星アキラは自由に生きたいっ   作:Magical forest

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星アキラは龍神様と宴会をする

 

僕達が景ちゃんの変貌に立ちすくんでいると、景ちゃんのひいおばあちゃんが飛んできた。

 

「龍神様、お久しぶりや。 千鶴(ちづる)の娘の富美(ふみ)ですで。」 そういって、ひいおばちゃんは、景ちゃんに畏まって土下座をした。

 

「おお富美か。おぬしの舞も素晴らしかったぞ。 千鶴で降りた時以来だな、あの時は10歳の童(わっぱ)だったのに、おぬしも歳をとったのう。 しかし、おぬしの舞も我に届いていたぞ。 今も変わらずに一族で舞を奉納し続けてくれていることに感謝する。」

 

「あれっ? これって、もしかして、もしかしちゃうの?」

 

「そうじゃないの? 伝説の通りに降りてきちゃったんじゃないの? 龍神様が。」

 

「そいつは、驚き、桃の木、山椒の木だね。あんなにフラグを立てておいて、ケロケロは関係無かったんだ。」

 

「仮にも俳優なんだから、もう少し良いリアクションをしたら?」

 

「周囲が驚いていて、景ちゃんに注目が行って、状況が完全に喰われているから、こんな所で無理に良いリアクションをしても誰も見てくれないよ。 スベリ芸は、ちゃんと見てくれる時にスベらないと意味が無いね。 こういう時は、無理に流れを変えないで、流れのままに周囲を流させておいた方が良いよ。 強引に流れを変えるのは、それはそれでリスクがあるからね。」

 

「それもそうね。」

 

「あなた達は、こんなとんでもない状況でも通常運転なのね・・・。私は驚きすぎて腰が抜けそうなんだけど。」

 

「雪は、実際に腰が抜けた方が面白かったと思うぞ。」

 

「私はお笑い芸人じゃないのよ!!」

 

「この子の周りには、なにやら、とても楽しそうな集団がおるのう。」

 

そんな感じで、龍神様が景ちゃんに降りてきて、平常運転の僕達をしり目に、周囲は大騒ぎとなったのであった。

 

龍神様は、そのまま本家に案内されると、上座に案内されて、即座に町中に連絡が行って、今用意できる中で最高級のご馳走が次々と運び込まれる。そして、甘酒が用意された。 甘酒?

 

「龍神様のご加護によってぇ、我ら夜凪家は安泰な時を過ごしとります。 こちらは、我らの一族と、金沢の町を守っていただけとる龍神様への感謝の料理でごぜーみす。」

 

「富美よ。畏まるでない。 せっかく降りて来られたのだから、千鶴の時のようにみんなで宴を楽しもうではないか。 それに、我はこの者達にも興味があるぞ。 」

 

「まずいよ。龍神様にロックオンされているよ。プルプル、僕は悪い珍獣じゃないよ!」

 

「アキラ君、この状況での平常運転はすごいわ。 将来大物になりそうね。」

 

「アキラちゃんは、すでに大物だから大丈夫じゃないの?」

 

「そちらの男は、景がとても世話になっているようだの。 景がわしを降ろせるまでに高い感受性を持ったのは、そちとの出会いと共に、景に女優の芸を磨きこんでの事。 そちこそが、夜凪一族で随一となる舞子を育てた功労者じゃな。」

 

「あっ、ハリウッドとか、普段の景ちゃんのヤバイ奇行が、まずい方向で発揮されて、しまいには龍神様まで降ろしちゃったんだよ。 最初のうちはいろいろとやってあげたけど、最近の奇行とヤバイ行動は全部、景ちゃん自身のせいだから。 僕は何も悪くないから!!」

 

「アキラちゃん、そこまで責任逃れムーブをすると、いっそ清々しいわね。 でも、最近のあの子のヤバイ部分は、確かに勝手に出てきているような・・・これが夜凪の血? あと、役者としての感受性や技術の基礎は、アキラちゃんの母親である、星アリサの賜物ですので、そちらも大切かと。」

 

「面白い友達だのう。 我に全く気後れせんとは。 ここまでまっすぐで、精神を安定して、己を失わずに我を宿せるのは、夜凪一族の中でも、始祖の子以来だのう。 それだけ、正しい心をもって、役者の芸を磨き続けたのであろう。 景にこのようなチャンスを与えたことを、ここに居ぬアリサ殿と共に感謝するぞ。 ・・・そういえば、自己紹介がまだだったな。 我はこの一帯を守護する氏神じゃ。 皆からは龍神と言われとる。」

 

「なるほど。それなら、正式な挨拶をしないとね。 吾輩は、星アキラなり。 関東でネット守る珍獣の自宅検非違使にし、管弦の習はしをすべる大役者なり。」

 

「かっかっかっかっかっ。 自宅検非違使にして、大役者であれば、粗相はできぬな。 ほれ、我の隣に座って、皆から接待を受けるがよい。」

 

「そはめでたき案かな。」

 

「・・・アキラ君、あっという間に馴染んで、龍神様の隣でエンジョイしているんだけど、何? あのコミュ力の高さは? それに、自宅検非違使って、ただの自宅警備員よね?」

 

「こんな面白い体験、やらない方が損じゃないの。 我は百城千世子、天下に名を轟かす大女優なり。」

 

「大女優とな。 なるほど。 まさしく傾国の美女よ。 ムムムっ。 まさしく時代が生み出した鬼才よ。 我もその才覚が良くわかるぞ。 是非、我の隣に座って話を聞かせてくれ。」

 

次は阿良也だ。みんな阿良也がどういう自己紹介をするのか気になって注目した。

 

「明神阿良也です。 舞台俳優をしています。」

 

「龍神じゃ。よろしく頼む。」

 

「フツー。もっとエンタメを理解しろよ阿良也。 芸人は、リアクションの面白さが命だろ。」

 

「しかし、普段、景が演じてくる時に、いやでも匂ってくる強烈な匂いが無いな。 アキラなら分かるのだが、景は本当に龍神になっているんだな。」

 

周りの抗議も何するものぞ、阿良也はマイペースに話を続ける。

 

「この中では、おぬしが二番目に神との感受性が高いな。 景が血筋として、我との絆が無ければ、おぬしが我を降ろせたかもな。」

 

「おっ、いい事聞いた。 来年は俺が舞を舞っちゃおっーーーと。 龍神様カモーン(屮゚Д゚)屮」

 

「うん。 全然普通じゃなかった。 ヤバイのが増殖しただけだったね。」

 

「来年は七生さんを連れてこないとダメそうね。」

 

「阿良也に龍神様が乗りうつると大変な事態になりそう。でも、金沢の町での異能バトルを是非見てみたいwww」

 

「アキラ君、誰も幸せにならないから、絶対に止めさせた方が良いわ。」

 

「雪ねぇちゃん、力に溺れた阿良也を見てみたくない? 金沢の町はちょっ~と大破しちゃうかもしれないけど。」

 

「アキラちゃん、酒と演技に溺れた阿良也君を見たことがあるでしょ? あれの酷いバージョンになると思うけど。」

 

「あっ(察し)。 ・・・みんな平和が一番だね。」

 

「そうじゃの。 我も前に酒に酔って羽目を外して大変なことになったからの。 酒でも力でも溺れん方が良いぞ。」

 

「そういえば、龍神様は甘酒を飲んでいるけど、何か理由があるの?」

 

「最初の頃はお神酒を飲んでいたのだが、酔った勢いでちょっ~と、粗相をしてな。まだ加賀に入ったばかりの、血の気の多い殿様がムカついたので、酔った勢いで金沢城ごと破壊して懲らしめてやったら、その後は、お酒はやめてくれれば、善政をするからお願いしますと懇願されて、今の甘酒になったのじゃ。でも、我がその殿様を懲らしめたおかげで、血の気の多かった殿様も改心して、内政に力を入れるようになって、加賀百万石の基礎を築いたのだから、我は良い事をしたのじゃ。その後の罪滅ぼしに豊作になるように加護もやったし。」

 

「一体何をしたんだ・・・。 それに、その殿様の名前は、前田利家公では・・・。」

 

「そんな名前じゃったな。 もとは尾張の武将だったようだが、その後は夜凪家に格段の便宜を図るようになったみたいだし。 万事丸く収まって幸いじゃ。 流石は我。」

 

「うん。お酒はほどほどにね。」

 

「もちろんじゃ。 それに甘酒も天甜酒として神の身にとってはとても甘美じゃぞ。」

 

「伝統の夜凪家の歴史が笑い話過ぎて面白すぎるよ。 やっぱり歴史のある家は違うね。」

 

「これって武勇伝なの?」

 

こうして、みんなの自己紹介を終えて、最初のうちは伝説にあった神様の降臨に固くなっていた夜凪家の人たちも、次第に打ち解けて、楽しい宴会が始まった。

 

「しかし、アキラ君は龍神様とすごく打ち解けて、馴染んでいるわよね。 龍虎相打つみたいな展開にならなくて良かったけど。」

 

「龍虎というよりも、龍に乗ってはしゃぐハムスターね。あれは。」

 

龍神様から告げられる歴代の夜凪家の面白話と歴史の裏話。 しかし、こうして見ると、夜凪家に伝わる伝承が、尾ひれが付かずに、元の形を保っている理由がよく分かるよ。本人から直接語られたら、それは原形のままずっと残るよね。

 

その後は、話を聞いた龍神様が是非見たいと言うので、みんなでユーモレスクを鑑賞して、龍神様を大号泣させたりした。 現代人よりも反応がピュアでうれしいよ。

 

「映画はみんな素晴らしかった。景も最高じゃった。 それに、アキラ公の音楽は本当に感動じゃ。常世(とこよ:神界)でもここまでの奏者はおるまいて。 まさに神業にまで昇華しておる。 もし良ければ我にアキラ公の奏でる音楽を、一曲、披露してもらえないだろうか。」

 

「龍神様、もちろん良いですぞ。 将来は音楽の神様として奉られる予定の、この音楽の天才である、珍獣神が龍神様に曲を進呈いたしましょう。」

 

「おおおっ。 それは、素晴らしいぞ! 後で市杵島姫命に自慢してやろう。」

 

「アキラ君の大言壮語もここまで行くと才能よね。あと、さらっと、とんでもないビッグネームが飛び出して、戦々恐々よ。」

 

ガクブルの雪ねぇちゃんを後目に、僕はヴァイオリンを取り出してチューニングを始める。 さて選曲はどうしたものか。 曲的には現代にも通じて、日本人の琴線に触れる曲が良いね。 ぱっと見、超有名曲の『荒城の月』あたりが日本の音楽としてメジャーだけど、夜凪家の今後の発展も考えると歌詞が最悪だね。 夜凪家の辿ってきた歴史を考えると、あの曲が良いかな。

 

僕は、ヴァイオリンをすっと構えて全員の注目を引くと、本当にゆっくりとおだやかに『浜辺の歌』ヴァイオリンを弾きはじめた。

 

  あした浜辺をさまよえば 昔のことぞしのばるる

  風の音よ雲のさまよ 寄する波も貝の色も

 

  ゆうべ浜辺をもとおれば 昔の人ぞしのばるる

  寄する波よ返す波よ 月の色も星のかげも

 

  はやちたちまち波を吹き 赤裳のすそぞぬれひじし

  病みし我は すでにいえて 浜の真砂 まなご今は

 

凪の時に浜辺に打ち寄せる波のように、おだやかで優しい曲が響き渡る。 僕も聞いたことがないような素晴らしいヴァイオリンの響きに、弾いている僕自身がうっとりとした。 後で聞いた話では僕のヴァイオリンの音は金沢の町中で聞こえたらしい。 龍神様パワーすげぇ。 コンサートの時に龍神様を音響用にレンタルできないかな?

 

僕のヴァイオリンに龍神様はいたく感銘を受けたみたいで、涙をボロボロと流しながら、次々に演奏をせがんできた。 結局、度重なるアンコールで、永六輔さんの『遠くへ行きたい』や、『われは海の子』『椰子の実』など、日本の歌を中心に演奏を続けた。

 

そして、一月一日の日が落ちるぐらいに龍神様は帰ることになった。

 

「富美、世話になったな。」

 

「滅相もございません。 我ら一族、龍神様の再度のご降臨を心からお待ちしとります。」

 

「うむ。」

 

「アキラ公、本当にすばらしい演奏だった。 アキラ公が珍獣神として、我ら神の一柱に加わる日を楽しみにしているぞ。」

 

「仮に僕が神様になったとしたら、僕の神名は珍獣神になるのか。何か重大な過ちを犯した気がする。」

 

「普段からネットでやらかしすぎて、すでに珍獣神の名が広がっているから、手遅れよ。アキラちゃん。」

 

「それでは、皆の者、この地で繁栄してくれて、我は大変うれしいぞ。 我はいつでも皆を見続けているのでな。」

 

そういって、桟橋まで歩くと、景ちゃんから光散るように天に昇って行った。

 

・・・そして残った景ちゃんは・・・。

 

「あの神様、久しぶりに地上に来たからって、喜んで大量に飲み食いしすぎですっ。 きっ気持ち悪いですっ。 ケロケロケロケロ。」

 

「ああっ。なるほど。これが、夜凪家伝統のケロケロなのね。 なんでケロケロが夜凪家の言い伝えに残っているのかよく分かったよ。」

 

「ゲロと切り離せない女、夜凪景。 私と共にスタジオゲロ酷天に来たのはもはや運命の気がするわ。」

 

「スタジオゲロ酷天でも、雪ねぇちゃんと景ちゃんしかケロケロしていないけどね。 それで景ちゃん、大丈夫?」

 

「フフフッ。」

 

「景ちゃん、どうしたの? 急に笑い出して。怖いのだけど・・・。やっぱりの龍神様に乗り移られたのはショックだったの!?」

 

「神様が乗り移った感触が良くわかりましたっ。これで神様や妖怪の演技がはかどりますっ。」

 

景ちゃんは、ゲロを吐きながらニヤリと笑った。

 

「それはよくわかるわ。私も良い感触が掴めたわ。 幽霊の役がリアルにできそうで、すごい成果だったわ。」

 

「演技バカどもは、どうしようも無いわね。」

 

「景ちゃん、千世子ちゃん、おめでたい正月なのにホラー展開はやめてくれないかな? 周りの人たちもみんなドン引きしているよ。」

 

「神様よりも人間の方が怖いってよくわかるな。」

 

こうして、僕たちの金沢旅行は大満足?で幕を閉じるのであった。

 




新年あけましておめでとうございます。 今年もよろしくお願いいたします。

新年一発目の話は、演技の役に立ったので、景ちゃんが龍神様に乗っ取られたことを喜ぶアキラ君達、御一行の話でしたw

皆様におかれましては、本年も良い年でありますようにお祈り申し上げます。
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