星アキラは自由に生きたいっ 作:Magical forest
-------------安原絵麻視点-------------
私達は揃ってアカデミー賞のステージに立った。
もちろん、ケイティも居る。
「あのっ、これは・・・。このケイティは一体・・・。」
動揺する司会者さん。
「今回、走れケイティがアカデミー賞を受賞した事で、ケイティのモデルでもあり、声優でもある夜凪景ちゃんが、特別にケイティとしてステージに上がってくれています。」
「みんな、よろしくね!」
おいちゃん(宮森あおい)が代表して状況を説明してくれる。
流石は元制作進行のエース(現監督)。 天元突破したコミュ力で場を上手くさばいてくれる。 私だったら、オロオロするだけで、この状況を上手く収められなかっただろう。 この辺は高校生の頃から全く変わっていない。
「なっ、なるほど。 本物ケイティが現れたのかと思ってビックリしました。」
司会者さんは有名な女優さんだけど、その女優さんでもぱっと見で分からないぐらいに景ちゃんの演技は完璧だったみたいだ。
この説明を受けて、助演女優賞を獲得した女優の演技に、会場でも驚きの声が上がっている。
「こんな所に本物のケイティが居るなんて、ケイティを理想の女の子と思っている人も沢山居るので、あとで大騒ぎになりそうですね。」
「アカデミー賞を受賞したみんなの喜びから力をもらって、今日だけアニメからやってきました。 本当に特別なんですよ?」
上手い。流石は天才女優。アドリブもすごい。
「皆さんは同じ高校のアニメクラブの出身なのですよね。 みんなで夢を叶えた感想はどうですか?」
「あまりにも色々と非現実的な事が起こりすぎて信じられないです。」
マイクを向けられたみーちゃんが答える。
「皆さんはユーモレスクのシナリオにもアドバイスを送っていて、エマ(Ema)は絵麻さんから、イーファ(Aoifa)はあおいさんから、坂木兄弟の苗字は坂木(しずか)さんから、兄の名前はみどりさんから(緑)、妹の名前は美沙さんから取られています。 Midori、あなたがシナリオライターとして関わった、ユーモレスクと走れケイティの両方がアカデミー賞を席巻してどう思いますか?」
「私達がこんな、世界で評価される作品に関わっているなんて、夢みたいっす。 本当にこの瞬間に目が覚めて、これが寝ている時の夢だったら絶望するっす。」
りーちゃん(今井みどり)も喜びながら答える。
「Shizuka! あなたは声優として、ケイティのキャラクターに命を拭きこんで来ましたよね。 貴方や登場した多く声優さんに、アカデミー賞を受賞した感想を届けてください。」
「みんな~! みんなのがんばりとチームワークで、私達の走れケイティがアカデミー賞を取ったよ! みんな~最高だよ!!」
ずかちゃん(坂木しずか)はアカデミー賞を受賞して、舞台の上でかなりハイになっている。 いや、私も含めてみんなハイだ。
普通のドレス姿なら、そこまで容姿に自信が無い私達は、ここまではしゃぐ事は無かっただろう。 でも、今はみんなウマ娘のコスプレをしているせいで、生まれ変わったような感じがして、その喜びと共に、非日常的な体験から現実の自分を忘れて楽しんでいた。 おそらく、コミケとかでコスプレをする子達も、多かれ少なかれこんな心理状態になっているのかもしれない。
「EMA! あなたの描いたキャラクターがアカデミー賞を受賞しました。 今の感想は?」
「最高です! 今、ドーナッツの誓いが果たされた気がします。」
「ドーナツの誓いとは?」
「えーと・・・。」
私が説明に詰まっていると、おいちゃんが助け舟を出してくれた。
「高校の時にみんなでアニメ同好会を作った時に、みんなでアニメーション作成をする誓いをドーナッツにしたのです。それがドーナッツの誓いです。 みんなのアニメが評価されて、今ここに、ドーナッツの誓いが果たされました。」
「なるほど。 ドーナッツに誓ったというのは良くわかりませんが、そこで誓った皆さんが、誓い通りのアニメを作り上げたのですね。 これは素敵な話ですね。」
「でも、誓いが果たされたのなら、また新しい誓いが必要ですよね?」
「「「「「えっ?」」」」」
ケイティの言葉にみんな疑問の声を上げた。
「チヨコエルから伝言を預かっています。『こんなこともあろうかと新しい誓いのためのドーナッツを用意しておいたよ!☆ミ』」
「ドーナッツ?」 ずかちゃんが首を傾げた。
「今朝、冷蔵便で皆さんの地元の山形のひょうたん屋さんからドーナッツが届いて、アキランから渡されました。」
そう言うと、ケイティのトレードマークになっている肩掛けバッグからドーナッツが出て来た。 それは、昔食べていたドーナッツそのものだった。
あまりと言えばあまりの展開に私達は絶句した。
そう言えば、ケイティ劇場版の打ち上げの時に、この話で盛り上がったっけ。 それでアキラ君と千世子ちゃんがドーナッツの種類とかまで詳しく聞いて来た事を思い出した。 あの二人がこの瞬間を、私達の最高の思い出となるようにプレゼントしてくれたんだ。
みんなドーナッツを一つ一つ手に取って行く。
もしも、本当にアカデミー賞を受賞したらおいちゃんがスピーチをする事になっていたけど、おいちゃんもその気は無くなったみたいだ。
「なんか涙が出て来たっす。」
「私も。」
「私もすごく感動してる。」
「こんな所で誓いが果たされるなんて。」
「さあ、新しい誓いをしよう!」
おいちゃんの声に、私達はお互いの顔を見て頷き合う。 スピーチの内容は決まった。
「つらい時もあったけど、まさかこんな日が来るとは思わなかった。みんなありがとう!」
「ほんと、ほんと。 私達5人が一人も欠けずに一緒にアニメを作れているなんて本当に奇跡!」
「私達が同じ時を過ごして来れた事、本当に感謝してるわ。」
「高校生の時に見た夢が叶うなんて。」
「同じ時を過ごして来た最高の仲間たちっす!」
私達は5人全員でスピーチをするマイクの前に立つ。 私達の目から涙が止めども無く溢れた。 私達5人が上山高校の制服を着て教室でドーナッツを食べたあの日が蘇る。
「これからも絶対に必ずなんとしても!」
あの日のように、ずかちゃんから誓いを始める。
「この5人で!」
私が声を張り上げて、
「沢山の人達に楽しんでもらえるアニメーション作品を」
おいちゃんも自然と言葉が出る
「作り続けることを誓いま」
それにみーちゃんが続いて
「す!」
元気にりーちゃんが締める。
そして最後に・・・。
「「「「「ドンドン ドーナッツ! どーんといこう!!」」」」」
私達5人の新たなる誓いは、大きな声で元気にアカデミー賞の会場全体に響き渡ると同時に、沢山の人達が立ち上がって、私達の誓いに大きな拍手と賞賛をくれた。
私達は上山高校アニメーション同好会から、アカデミー賞受賞までの軌跡が脳裏によみがえって来て、感極まって5人で泣いてしまった。
「私達、アニメ制作を続けていて良かった。」
「本当ね。」
「上京してきて、アニメ制作でこんな栄誉をもらえるなんて。」
「みんなでアニメーション作る夢を叶えられったっすね。」
「これからも夢を叶え続けるのよ。」
「「「「「おーーーーっ!!」」」」」」
こうして、私達のスピーチと言う名の新たなるドーナッツの誓いは、アカデミー賞のステージの上で、全世界の人達を証人に誓われたのであった。