティだった。

 

「「「「「えっ?」」」」」

 

ケイティはアニメのキャラクターで、現実には居ないはずだ。 でもまるで画面から抜け出てきたようなケイティがそこに居た。

 

「「「「「ええええっっっっ!????」」」」」

 

混乱する私達は、アニメの中から抜け出して来たケイティに連れられてステージに向かった。

 

ケイティを先頭に授賞式のステージを目指す私達。会場に居る人も大きく動揺している。

 

容姿、仕草、声、服装、背丈、動作、性格、くせなど、全てが私達の作ったケイティだった。 私達は毎日彼女と向き合っているのだ。 だから誰よりも彼女を理解している。 理解しているからこそ、現実に居るはずの無い彼女の存在が信じられなかった。 物語から登場人物が抜け出してくるお話が目の前で起こっているのだろうか?

 

私達はこの状況で混乱の極致に達していた。

 

「私達は夢を見ているっすか?」

 

りーちゃん(今井みどり)の声が聞こえた。

 

確かに。アカデミー賞を受賞した上に、実物のケイティが現れるなんて、こんなに出来過ぎな上に変な展開なんてある訳が無い。

 

「こんな変な展開は現実では考えられないし、確かにこれは夢かも・・・。」

 

おいちゃんが同意した。

 

「そうよね。 アカデミー賞を受賞した上にケイティが現れるとか意味わかんないもんね。 きっと私は今寝ているんだわ。」

 

「そっ、そうだよね。 こんなに都合が良くて意味がわからないの現実にある訳ないもんね。 あ――っ。 でもアカデミー賞、受賞したかったな~。」

 

ずかちゃん(坂木しずか)やみーちゃん(藤堂美沙)もこれは夢である事に納得した。

 

確かに。私も夢の中なのかもしれない。 夢が覚めたら、きっといつもの家のベッドで、朝になってまた沢山の仕事に追われるのだろう。

 

私は溜まっている仕事を思い出そうとしたけど、今は日本では無くて、実際にアメリカに居る気がする。 夢の中のせいか、何か強烈な矛盾と齟齬を感じた。

 

「みんな何を言っているんですか? ちゃんと現実で『走れケイティ』がアカデミー賞を受賞したのに。」

 

そう言って、ケイティは振り向きながら、見る人の心を虜にするウィンクを私達に見せてくれた。

 

ウィンクをする際に一瞬だけ演技を解いて、普段の彼女を見せてくれたから、ケイティの正体が分かった。 あのままだったら、ずっとケイティが現実に居る夢を見ていると、皆で思い込んでいただろう。 あるいは、アニメの中からケイティが実際に抜け出した来たと勘違いし続けるか。

 

私達は、これは現実で、このケイティは、ある女優が今、目の前で演じている事を理解した。

 

演じているのは夜凪景。 今回のアカデミー賞で17歳ながら助演女優賞を受賞した天才女優である。

 

もちろんケイティは、元々夜凪景がモデルであり、VTuberのケイティが元ネタだ。 でも、アニメが続くのに従って、ケイティと夜凪景は別のキャラクターとして、性格やデザインが変わって、ほぼ別の存在として、私達のアニメの中で生き続けてきた。 でも、いま夜凪景が演じているケイティは、アニメの中に居る、見習い悪魔のケイティそのものあって、誰が見てもケイティと判断されて、夜凪景とは全く結びつかない。

 

私達は、F4の中でも「演じさせたら誰よりも天才」と言われている夜凪景の恐ろしさを、実際に目の前で目撃した。

 

同時にF4の中で『彼女が一番地味』の意味が良く分かった。 演じさせたら、文字通り別人になるのだ。 だから、彼女が演じている役と、彼女本人のパーソナリティが結びつかない。

 

彼女が出演する舞台や映画を観た人達は、夜凪景が演じる役を見るのではなくて、実際の役の人物が実在していると心の奥で勘違いするのだろう。 だから、夜凪景本人と演じた役が結びつかずに、彼女自身を見ても思ったよりも地味という感想になる。

 

私達も、普段の景ちゃんとしか接していなかったから、景ちゃんはいい子だって言う感想だけで、彼女の真の凄さや、恐ろしさを全く理解していなかった。

 

あの四人ってみんなこのレベルなの!? VTuberのママとしてよく知っている四人の、役者としての別の顔に驚愕する。

 

それに、こんなサプライズを景ちゃんだけで考えて、実行できる訳が無い。 このサプライズを考えたお祭り好きのフィクサーが間違いなく別にいる。

 

私は、このサプライズを裏で企画したであろうフィクサーに目を向ける。 もちろんアキラ君だ。

 

目を向けた先には、アキラ君ではなくて、腕を組んでニヤリとした表情をする生徒会長のシンボリルドルフがそこに居た。 しかもプリティーダービーの方じゃなくて、シンデレラグレイ版のヤバイ方の会長だ。

 

同じ容姿のはずなのに、一目見ただけでなぜか違いがわかる。 何でアキラ君がシンボリルドルフのコスプレにしたのか、今になって理解してしまった。

 

「役者を無礼(ナメ)るなよ。」 なぜか私の心の中にそんな声が聞こえてくる。

 

走れケイティがアカデミー賞を受賞しないかもしれないのに、この瞬間のために、どれだけ仕込んでいるのよ!? 私達の背筋に冷たい汗が伝う。

 

アカデミー賞の受賞を発端に驚きの展開すぎて、みんなの頭が処理しきれずに、ステージ上に着いた時には、私達5人は揃って真顔になっていた。

 

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