星アキラは自由に生きたいっ 作:Magical forest
雪ねぇちゃんなんだけど、もうちょっと面白いスピーチを期待していたんだけど、緊張しながらも無難にアカデミー賞の受賞をこなしていた。
複数のアカデミー賞をもらえるのは名誉なんだから、良いのだけどイマイチ面白くない。
「ねぇ、千世子ちゃん。 雪ねぇちゃんにもっと面白いスピーチをしてもらうためにはどうしたら良いと思う?」
「呆れた。 あんなに思わせぶりな邪悪な笑みを浮かべたのに何も考えていなかったの?」
「仕方が無いじゃん。 思わずズームアップされちゃったんだから、何か面白い事をしないと星アキラの名が廃るよ。」
「アドリブが上手いのも考え物ね。 それで自分が追い詰められていたら世話ないわ。」
「全くもってその通りだよ。千世エも――――ん、なんとかしてよ。」
「アキ太君は本当にダメね。 アキラちゃんが考えている通り、とりあえず雪ちゃん自身の声を聞いてみたら?」
「やっぱりそうだよね。 基本にして王道。 雪ねぇちゃんにはナイスねーチャンを卒業してもらおう。」
「ナイスネイチャね。 そうね。 これだけアカデミー賞を受賞したのだから、ずっとウマ娘なのもつまらないわ。 そろそろ本当の柊雪を見たいわよね。」
「その通りだよ。 流石は千世エもんだ! ナイスねーチャンにコスプレする事が雪ねぇちゃんの心の鎧になって、ただの優等生になっているんだよ。 そんなすべての教科で満遍なく80点を取るような優等生なんて面白くないよ。」
「雪も大変だな。」
「完全に他人事で、授賞式を抜け出してハリウッドスター数人と夜の街に繰り出そうとしている阿良也の方がヤバイよ。」
「たわけ! 他人事だろうが!!」
「すっごくダメなエアグルーヴ キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!! と言う事で、雪ねぇちゃんは次回からナイスねーチャンのコスプレ禁止だから。」
「私が会話に入っていない事を良い事に、好き勝手に言って私の運命を勝手に決めないでくれる? それに大体受賞し終えて、もう受賞しないから大丈夫よ。」
「フラグ乙。」
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「監督賞は、柊雪監督! ユーモレスクです!! おめでとうございます!!」
「あっ・・・・あああああっ・・・・・。 そんな・・・。 オワタ。」
「ということで、千世子ちゃん、ウィッグとしっぽ取って。」
「いいわ。 これですっぴんの柊雪ちゃん誕生よ。」
「えっ、ナイスネイチャのコスプレを返して。 カエシテ...カエシテ...。」
「すごい。 雪ねぇちゃんがガタガタ震えているよ。 これだよ! これが見たかったんだよ!」
「アキラさん、鬼ですっ。 すごく鬼畜ですねっ。」
なぜか、ケイティのコスプレを終えて戻って来た景ちゃんは、すっごく嬉しそうだ。 僕と景ちゃんのどっちが鬼畜かは意見が分かれる所だろう。
「と言う事で、雪ねぇちゃん、一人で行ってきてね。」
「えっ、みんな来てくれないの? 私、監督賞を取ったんだよ? すごくおめでたいんだよ? 快挙なんだよ? みんな祝ってくれないの?」
「もちろん、僕も嬉しいよ。 だからみんな、僕達じゃなくて雪ねぇちゃんの言葉を聞きたいのだよ。 という事で雪ねぇちゃん、一人でいってらっしゃい(ニコッ)」
「さっ最悪~っ!」
そう言って、雪ねぇちゃんは胃のあたりを押さえながら、顔を真っ青にしてトボトボと授賞式のステージに上がって行った。 アカデミー賞を受賞したのに、こんなに真っ青になりながら寂しくステージに行く人が今だかつて居ただろうか? いや居ない。 すでにこの映像だけで面白い。
背中が煤けている雪ねぇちゃんがステージに立って、グロッキーになりながらインタビューに答える。 今まであんなに騒がしかったユーモレスクのメンバーがし~んとしている事で、みんな何事かと見ていた。
雪ねぇちゃんの笑顔が引きつりながらオスカー像をもらうと、オスカー像を抱えながら、トボトボと寂しくスピーチのマイクの前に立った。
雪ねぇちゃんは、真っ青になって、マイクの前で下を向いてブツブツと何かをつぶやいてから、ゆっくりと顔を上げると、真っ青だった顔色は平常にもどり、目の座った柊雪が現れた。
「出た。やたらと強くて肝が据わった柊雪だ。マジで二重人格で草生えるよ。」
「別に二重人格って訳じゃないと思うけど、雪ちゃんって追い詰められた後の反転が凄いわよね。 とても興味深いわ。」
「雪さんの心理状態に興味しんしんですっ。」
「みんな何気に酷いよな。 最高に面白いけど。」
「阿良也が一番酷いw これは雪ねぇちゃんの心を守るための防御反応で、おそらく一人で部屋に閉じこもって追い詰められていた子供の頃に生まれた物だね。 ここまで追いつめないと強い雪ねぇちゃんは出てこないからね。 本当の雪ねぇちゃんがどんなスピーチをしてくれるのか、すごく楽しみだよ。」
「普段の雪ちゃんも強い方も、どっちも本当の雪ちゃんだと思うけど。 片方をニセモノのように言うのはかわいそうよ。」
「それはそう。 どちらも雪ねぇちゃんの一面。 でも雪ねぇちゃんがトラウマを耐えるために作った今の人格の方が、より原初の雪ねぇちゃんが色濃く残っているんだよ。」
「良く知っている人でも、全く別の面があるって、人間ってすごく面白いですっ。」
「うーん。景ちゃんが、ある意味僕達よりも天元突破してどんどんヤバくなっている気がする・・・。」
「もう手遅れね。」
こんなやり取りの後に、ポツンとただ一人孤独に立った雪ねぇちゃんがゆっくりとスピーチを始めた。
「私は子供の頃から映画ばかりを観てきました。 私には映画しかありませんでした。」
この瞬間こそ、雪ねぇちゃんによるハリウッドの歴史に残るスピーチが始まった瞬間だった。