星アキラは自由に生きたいっ   作:Magical forest

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パルファンは国際コンクールに挑戦する2

 

------------ パルファン視点 ------------

 

「パルファン、本当に大丈夫なの?」

 

アデライード王妃国際音楽コンクールの演奏がどんどん進んで行くなかで、私と一緒に練習をしてくれたピアノ科の友達が、まだ来ないアキラの事を心配している。

 

「たぶん大丈夫だけど、ダメだった時にはあなたと一緒に出るからそんなに焦らなくて大丈夫よ。」

 

アキラが来ない中で、私は落ち着いていた。むしろ舞台に立たないこの子の方がソワソワしている。

 

一応、アキラが来れない時の事を考えて、一緒に練習してくれた子に待機してもらっているけど、おそらく杞憂になるだろう。アキラの事だからヒーローは遅れて来るのがカッコイイとか思っているに違いない。

 

そんな中でも、私との練習に付き合ってくれて、出演しなくても待機してくれるこの子には感謝しかない。マジでいい子なの。

 

「大体、音合わせすらしていないのでしょう?いくら星アキラだからって、コンサートにぶっつけ本番とか有り得ないわよ。」

 

「普通に考えればそうなんだけど、ショパンの『幻想即興曲』だから、即興で演奏すれば行ける!って本人は自信満々だったわよ。」

 

「何それ!?意味わかんない!即興曲は即興で作曲した物であって、即興で演奏する物じゃ無いのよ! それに、パルファンも何でそんなに落ち着いているのよ!」

 

「アキラが言わんとする事も良くわかるから。」

 

「あなた達、ちょっと変よ。これは世界三大コンクールであって、まさしくヴァイオリニストの世界最高峰を決めるコンクールなのよ。ピクニック気分で演奏するのとは違うのよ。」

 

「たぶん、ピクニック気分で演奏するのが正解よ。この場でそんな感じで演奏する人なんて居ないでしょう? それで勝ってこそ、ヴァイオリニストの最高峰だわ。」

 

「なんかもう、星アキラ達と出会ってからあなたは変わったわよね。昔はもっとコンクールの前はナーバスでカリカリしていたのに。でも、いろいろ物議をかもしたけど、レイラ・オリヴィエ国際コンクールでも結局あなたが優勝しているのよね。星アキラはものすごく印象的で、同じ時を生きている事を感動するぐらいにすごい演奏をするけど、あの人にコンクールで勝てる演奏ができるの?」

 

「できるわよ。レイラ・オリヴィエ国際コンクールでも、アキラが感動を優先せずに、本気で優勝する気なら、私は手も足も出ないで負けていたでしょうね。あの演奏はどこで学んだのか良く分からないけど、膨大な基礎の上に成り立った演奏である事は間違い無いわ。あの時のアキラが本気で優勝を狙いに来たら、私は何一つ上回れる項目が無くて、ボロ負けした上で、演奏家として自信を失って、深いコンプレックスを抱えていたわ。もちろん、今回は負けない意気込みで行くわよ。だいぶ近づいたとは思うのだけど、近づいたと思ったら、別の凄さに気が付いてまた遠ざかるのよね。」

 

「うわっ。あなたがそんな事を言うなんて、ますます星アキラの生演奏を聴いてみたいわ。っていうか、セミ・ファイナルで圧倒的に一位だったあなたが、まだ敵わないって、どんな化け物なのよ。」

 

「こんな化け物ですかな?」

 

「きゃっ!」

 

いつの間にか、友達の後ろに、赤い毛むくじゃらの怪物が立っていた。 頭にヘリコプターのようなプロペラが付いており、目は微妙に飛び出している。これは友達もビビるだろう。

 

「アキラ、その格好は何なの?」

 

「わたくしはムクムクのムックですぞ~。雪男の男の子で、さらに永遠の5歳児の上に、ピアノの達人で、身長は185cmで体重は110kgですぞ。」

 

「アキラ、まさかその格好で行くの? 普段ならOKだけど、流石にコンクールでその恰好がヤバイのは私でもわかるわ。」

 

「普段なら大丈夫なんだ・・・。パルファン、あなた常識が壊れてきていない?大丈夫?」

 

「大丈夫ですぞ~。ムックはピアノの達人ですからな~。」

 

「ダメよ。流石にダメ。これは今回のコンクールに落ちるならまだしも、世界中のコンクールで出禁になりかねないわ。」

 

「仕方が無いですなぁ~。それじゃ、ムックを脱いで・・・・・。あっ・・・・。チャックが・・・。」

 

アキラはムックの着ぐるみを脱ごうとしたけど、赤い毛むくじゃらの毛がチャックに引っかかって上手く脱げないようだ。チャックを下ろそうとして悪戦苦闘している。

 

「ぬっ脱げないっ!たっ助けてっ!ヒック、ヒック、ふぇ―――――ん。」

 

アキラはチャックが外れなくて、ついに情けなく泣き始めた。

 

「ふえぇぇぇぇ~ん。パルファンっ、助けて~。」

 

私は毛が引っかかったチャックを直して、着ぐるみの中からアキラを出してあげる。

 

「ふっ、ふぇ? 一生出られないかと思ったよ~。うわ――ん。」

 

着ぐるみの中からスーツを着込んだ涙目のアキラが出てきた。

 

「パルファン!君は僕の命の恩人だよ!!」

 

「ムックの姿で私のコンクールをぶち壊そうとするアキラは、私の命の殺人ね。」

 

「上手い事言うね~。山田君、座布団2枚持ってきて。」

 

「何そのセリフ?」

 

「フランス人のパルファンに、日本の伝統芸能である笑点ギャグは難しかったね。それで気を取り直して・・・。こちらの方は?」

 

「パルファンの友達のルシール・デュシャテルですが・・・。」

 

「Quel joli prénom ! Il te va très bien.(素敵な名前だね!すごく似合ってるよ。) 僕は星アキラ。Faisons connaissance.(仲良くなりましょう)。 ルシールは光を意味するラテン語のLuxにちなんだ名前だね。まるで100ルクスの太陽のような輝きだ。それに君がパルファンの練習時にピアノ伴奏をしてくれたんだよね?素晴らしいピアニストだと聞いているよ。」

 

「そんな。ポッ。」

 

着ぐるみが脱げないと言う情けない大失態を、いい男ムーブで誤魔化そうとするアキラ。確かに、着ぐるみの中から突然ハリウッドスターが現れて、自分を褒められたらたらポッとするのはわかる。

 

・・・わかるけど、ルシールへの口説き文句が絶妙にダサい。そもそも太陽は10万ルクスで、蛍光灯が500ルクスぐらいだから100ルクスはだいぶ暗いのである。太陽が100ルクスぐらいなら地球は終わりだと思うの。

 

私は友人とコントをするアキラを見て、時間ギリギリにヒーローが来てくれた感動とかは全く無くて、頭痛がしてきた。

 

確かに、スーツを着込んだ今のアキラはカッコイイが、考えてみて欲しい。大学受験で本命1校しか受験しなくて、絶対に失敗できない状況で、受験で「面接があるので、人となりを見るために、親しい友人を連れてきてください。」とアナウンスが事前にあって、親友を呼んだら、ムックの姿で会場に来たらどう思うだろうか?

 

本命校の受験と同じぐらいに人生がかかった大一番なのに、そこでネタに走られて失敗したら、本当に困るの。

 

私は、ほんのちょっとあったコンクール前の緊張も完全に霧散して、目からハイライトが消えて、ただスンと冷静になっていた。

 




珍獣君のこうげき!
ムックをくりだした!
パルファン嬢のメンタルにダイレクトアタック!
こうかはばつぐんだ!

前々回の回想で、ムックの話題をくれた方が居て、面白そうだったのでムックを登場させてみましたw
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