星アキラは自由に生きたいっ 作:Magical forest
------------- 柊雪視点 -------------
「昨日は素晴らしかったよ。自宅でやったパーティーのはずだったのにまるで夢の世界に行ったみたいだった。」
「ほんと、ほんと、すごく楽しかったわ。それに子供達もみんな喜んでいたわ。事前に参加者は子供達も連れて来てって言っていた意味がわかったわ。」
「ダースベイダーが出て来る夢の世界は悪夢かもしれないけどね。」
「アキラさん、酷いですっ。」
議員さんのホームパーティーの翌日に私達は議員さんのお宅を再訪問して、お話を聞くことになった。上院議員をはじめ、兄弟の方々が全員集まっていた。
「私達もみんな喜んでもらえたみたいで良かったです。」
「ダースベイダーとC3POやR2D2への注目も凄かったが、特にアキラ君とパルファンさんのパーティー演奏は素晴らしかった。世界的トップとも言える演奏家たちがハンソロとチューバッカの恰好をしてパーティーのミュージックを生演奏してくれるなんて、どれだけお金を積んでも実現できる物ではないよ。」
「ホームパーティーって言っていたからもうすこし規模が小さいのかと思っていたのですが、ノースウェストン大学の学長や、シカゴ市長まで来ていてびっくりしました。」
「普段はここまで人は多くないのだけど、シカゴの名を上げたユーモレスクの柊監督が来る上に、その出演者まで揃うとなれば、シカゴ中の人間がみんな来るよ。あのダース・ベイダーのインパクトで近所の人まで顔を出して、前代未聞の大パーティーだったね。みんな笑顔で素晴らしいホームパーティーになったよ。」
「お役に立てて良かったです。」
「Yukiはノースウェストン大学に移籍する事にしたのかい?」
「はい。学長や教授も良くしてくれますし、移籍する事にしました。もっとも、元居た阿佐ヶ谷芸術大学も辞めないで欲しいということで、二重学籍になって両方卒業という形になるので、日米の両方の大学を卒業する事になりそうです。」
これは、大学に行くか行かないかで悩んでいた昔の私からすると信じられない事だ。日本とアメリカの大学二つを掛け持ちする事になるとは。
最初は移籍する際に阿佐ヶ谷芸術大学は辞めるのかと思っていたのだけど、二重学籍は別に法律的に禁止されている訳では無くて、校則で禁止している所があるという話だった。そして、阿佐ヶ谷芸術大学は二重学籍を校則で禁止しておらず、アメリカの大学はそもそも二重学籍を禁止している学校はほとんど無い。 結果、阿佐ヶ谷芸術大学には辞めないでくれと懇願されて、期末の試験を受けるだけで卒業できる事になり、学業自体はノースウェストン大学をメインに通う事にした。
ちなみに、阿佐ヶ谷芸術大学は授業を出席できないけど大丈夫なのか確認したけど、もっとヤバイ卒業生は一杯居るとのことで問題なさそうだった。この辺は社会人になるためのモラトリアムの側面が強い日本の大学ならではの対応だろう。ましてや芸術大学なら変人が沢山在籍している事が考えられる。(注:柊雪本人は自分を変人だとは思っていません。常識人だと思っています。)
「私もノースウェストン大学の卒業生なのだよ。Yukiを後輩として迎えられてとてもうれしいよ。」
「ありがとうございます。」
この辺もアメリカの大学を選んだ理由だ。こっちの名門大学を出ておけば、学閥みたいなのは無いけど、いろいろとコネは効くのである。ついでに卒業後はアメリカの就労ビザも下りやすくなる。
「それで、あの家の事なのですが・・・。」
「そうだね。Yukiもあの場所にボロ家がある事に驚いただろう。」
「はい。高級住宅街ですし、使わないのであれば、家をつぶして土地だけにして誰かに売ると思いました。なぜあの状態であの家はあったのですか?」
「実は、複雑な理由がある訳じゃないんだ。私達四人が育った家でね。なんとなく思い出を壊したく無くてそのままにしておいたら、月日が経ってしまったんだ。」
「そうなんだよ。私達四人兄弟は、父親を小さい頃に亡くして、アイルランド移民だった母親が一人で育ててくれたんだ。それで、みんな苦労はしたんだけど、兄弟みんなで助け合って、奨学金をもらって大学にいったり、企業を起こしたりして、このシカゴに根を張ってアメリカンドリームを掴んできたんだ。」
弟さん達が追加で説明をしてくれる。
「その通り。それで全員が成功して家を構えた後に母親が亡くなってあの家が取り残されたんだ。全員がお金を持っていたからあの家を売却する必要も無かったし、みんなの大切な思い出を壊す気にもなれなかった。結局そのままにして最低限のメンテナンスをしていたのだけど、やはり年月には耐えられないから、取り壊す事を考えていたんだ。 そんな時にアキラ君から映画撮影に使いたいから売ってくれないかとオファーを受けたんだ。」
「そう言う経緯だったんですか。」
「私達はみんなで話し合ってアキラ君に売る事にした。なぜなら映画に使われると言う事は、あの家は無くなっても、映画と共にみんなの思い出が残ると思ったからだ。結果はすばらしい物だった。ユーモレスクも言葉にできなかったが、Yukiのドキュメンタリーも本当に素晴らしい。Yukiがあの家で悪戦苦闘する日々は、子供の頃の母親と私達の生活を思い出させるのに十分だった。特にYukiが暖炉の火で影絵を作って遊んでいたのは、キーランを思い出してすごく懐かしかったよ。」
「あの影絵の道具はキーランさんの物だったのですね。」
「そうだよ。末っ子の僕は活発だった兄たちとは違って、内向的だったからね。夜は家の中で影絵を作って自分の物語にのめり込んでいたんだ。」
「暖炉の炎に揺らくのを利用して、いろいろなエフェクトがかかるように工夫されていてとても素晴らしい作品達でした。感動しました。」
「年月を経て、自分の子供の頃の作品がYukiに使われて、それが全米中に放映されて有名になるとは思わなかったよ。子供達にはあの影絵は私が作ったんだよって言って、最近影絵の製作をすごくせがまれているよ。」
「すばらしいです。是非キーランさんの作品をもっと見たいです。」
「はははっ。子供の頃の趣味で尊敬されるようになるなんて、夢にも思わなかったな。」
「そう言えば、屋根裏で使えそうな道具を探していた時にこんな手紙を見つけたのですが、たぶんお母様の残した手紙だと思うのですが、心当たりはありますか?」
「どれどれ? 『時間(とき)は静かに重なり、家族の記憶を守る。火のぬくもりが消えた場所に、まだ燃え続ける想いがある。』 だって? なんだろうこれ?」
「家の梁の後ろに隠されていました。何かのメッセージだと思うのですが。」
「これはお宝の予感だね。きっと海賊キッドのお宝が隠されてるんだよ!」
「ははは。海賊キッドのお宝があるなら、子供の頃にあんなに貧乏な暮らしはしていなかったよ。でもお袋が何かを隠した事は確かかもしれないね。」
「そうだね。そう言う事が好きな人だったしね。」
「家族あてのメッセージでしょうし、そんなに難しい場所ではないはずよ。」
「千世子ちゃん、心当たりがありそうだね。」
「あるけど、これはご家族の人が解くべき謎だわ。」
「そうだね。みんな時間はあるかい?これからこの謎解きをしに、久しぶりにあの家に行こうじゃないか。」
そう言って、みんなであの家に向かう事にした。そして、兄弟たちは思い思いに思い当たる場所を探し始めた。とは言っても簡単な謎かけだったので、場所はすぐに特定され、暖炉の裏からお母様の残した木箱はすぐに見つかった。
木箱の中には、母親が子供たち一人ひとりに宛てた手紙と、家族の思い出のレシピノート、家族の思い出が詰まった品々や、母親が家族の写真や手紙、子供たちの成長記録、落書きや学校の賞状などを丁寧にまとめたアルバムが出てきた。
兄弟たちはみんな母親との思い出に涙ぐんで、思い出話に花を咲かせていた。
「Yuki、すばらしいプレゼントを私達にありがとう。」
「感謝するのは私ではなく、お母様ですよ。」
「君が屋根裏に埋もれていたこれらの品をまとめて私達に粋なプレゼントをしてくれたんだろう?」
「ありゃ、バレちゃいましたか。」
「これは私達兄弟にとって何にも代えがたい宝物だよ。君のような素晴らしい人間に、この家を引き継いでもらって本当に幸運だった。」
「ありがとうございます。あなた達兄弟が大切に思うように、私にとってもこの家は大切な宝物です。」
こうして私は、この家が私の手に渡った経緯を知ったのであった。