星アキラは自由に生きたいっ 作:Magical forest
------------------ 夜凪景視点 ------------------
「本当に一緒に金沢へ行って良かったんですか?」
「どうしたの? 景ちゃん? こんなに大人数でおしかけてやっぱり迷惑だった?」
「そんな事ありませんけど、みんなでお母さんの実家に行くとは思わなくて。 お正月とか忙しいのではないですか?」
「景ちゃん、芸能人がなんでみんなお正月にハワイに行くと思う? 正月のテレビ番組はみんな録画の番組ばっかりだから、事前に全部収録済みなんだよ。 それに、年末の生放送とかは僕が出るよりも、事務所の後輩に任せた方が露出やチャンスが増えて良いからね。」
「そうね。 私の両親もお正月が忙しくて、家に居ても仕方無いし、ちょうど良い機会だわね。 生放送関係の仕事も入れていないし。」
「阿良也さんは?」
「そもそも劇団の公演が無い。別に正月に収録も無い。そして夜凪ママのご飯も無い。結果、付いて行くのが吉。」
「アキラさん、でも芸能人なら金沢じゃなくて、ハワイとかグアムとかでも良かったのではないですか?」
「そんな事無いよ。 旅行に行くというのは新しい体験をしに行くものだよ。 ハワイとかグアムとかの体験とか、バラエティの仕事で昔やったから、お金を払ってまで行くものでもないよね。」
「そうね。いつでも行けるリゾート地と、そんなにチャンスがあるとは思えない、景ちゃんの実家。 どちらを取るかは簡単に判断できるわね。」
「流石は千世子ちゃんだ。 さすちよと言っておこうか。」
「アキラちゃん、妙な略し方しないで。」
「でも景ちゃん、私まで行っちゃっても良かったの?」
「雪さんも大歓迎ですっ。ひいおばあちゃんも是非来てほしいって言っていました。」
「それでも、結構な人数になっちゃったけど大丈夫なの?」
「お正月は元々本家に何十人と集まるので、全然大丈夫ですっ。」
「みんな、にぎやかになって喜ぶと思うわ。 今年はいつも以上に本家に人が訪ねて来そうね。」
「お母さん、お土産は本当にアメリカのお土産で良かったの?」
「東京のお土産よりも珍しいから大丈夫よ。 大量のスターのサイン入り色紙とか、お土産としても凄いし、今年は何よりも、景がアカデミー賞を受賞したんだから、これ以上のお土産は無いわ。」
「お母さん、今年もあの舞を踊れるのかな?」
「去年の件で龍神の巫女だって認められたんだから、こっちからお願いしなくても、向こうから舞ってくれと声をかけられるわ。」
「龍神の巫女? 舞を踊る人は、そんなすごい名前だったの? でも、去年は誰もそんな事言ってなかったけど?」
「龍神の巫女とは、龍神様に舞をささげる巫女のこと。 荒れた海を鎮める、その神秘性から人々は龍神様の遣い、龍神の巫女として崇められているの。 という感じで町おこし用の伝説を作ったら、ネーミングセンスが良さそうって、私のお父さん、つまり、あなたのおじいちゃんが言っていたわ。」
「・・・・一瞬トキめいた私の心を返してくださいっ。」
「そもそもこじんまりとした、裏手にある神社の神事で、正当な血統のある本家の一人が舞うみたいな荘厳な儀式じゃなくて、親族でわいわいと舞って正月を楽しむ儀式だからね。裏方の神社は、親族が掃除をしているだけで、専業の巫女も居ないし、神事とお祭りの時しか開けないし。 そもそも、事の始まりもあれだし・・・。」
「えっ? 海が荒れて、食べる食料に困っていた純粋な娘さんが、凪を願って一日中踊って、龍に舞を奉納したら、夜に龍神様がその願いを聞き届けて、凪と大漁を与えてくれたから、それから毎年舞を奉納して、凪と大漁を祈願する儀式になったじゃないの?」
「違うわよ。 海が荒れてやることが無くて、酒を飲んで酔っ払った網本の娘さんが、気持ち悪くなって海にゲロを吐いていると、龍神に乗り移られて、それで網本や、漁師さん達と意気投合。 お酒をたらふく飲んで、満足したお礼に凪にしてくれて、大漁になったから、それで、わりと暇になる正月にみんなで舞を舞って酒盛りをする理由にしたのよ。 こっちが本当の話。 景のやつは、あの神社の看板に書いてある観光客向けに捏造した話ね。」
「いろいろ酷い話でしたっ。」
「地元の小さい神社の神事なんてそんな物よ。 でも、踊り手によっては、舞を踊って凪と大漁になる人も本当に居て、直近ではあなたのひいおばあちゃんがその踊り手だったのよ。 それに去年の景もやったでしょ? だから、由来はあれだけど、龍神様はみんな居ると信じていて、正月は龍神様とお祝いするためにあの舞を踊っているのは本心よ。何よりも、言い伝えによると、舞を踊っていると、龍神様はたまに降りて来られて、わりとフランクに酒盛りをしていたらしいわよ。」
「すごいのか、すごくないのか、分からなくなって来ましたっ。」
こうして、北陸新幹線に乗った私は、アキラさん達とお母さんの実家に向かうのでした。